雲をしまう
ここのところ、すごくもやもやしている。
それは時が経つごとに濃くなり、わたしの上に雲のように膨れ上がっていく。
原稿を印刷しているときも、重い紙束を押し込んで荷造りしているときも、トランクを引きずり歩いているときも、新幹線に乗り込んでメールを書いているときも、もやもやしている。
この雲の発生源は、確実にサナダくんだ。
これでよかったのだろうか。と、先日の約束を思い出す。
「ひかりがアップしてた日記、読んだよ。俺はきちんと距離をおくべきだと思う。仕事や人間関係的に顔を合わせしまうというなら、ビジネスライクにそこの部分でだけ付き合うべき。わかってるだろうけど、そいつがやっていることは、彼女に対してもひかりに対しても、相当な裏切りだ。あんなことしておいて、ひかりと友人関係を続けるとかも正直どうだろう。とんだ男だぞ」
その通り。
アラタから送られてきたメッセージに、雲を抱えたわたしは大きくうなずいた。うなずいたが、身体が動かない。
好きだから?
期待してるから?
それとも違う理由が?
もやもやもや。
出張滞在先のベッドで見上げる天井には雲が広がっている気がした。
……保留にしよう。
面倒になったわたしは、心の中の「ほっとくフォルダ」にサナダくんのことも、関係への判断も、自分の気持ちの考察も全部押し込んだ。
もやもやもやもや。
旅の荷造りだったら、よくわからないものは置いていくのに。こんなものまで詰めちゃうなんて、動く気がないのかな、自分は、と、帰りの新幹線でぼんやり感じた。
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