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【インタビュー】『形作られていない今の僕らの音楽を楽しんで欲しい』〜Seukolが鳴らすMibunkaの音

世代を問わず耳にした人の琴線に触れる普遍的な魅力を持つ音楽が存在するのではないかと感じることがある。

それは名作と呼ばれる作品たちからストレートな影響を受けつつ今の感性を反映させることによって生まれる、初めて聞いた人でもどこか懐かしさを覚えてしまう時代に左右されない音楽のこと。

Spotifyでなにげなくプレイリストを流しながら自宅で仕事をしていた際、不意に流れてきたSeukolの「八月」を聞いてすぐに上記のような感覚に囚われた。

フォークを彷彿とさせるギターから始まり正統派のギターロックのようでありながらもどことなくニューソウルっぽさを感じさせる楽曲展開、声を絞り出すように歌われる日々のやるせなさを醸し出す歌詞の世界観・・・
初めて聞いたにも関わらずもう何年も前から親しみ続けてきた楽曲のような懐かしさを覚えた。

一体どんなバンドなのだろうと早速調べてみるとなかなか情報に出会えない。

ようやく辿り着いたHPを見てみると、2021年から本格的に活動を開始しEPを1枚リリースしたばかりであり20代半ばのメンバー全員のバックボーンとしてくるりやFishmansをはじめとする邦楽バンド、ニューソウル、サイケデリック、90'sオルタナ、フォークに影響を受けているという情報を知ることが出来た。

・・・・・気になる。

どういう経緯でこのメンバーが集まって今の音を鳴らしているのか、活動に制限がかかりがちなコロナ禍にバンドを結成したのなぜか、質問したいことがどんどん浮かんできた。

そこで今回、Seukolのメンバー3人にメールインタビューという形で5つの質問を投げかけて回答してもらう機会を得ることが出来た。

すでにくるりが自らのラジオ番組・FLAG RADIOでも取り上げているSeukol。今後話題になるバンドに成長していくこと間違いなし!なので是非注目していただきたい。

* * * * *

Q. バンドの簡単なプロフィールと結成までの経緯を教えて下さい。

廣松(Gt.):
昨年僕は社会人になったのですがそのタイミングでコロナ禍に入ったんですね。そこでふと立ち止まって色々と思いなおすことができたんです。音楽をなんで始めたんだっけとか・・・。それで人生後悔しないように足掻くなら20代がラストチャンスだと思ってBa.の倉橋に声を掛けました。
倉橋とは学生時代そこまで接点はなかったものの、メンタリティが似ていることやくるりをフェイバリットにあげているということもあって、くるりみたいな『なんでもできるロックバンドをやりたい』とLINEして組むことになりました。

倉橋(Ba.):
Gt.の廣松に誘われて僕が2つ返事でOKしたことからバンドが始まりました。のちに参加することになるGt.&Vo.の高野とSupport Dr.の津留さんの2人は僕が引き入れました。全員同じ大学に通っていたのですが必ずしも同じサークルに所属していたわけではないという不思議な関係の中で僕が橋渡し的な役を果たしていました。

高野(Gt. & Vo.):
僕の場合、Seukol加入前は大学のサークルでコピーバンドをしていたくらいだったんです。バンドに誘われた時期がちょうど就活中だったんですが、なんとなく人生このまま進んでいっていいのかっていう思いもありました。それまで明確に何かを表現したいと考えたことはなかったのですが、誘ってくれたこのメンバーと一緒なら悪いものができる気がしないと感じてバンドに参加することにしました。

Q. バンド名「Seukol」はSQUALL(=激しい天候変化を伴う急激な風速の増加現象)の韓国語読みとのことですが、どういった思いが込められているのでしょうか。

廣松:
生活の中で僕たちの音楽を聞いてる間は浄化されていてほしいという願いがあって、洗い流してくれるって意味で『お天気雨だったりスコールっていいよね』と話し合っていました。僕たちもバンドをやっている間だけは嫌なことを忘れられますし。
でも、SQUALLっていう綴りのバンドは既に他にもいたし、普遍的でもあって、当時メンバーの間でアジアのインディーバンドっていいよねという話をしていたのも相まって韓国語にしました。そこは多分ノリだったと思います。

高野:
みんなかっこいいっていうだけで英語使ってるから、僕らもかっこいいってだけで韓国語使ってもいいよねって。

Q. コロナ禍の中でのバンド結成ということでライブが簡単に出来ない、場合によってはバンドメンバーで集まるのも困難という状況が推察されます。このタイミングでのバンド活動を始める面白さや難しさがあったら教えて下さい。

倉橋:
バンドにとってリアルな場に集まりづらいということはやはりダメージが大きいです。特に自分は家庭の方針でコロナ禍でのバンド活動を制限されているので、バンドメンバーには迷惑をかけてしまっています。
それでも現在はリモートワークやDAW上での楽曲制作とブラッシュアップ作業にだいぶ慣れてきてバンドを始める前には得られなかったものが見えてきたのは良かったなと思います。スタジオに入って練習するだけだと音の解像度やニュアンスが見えづらいこともあるので、(DAWでの作業は)楽曲制作の深度を深めていく上では必要なことだったかなと。COVID-19が流行しようがしまいがこういう世の中の流れになってたかもしれないですけど。

廣松:
コロナ以前はとにかくライブをこなして知ってもらうライブありきの活動ができましたけど今はなかなか難しくて次のライブが決まってないことの方が多い。なので、お客さんに対してもバンドメンバーにしてもバンドが稼働している実感を生み出すのが難しいと思います。
その分、作品について考える時間やどう広めるかを熟考して少しでもバンドが大きくなっていく瞬間を作るように心がけています。

高野:
 僕はコロナ以前にバンド活動と言えるバンド活動をしてきてなかったので、コロナ関係なく色々なことに対して『バンドってこんな感じなんだ!』っていう状態です。バンド楽しいです。

Q. 3月24日リリースの1st e.p.「Mibunka」は収録4曲を通してSeukolの音像や世界観を伝える挨拶代わりの1枚になったと思います。Mibunkaは「未分化」や「未文化」と読み替えることが出来、バンドとしてこれからの発展性を感じ取ることが出来ます。このタイトルにはどのような思いが込められていますか。

倉橋:
楽曲のコンセプトとか環境を見ていったときに、抽象的で境界の薄いものをイメージしていた記憶はあります。廣松が言ったように僕らは色んな音楽をやりたいんですよね。例えば僕はサザンロックもサイケもブラジル音楽っぽいニュアンスの音楽もやりたいし、廣松は学生の頃フュージョンをメインに演奏するサークルにいたり、高野はインディーポップに傾倒していたりと僕らが集まることでやれることが各々あると思うんです。
そういう意味合いで、"分化し切れない"という未来性も込めてこのタイトルで納得した感じですかね。

高野:
Mibunkaのタイトル案を出したのは僕なんですが、ご指摘の通り「未分化」「未文化」という読み替えを意図してつけました。
バンドとしてまだ固まっていない、どうなっていくかもわからない状態での作品で、今はその状態の僕たちを皆さんに楽しんでもらえたら、そして自分たちも楽しんでいけたら、という思いを込めました。
ただ、ジャンルもなんとも言えない僕らの音楽の指向やメンバー全員の歌詞に共通している割り切れなさなど色々とぴったりなタイトルだったのかなと思います。

Q. 「Mibunka」の各楽曲を聴いてみるとサウンド的にはフィッシュマンズやくるり、はっぴえんどをはじめとする日本のロックバンドが辿ってきた系譜の影響を色濃く感じます。
一方、歌詞からは吉田拓郎以降のフォークソング、すなわち自分自身の弱さやシニカルな部分を受け入れながらそれでも生きていく生活を歌っているようにも聞こえてきます。歌詞を書くにあたり特に影響を受けているものはなんでしょうか。

高野:
別に特別何かに影響受けたりはしてないですが本当の言葉で書こうとは心掛けています。これまで生ききて僕が思ったことをただ歌ってます。

廣松:
今回の4曲ではメンバー3人がそれぞれ歌詞を書いているのですがテーマを決めていないのに似たようなテーマになったんです。自分が書いた「雨宿り」では情景が浮かぶこと、韻や耳に残る単語を入れることを意識して書きました。どちらもBase Balll Bearに影響を受けていますね(笑)

倉橋:
高野が言ったことが割と全てだなと思います。でも、歌詞に意味を込めすぎるのもダサいなって思っていて、どちらかというと言葉の響きの美しさや音楽としての美しさを活かせるものが良いなと感じるようになりました。意味を込め過ぎなくても自然と言いたいことって出るんじゃないかとも思っているので歌詞に執着するのをやめました。
「Anemone」という僕が作詞作曲した曲の1フレーズは、自分にとって大切な楽曲の中の言葉から引用していたりします。あの曲は自分の大切な人に届けたくて作った楽曲で、同時に自分にとっても救いになってくれる歌詞になりました。


Q. 最後にSeukolの今後の活動や展望について教えて下さい。

倉橋:
とりあえず良い作品を作って良いライブをするということくらいしか考えてないです。でも、強いて言うなら大きな会場で多くの人に曲を聴いてほしいという願望はあります。
結局楽曲を作っても聴いてもらえないと意味がないので、その為にやらないといけないことはまだまだたくさんあるなと悩んでいます。音楽と音楽以外の部分の隔たりや関係性みたいな部分ですね。今年はそれがもう少し掴めていけると良いかなとも思っています。

廣松:
大きな目標としては野外フェスに出て沈む夕日の中演奏することです。これは僕がどうしても人生で経験したいと思って、バンドを組んだきっかけでもあるので。

高野:
今のバンド活動がとても楽しいので、もっと楽しくなりたいです。

ありがとうございました。沈む夕日を眺めながら見るSeukolのライブ、間違いなく良いのでぜひとも実現して欲しいです!

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Seukol 1st EP.「Mibunka」


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