#54 「根回し」と「鉢増し」
前回のnote記事は植物の水やりと子育ての声かけ(”肥えかけ”)について書きました。今回は樹木の移植前の作業”根回し”(ねまわし)と”鉢増し”(はちまし)についてです。
まず「根回し」から。大きな木であるほど、幹の近くには栄養や水分を吸収できる根毛は少なくなります。違う場所に移植するとき、どうしても根っこ全てを付けたまま移すのは無理です。前回書いたように、根の地中の広がりは、地表の枝葉の広がりと同じ程度とすると、明らかです。移植する直前にスコップで根を切ると(根切”ねぎり”すると)、根毛がほとんどないので移植先に植えても栄養や水分が吸収できず立ち枯れてしまいます。
では移植するためにはどうすればよいのでしょうか?”根回し”をすればよいのです。移植の1,2年前くらいからスコップで移植の時の”根鉢”程度の大きさの位置に何箇所か根切をしておきます。すると、地中で切断された根が再生して新たに根毛をそこに発生させます。ちょうど、ブルーベリーの収穫が終わると枝を剪定(せんてい)して切り取ると、新しい元気な新芽(しんめ)が出てきて翌年また収穫ができるのに似ています。一部根切りされても、残りの根が樹木に栄養や水分を送っているので枯れることはありません。いよいよ移植する年になって、根毛を傷つけないように少し広い範囲でスコップを入れて根切して”根鉢”(ねばち)を作ると、移植しても植え替えた場所で根毛が仕事をすぐに開始して枯れることがありません。
次に「鉢増し」。植木鉢に植えっぱなしにしておくと、鉢の中で根が張りやがて根毛がぎっしりとなり、”根詰まり”を起こします。根も呼吸をするので、呼吸ができないと”根腐れ”(ねぐされ)してしまい枯れます。大きくなったら、一回り大きな鉢に移し替えるのを”鉢増し”といいます。容積を広げるほかに、”根鉢”を少し崩して植え替えることで、ちょうど”根切”を少ししたような感じになり新しい根が再生して新芽のような元気な”新根”?ができるのだと思います。
さて、人間ではどうでしょうか? 何か新しいプロジェクトや仕事、あるいは環境の変化が起きるとき、予測がつくことであれば、あらかじめ準備しておきますよね。”根回し”を1年前からできることは少ないかと思いますが、予測の範囲を広げ、できる範囲でしておくに越したことがありません。また、いつも同じ環境にいると吸収できにくくなるような場合は、自ら新しい”鉢”を探して環境を変えるのも良いかもしれません。
二回続けて”根”について書きました。土の中にあり見えない”根”ですが、大切であることは”言わず物がな”です”根”。、、、、お後がよろしいようで。