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#29 ゴリラの白目

昨日NHKのニュース番組に、ゴリラ研究者の京大 山極さんが出演してコメントしていました。人類は進化の過程で「共感力」を身につけ、今新型コロナの影響でそれが弱くなっているけれど、いつもピンチがあると人類はそれに適応してきたと語っていました。きっとそうでしょう、ただ気付いていないだけのこと。

 森を追われた遠い昔の記憶は我々にはないけれど、今でもその名残は体の機能にあるのだから。たとえば、緊張したときに汗をかくのは?手や足の汗をかくところは、まだ樹上生活をしていたころに樹木から落下しないための「滑り止め」として自動的に出てくるのだとの説があるとのこと。これを利用して「うそ発見器」で手のひらの電気抵抗の変化で、ウソをつく時に緊張する人が発汗して信号が変化から判定しています。昔の漫画のゴルゴ13の主人公のような人物は、心拍数までコントロールできる?ので測定器ではウソはわからないらしい。(本当?)

 ウソをついているかどうかが一目でわかる別の方法、知ってますよね。そう、「目」です。何かヤマシイ・言いにくいことを隠しているとき、相手の顔をまっすぐ見ることができない、何となくヨソヨソしい。「目は口ほどにものを言う。」というコトワザもあります。でも、本当?「目は心の窓」です。言葉でのコミュニケーションより、目の方が感情伝わりませんか?海外に旅行して困ったとき、お願いするときの声の調子で伝わるかもしれないけれど、決め手は”助けてください。よろしくぅ。”の相手にお願いするときの”目”が決めてではないでしょうか?

 冒頭の山極さんの本の中に、”ゴリラには白目がない”と言う内容があります。チンパンジーもゴリラも、体の大きさ以外にそんなに違いがないと思ってました。でも、そのグループの構成と行動には大きな違いがあり、その要因の一つに、”しろめ”があるそうです。チンパンジーは、白目があります。一方ゴリラには、白目がなく(正確には我々から見える場所には)黒目しかありません。「目の黒いうちに」という日本語がありますが、確かに人間の目は、黒目の部分で光を集め網膜の焦点で見ています。ならば、白目は何にも役に立たないかと言うと、これがこれが。サルのような群れで生活するグループは、コミュニケーションが必要不可欠です。”白目が動く”ことで視線(どこを見ているか)がわかります。すべて黒目では、どこを見ているかわかりません。したがって、ゴリラのコミュニケーションは互いに顔を極端に近づけてするそうです。まるで眼鏡を外した人が互いに顔を近づけて会話するのに似ています。でもこれって、凄いですね。毎日、だれと話すにも顔と顔の距離が30㎝のコミュニケーションを想像してください。ヤダと言う人もいるでしょうが、ゴリラに選択肢はありません。いつでも密接コミュニケーションです。だから家族・群れはとても親密です。

 最近は新型コロナ対応で、”密を避けよう”との掛け声をよく耳にします。でも人類が森の中で生活していたころの記憶は、きっと脳の心のどこかに残っています。きっと誰かと30㎝に近づきたいとどこかで思っています。”個食”と言う言葉は昔はありませんでしたが、最近はお店によっては横並びの”お一人様席”の間に間仕切りがあるところがあるとニュースが言っていました。まるでブロイラーのような!耐えられない人、多いと思います。個食の方がウレシイと言う人も、実はスマホがないと耐えられなかったりします。人は、誰かとつながっているという感覚がないと耐えられない、社会性をエネルギー源にした”森の中での生存競争”に敗れた弱い生き物です。

 今度、ゴリラを自分の目で見る機会があったら、白目を探してみてください。どこを見ているか、わかる距離まで近づいてみようとしてください。きっと、柵や溝やオリが行く手を遮ります。30㎝までは近づけません。

 新型コロナが収束したら、事前に相手の了解を得て30cmまで近づいてゴリラのコミュニケーションを体験してみてください。でも、実は我々、これに近いことしています。そう、気づいていますね。スマホです。FaceTime?Line Video? など、親しい人とビデオ通話するとき、カメラで映っている顔は、まるで30㎝のゴリラのコミュニケーションと同じ、”身近”です。今も我々のココロのどこかに、ゴリラと同じ森の暮らしの記憶があります。 お後がよろしいようで。

(写真 御座白浜 https://photo.mie-eetoko.com/photo/728)