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#191 本「表紙」鑑賞のススメ(その2) Zoom-In !!

本の表紙については、「画面表示」より「紙印刷」の勝ち! というのが私の感想です。光沢や質感については、まだまだ液晶ディスプレイでは、紙印刷技術には及ばない気がしています。特に、金属のような光沢、いわゆるメタリックな画面表示は”成長の余地が大いにあり”と感じます。

「蒔絵」?

 例えば、(うるし)の中に金粉などが部分的に埋め込まれた日本の伝統工芸の蒔絵(まきえ)は印刷は近づけても、液晶ディスプレイは今一つです。黒漆(くろうるし)を塗ったような深く艶(つや)のある漆黒(しっこく)。漆が固まらないうちに、金粉・銀粉を蒔(ま)いて模様・絵を作成する蒔絵(まきえ)、実物には及びませんが、印刷物でもかなり近づいていると個人的に思います。

『ヒトコブラクダ層ゼット』

 私のお気に入り作家の一人、万城目学さんの久しぶりの約4年ぶりの小説。ネタバレになるので内容はここには書きません(書けません)。発売後約1ヶ月後に読みたいと思って本を手にして、オリンピックの開会式から二日で読み終わりました。とても面白かったです。

 この小説のメインの話題に関する本を数年前に読んで興味を持っていた分野だったので、もしかして万城目さんも同じ本を読んでいたのかな?などと妄想していました。ネタバレになるので、敢えてどの内容かはここには書きません(笑)。

上巻と下巻を2冊並べてみると

  読み終えて2冊を机の上に並べてみると、並べて表紙絵が完成するようになっていました。背表紙は「普通の印刷」ですが、表紙は「凝ったデザイン・印刷」でした。”パッと見”は普通に見えましたが、なんか違います。よく見てZoom-Inすると、”深い質感”を何となく感じます。本を斜めにして光に当てて眺めると、反射が部分的に違います。また、色の塗りも均一に見えるところでも、よく見ると手仕事のようなムラのような部分があります。ラクダ色?砂色?の黄色の部分にも、光沢が違う部分があるんです。砂に埋もれている”文字ブロック”の縁取(ふちどり)りが金色に光っています

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 文字を拡大して見ると

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駱駝がまたがる文字ブロック、よく見ると駱駝がとてもリアルです。

「本には不思議な力がある」

 読み始める前と、読んでからでは、表紙の「リアリティ」が変わります。読んでいる間に、砂漠や駱駝の描写がでてくると自分なりの「イメージ」が頭の中で出来上がってくると共に、自分なりの「ストリー」が出来上がっていきます。本の表紙絵は、読み手のイメージとストリー自己把握を進める際のガイドとして意図をもって作られていると思います。電子書籍とは違い紙の本では、(しおり)を読み進めたところに挟むと、駱駝に跨り砂漠と旅する人がどれくらい自分が進んだか、これからどれくらい続きがあるかが、数値ではなく一目でわかります。少し分厚い本の場合、表紙がオアシスのように読み疲れた頭と目を休めてもう一度活字の旅に出かけるエネルギーを与えてくれます。やはり、本には不思議な力があると思います。