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誰かを想って引っ越しをするのはもうやめた。新天地で始める私の物語

今月から東京と福岡の二拠点生活が本格的に始まり、新天地である福岡での生活もやっと落ち着いてきた。

恥ずかしながらわたしは、今まで実家以外の場所に1年以上住んだことがない。ひとり暮らし2回、ルームシェア2回、同棲1回を経験しているにも関わらずだ。

家を見る目がない女の引っ越し歴

直通、彼氏行きの1軒目

わたしには「家を見る目がない」と言ったら、恋愛と重ね過ぎだろうか。

1軒目は、千葉県民からすると憧れの都内のアパートだった。22歳のときだ。

ただ、都営線が1つしか通らない小さな駅で、大学にも、翌年の春から就職が決まっている職場へ通うのにも、いまいちアクセスが悪い。閑静な住宅街というと聞こえはいいけれど、大きなスーパーや飲食店もなく、ひと言で言ってしまえば不便だった。

そこを選んだ理由は、「彼の家に近いから」一択。初めて自分から好きになって付き合った、音楽が好きな人だった。

他へのアクセスを一切考えないほどには、脳内がお花畑だった(笑)。

だが引っ越してから半年ほどして、彼と別れた時に思った。「なんでわたしはここに住んでいるのだろう?」と。

結局その家には10ヶ月ほど暮らして、引っ越すことを決めた。

反省を活かせなかった、2軒目

2軒目の家は、会社の先輩が「もう少しで転勤で家を引き渡す予定だから、ここに入れば初期費用が少しは抑えられるんじゃない?」と言うので、内見をして引っ越しを決めた。前回の反省を活かし、山手線沿いでアクセスはバッチリだ。

しかし、デザイナーズ物件で、パッと見のおしゃれさに惹かれて選んだものの、実際に住んでみると、かなり狭く、三角形の間取りで家具も置きにくかった。

さらに、反省を活かせなかった点としては、内見をきっかけに、(物件を紹介してくれた)先輩と仲良くなり、付き合ったことだ。小説が好きで、独特な感性を持っている人だった。

もちろん、その時点で彼は転勤をすることが決まっていたので、わたしの引っ越しと同時に彼はその家を離れ転勤先へ。おのずと遠距離恋愛が始まり、ほどなくして別れるに至った。

また半年ぶりくらいに「なんでわたしはここに住んでいるのだろう?」と思った。デジャブだ。

オーストラリアでシェアハウス

これまでの失敗から、次からは恋愛と引っ越しは絶対に混同しない!と、固く心に決め、1社目を退職後、ワーキングホリデーで、単身オーストラリアへ。

10ヶ月の滞在期間中、メルボルンの郊外とシティで、2度のルームシェアを経験した。

イギリス人やドイツ人など、さまざまな国の女の子たちと一緒に暮らし、掃除や料理の習慣など、小さなカルチャーギャップは日常茶飯事だったけれど、歴代彼氏から受けたカルチャーショックの方が断然大きかった(笑)。

短命に終わった、夢の同棲生活

オーストラリアから帰国後しばらくして、新しい彼と同棲を開始した。笑いのツボが一緒で、気の合う人だった。

近くには大きな川が流れる素敵なお家で、よくBBQをしたり、映画を観に行ったりした。同棲生活はとても楽しかったけれど、トラブルがあり1年経たずして、解散。

恋愛と引っ越しって本当に難しい

30歳で福岡に引っ越した理由

同棲解消後、しばらくはひとり暮らしをする気持ちになれず、実家にお世話になっていた。

実家は住みなれていて、千葉県内とはいえ都内へのアクセスもそこまで悪くないので、居心地が抜群によく、気がつけば丸2年が経とうとしていた。

2023年を迎え、わたしは29年間積み重ねてきた“直感”を信じて、当時付き合っていた彼と結婚した。

年内には一緒に住もうと計画していたが、価値観のすれ違いが修復不可能なレベルに達し、すべて破談になった。恋愛と引っ越しって本当に難しいですね(何度目だろう)。

そして、心機一転、あたらしい場所でひとりで暮らすことにした。

そこで選んだのが、福岡である。

昨年は年間200日ほど旅暮らしをするほど、日本全国・世界各国をめぐったが、その中でもここで日常を過ごしたいと思えた。

「友だちが東京に次いで多いから」
「ビジネスチャンスがありそうだから」
「空港が近く、二拠点に向いているから」
「福岡を拠点に九州やアジアを旅したいから」

たくさんの理由がわたしの背中を押した。

「福岡と東京の二拠点生活をしようかな」とぼんやり思った2週間後には航空券を取り、1週間で内見を済ませ、その滞在中に物件を契約した。約6年ぶりのひとり暮らしが始まることに、まるで初めての引っ越しのようにドキドキしていた。

いくつか物件の候補はあったけれど、テンションが上がるからという理由で、中心地ど真ん中の新築物件を選んだ。

人生初の「丁寧な暮らし」に挑戦中

これまでしてきた数々の失敗を踏まえ(そして福岡の友人の多大な協力もあり)、今の自分にベストな家を選べた気がして嬉しい。

やはり恋愛も引っ越しも、トライアル&エラーで学んでいくしかないのかもしれない。

引っ越しは、リセットボタン?

2023年に思い出をすべて置いていくかのように、2024年から新天地、福岡での暮らしが始まったけれど、引っ越しは「リセットボタン」ではない

引っ越すことで、多少なりとも、環境や登場人物を変えることができるけれど、気持ちはそう簡単に切り替えられないものだ。

スーパーに行けば、あの時の彼の大好物のハーゲンダッツがいまではすっかり自分の好物になっていることに気が付かされ、子どもが遊ぶ公園を通りがかると、サッカーが好きだった彼に連れられて、スタジアムに行った思い出が蘇る。

そんな街を構成するいろいろなモノやコトが過去の記憶と結びつき、実際にはまったく異なる場所にいても、その時の思い出や感情が蘇る。

だから、引っ越したからと言って、過去に起こったことも、自分自身もリセットすることはできないことを痛感する。楽しかった記憶も、悲しかった記憶も抱えたまま、新しい場所に行くのだ。

それでも、物語の舞台を自分で選ぶことができる引っ越しには、いつだってワクワクしてしまう

福岡で見つけた居心地の良い新居のように、運命の出会いをまだ信じているわたしがいる。

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