6days 遭難者たち 安田夏菜 (著)から学ぶ山歩き 後編 その2 最終回
こんにちは!一人ハイカー、一人ワンダーフォーゲル部のaishiです。
今回も安田夏菜 (著)の小説
「6days 遭難者たち」のご紹介とこの作品を教科書にして自分ならどう行動するか?をライトハイカー目線で解説していく後編その2 最終回です。
後編その1はこちらから。
解説 動けるうちに動ける人が救助を呼びに行くのは良い判断だと思います。
目立つ派手な帽子も良いですね。
解説 山では丁寧に歩く事が求められます。
特に岩場になると三点支持が大切になります。
三点支持とは2本の手と2本の足のどれか3点で常に地面や岩場を掴んでいる事。
これができると比較的安全に急な傾斜を登る事ができます。
勿論降りでも3点指示や足場をどこに置くかを見極めて出すという丁寧な歩き方が大事。足全体を地面に対して平行に静かに下ろすフラットフッティングを身につける事によりスリップしずらく、またエネルギーのロスを減らせるので疲れにくくなります。歩き方は人それぞれの癖もありますが自分がいかに安全で疲れない歩き方はどうすれば出来るか?を常に考えていくと良い山行に繋がりそうです。
それだけ歩くという事は実は奥が深い事なんですね。
自分も疲れてくると歩き方が雑になって時には滑って転んだりしますので歩き方をもっと突き詰めたいですね。
不安がある人や体力に自身がない方、長距離を歩く方などはストック(杖)を利用すると負担を減らし体力温存にも繋がります。
また登山靴のソールの減りや劣化によってもグリップ力がかなり変わってくるので靴のメンテナンスやチェック、修理や買い替えは大事です。
そこをケチるのは命をケチる事に繋がります。
解説 ついにスマホの電波が入るところまできた美玖。電話したのはお母さん。遭難事例でよくあるのが110番するのは気が引けて家族や知人に電話をかけがちです。
しかし家族に電話をかけるだけでは中々捜索に繋がる情報は伝えづらいもの。
今回のようにスマホのバッテリーの無い状況ではお父さんが言ったようにまずは110番するのが一番です。
上手くいけば電話するだけでスマホからGPSの位置情報が警察の方へ伝わるので早い救出に繋がります。
GPSの現在位置の割り出しはかなり精度が高いです。
しかしやはり谷に入り込めば入り込む程、衛生からの電波が届きにくくなるのでより正確に位置を特定して欲しい場合は沢や谷に入りこまない方が懸命でしょう。
またココヘリなどのサービスも同様です。谷に入り込むと電波が届きにくいですし、水の中に入ると電波が遮断されるのでできる限り見晴らしの良いところで救助を待ちたいところです。
また電話をかける前に可能なら事前に今の状況をメモなどにまとめておくと良いでしょう。
スマホは電波が届いていない状況でもGPSは動いているので今居る位置情報は確認する事が出来るのでそれをメモしておくと良いですね。iPhoneなら標準のコンパスアプリを立ち上げれば緯度経度で現在地が出ています。Android OS スマホでも類似のアプリは沢山あります。登山アプリでも位置情報が出ています。ジオグラフィカなどは位置情報の読み上げ機能もあります。
他にもパーティーメンバーの健康状態や周りの状況等伝えられそうな物があれば書き出して起きましょう。捜索や救出後に即急な対応に繋がります。
解説 まずはスマホのバッテリーを切らさないようにしましょう。
やはりモバイルバッテリーは持って行きたいところ。
ケーブルのチェックも忘れずに。
ストラップ代わりにケーブルが付いているようなモバイルバッテリーは忘れたりとり違える事が無くて良いですね。ただ断線が無いとも言い切れないのでそんなに荷物にならないケーブルはもう一本くらい予備で持つと良いでしょう。
日帰り登山なら5000mAhあれば十分。サイズ感も良いです。
10000mAhあれば泊まりやビバーク等した時の安心感が違いますね。
ホテルに前乗りや小屋に電源があるところでは折りたたみプラグ付きも便利です。
iPhoneなんかのマグネット充電に対応した機種なら万が一雨などでプラグや差込口を濡らしてしまっても背面からマグネット充電できるので実はアウトドアにも有用だったりします。自分はMagSafe対応モバイルバッテリーをジップ袋に入れて背面からマグネット充電してます。
※MagSafeは有線ケーブルの充電よりは充電効率は悪くいので充電スピードはそんなに早くないです。雪山だとこの効率の悪さが逆に端末を温めてスマホがシャットダウンするのを防いでくれそうな気もします(笑)
一長一短あるので自分に合った物を選び、一つは有線充電のモバイルバッテリー、一つはマグネット式にも対応したモバイルバッテリーを持って行くのも良いとは思います。
登山アプリを使用していてスマホの電波が届くところでしたら途切れ途切れでも使用者のスマホの位置情報は登山アプリのサーバーに送られているので遭難時などは警察からの要請で位置を特定する事が可能です。
自分は山に入る時には登山アプリを使用しています。
どうしてもそのまま使うとバッテリーの消費が気になるのでスマホの設定は低電力モードを使用しています。設定>バッテリー>低電力モードで設定できます。
メールの自動取得をされなくしたりや画面の自動ロックが短くできてバッテリーの消費を割と抑えてくれます。
LINEなどメッセージアプリもアプリからの設定で通知を制限させる方法があるので状況によってはこちらも設定しておくと無駄なバッテリー消費を抑えられるでしょう。そういう工夫をせずに街と同じように山に入ってスマホが使えなくなったという事は実は割とあるのでしっかりと対策していきましょう。
解説 メモ帳と筆記用具はあると便利ですね。
勿論スマホのメモ帳でも良いと思います。遺書はスマホのロックを外しておいて誰でも見られるようししておけば良いでしょう。
紙のメモなら過去の遭難事例から学ぶと、助けを求める言葉と名前等を記載してペットボトル等に入れて沢に流して救助の手がかりを残すやり方。
渓流釣り、沢釣りをやってる方は割と山の奥の沢にまで入ってやっている方が居ますし、夏なら沢登りをやっている方も場所によっては居ます。
そういう方が遺留品やペットボトルに入ったメモから遭難者を発見するという例は割と見受けられますね。
メモ帳があれば電話が繋がった時に言いたい事をまとめておけますしそこまで荷物にもならないので入れておくと良いでしょう。
解説 捜索の方も一生懸命探してくれています。
しかし自然相手ですから思うようにはいかない物。
だからこそ遭難者もあらゆる手で発見されやすいように工夫しなければなりません。
亜里沙達は残り少ないとはいえ燃料があったのでそれで焚き火をして狼煙を上げるのも良かったでしょう。スキルがあれば多少湿気た樹木の方が煙が出やすくて発見されやすいかもしれません。
体力があれば周りの揺らせそうな木々を見つけて揺らしてみるのも良いですね。
空と地上から捜索しているのが分かったら笛があったら思いっきり笛を吹いてみるのもアリです。
今回は見えるところにヘリコプターがやってきてくれました。
しかしヘリコから目視で遭難者を発見するのは難しいと言います。
勿論上記全てやってみる、他にも良いアイディアがあれば実践してみるのも大事です。ただし狼煙はその日の環境によって中々思うように煙が真っ直ぐ上空に立たないという事も多いみたいですし、笛の音もヘリコの音にかき消されて思うようには届かないでしょう。
では捜索のヘリコにサインを送るには何が良いかというとそれは鏡です。
とある理由から 亜里沙は鏡を持っていました。
今回上手く活用できたと思います。
コンパクトミラーは持っていると何かと便利ですしそんなに荷物にもならないのでこちらも一つあると良いと思います。
ヘリコプターに光シグナルを送る方法
警視庁 災害対策課 災害警備情報係
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/saigai/yakudachi/others/1382517950054207491.html
ついに救出された美玖達。
やはり最後まで諦めないという事が大事ですね。
万が一沢に降りてしまったら沢に特徴的な物を流すというのも発見の確率をを上げる手段ですね。
登山前、登山届や家族や知人への連絡に自分の当日の服装や持ち物を書いておくと捜索にも役立ちますし、装備が充実していれば生きている可能性が高いとして場合によっては捜索の縮小が数日伸ばされる可能性もあります。
自分も当日の服装などはあらかじめスマホのメモにおおまかに記入しておいて、
当日登山アプリのYAMAPで登山計画書を送信する時に服装と持ち物を一部修正してコピペして記入しています。YAMAPの登山計画書はこの時に家族にも送信。
場合によってはプリントアウトもして冷蔵庫など皆が見るところに張っておくと何かあっても安心です。
万が一何かあったら警察に連絡、警察にYAMAP等の登山アプリを使っている事も伝えておくと早い捜索に繋がるでしょう。
行方不明や捜索遅れでよくあるのは山の名前や登るルートを伝えずに単に例えば「奥多摩の山に行ってくる」とだけ伝える事。奥多摩には色んな山がありますから奥多摩と言っても登った山を絞れない事には捜索はできません。
口頭や話の流れで「奥多摩の〇〇に登ってくるよ」と言っても山に詳しくない人には伝わらない事が多いですし、人の話をそんなに真剣にいつも聞いてくれる人はいません(笑)なので必ずメモとしてデジタルでもアナログでも良いので残して伝えましょう。
またたまにあるのが登山計画の日付間違い。
下山予定日を間違えて登山計画書に記入していていたり口頭で間違えて伝えていたり、家族や知人が間違えて聞いていたり。
それで遭難届がでた翌日にひょっこりと登山者が下山して来るなんて話も。
まあ無事なのは何よりですが周りを振り回すとその後の登山活動に影響がでるやもしれませんのでやはりしっかりと間違えなくメモにして残したいところです。
解説 美玖達がやった事は軽率な行為ではあったのでしっかりと反省して関係者にはお叱りを受けるべきでしょう。周りの方にも沢山心配させてしまいましたしね。
しっかりと今回の遭難原因を解析して学び同じ間違いを起こさない事が大事です。
第三者が叩く事に関しては古くはマスコミ、今はネットでの声もそうですが結構的外れな意見や勝手な想像で叩いてる人も多いんですよね。そういう事も結局は迷惑行為なので辞めたほうが良いでしょう。
税金の無駄遣いと言っても形は色々。
街でも目立たないだけで色んな無駄遣いに繋がる行為をしている人は沢山いますし、家に引き籠もっていて不健康になり医療費等を浪費している場合もあります。
それよりは山歩きしている人の方が健康で税金の無駄が少ない場合も多いですよ。
まあ何を無駄と感じるかは人それぞれな部分もあるのであまり言ってもしょうがないですね。
またもしもの場合に備えて1日や1泊2日などから契約できる登山保険もあるのでそういう物に契約しておくと良いでしょう。
保険は何を重視するかによって人それぞれなので何がおすすめという物はありませんが、自分はやまきふ共済のやまきふプラスという物に入っています。
美玖のことですが元登山部と言ってもわずか4ヶ月足らず。
元登山部や登山歴10年とかそういう経歴はあまり意味が無いんですよね。
3ヶ月でも意欲的な人はその期間にどんどん山を歩いたり登ったりして色んな知識を吸収してレベルが上って行きますし、登山歴10年と言ってもその間に登ったのは10回足らずなんて方もいますから。
なのでその人は登山スキルをちゃんと見極めたいなら普段からどういう山行をしているかを見ないといけません。
山に興味が無いと世界最高峰の山々にチャレンジした!とか海外の山を無酸素で挑戦した!なんて言われるとなんだか凄そう!と思ってしまいますし、メディアなんかもそれを狙って数字の取れるヒーローを作り出そうとしますが内容を見てみるとお粗末なメディアのヒーローって沢山いました。まあこれは山に限らずですが。
だから受け手も少し賢くなってキャッチーな言葉やパフォーマンスばかり見て真に受けるだけじゃなく内容を評価できるようにならないと折角の本物には日が当たらす偽物が世の中を蝕んでいくなんて事になりかねませんね。
解説 トガ先生も疲れが出ている事から内心は心配していたのでしょう。
しかしこれは個人的な偏見ですが山好きの体育教師は変わり者が多かった印象があります(笑)トガちゃんもこのタイプに思えますね。
生徒が必要以上に叩かれないようにちゃんと矢面に立って回避出来たのは良かったですね。
植村直己さんの名前が出てきましたが、1980年代頃までは未踏峰の山をより早く、より困難なスタイルで登る記録競争が盛んな時代がありました。
そこで名を上げてやろうという野心家も多く多くの方が亡くなっていきました。
また下山中の遭難死も多いです。
メディア等では山頂に到達した時点でビッグニュースとして世界に配信されていました。
でもやはり登山は山頂がゴールでは無いんですよね。
無事下山してこそゴール。
だから個人的にも名のある登山家が山で亡くなるのはあまり肯定できません。
勿論レジャー登山とは全く違うので一か八かな場面もあるでしょう。
素人にはわからない世界だと思います。
でもスキルも経験もある名のあるプロが山で死ぬのは残念過ぎるし、
色々な説得力も無くなります。
トラブルは誰にでも起こり得ます。だからこそ持てるスキルをフル活用して生きて帰る…とても大事な事です。
たまに登山家の中でも思うよな山行が出来なくなって無意識の自殺、山に死にに入ったな?と思える方もいますね。それはとても迷惑だし傲慢な人間だと思います。まあ登山家って割と傲慢な人も多いけれどだからこそ山や自然には敬意を持って接して欲しいと思うのです。自然に対しても傲慢であってはいけません。
ここからは正解不正解とかじゃなく完全な私見で、トガちゃんとは考えが合わないと思うところを述べます(笑)
個人的には山なんて気軽に入っても良いと思ってます。
と書くとかなり誤解を受けるな…。
気軽に入れる山もある。そんな気軽な山でも沢山学べる事がある。
東京の高尾山という自分の好きな山があるのですが、そこもかなり気軽に山に触れ合える場所です。麓から山の中腹まではケーブルカーとリフトが運行してます。
山には茶屋が沢山あり、水道も引かれビアガーデンまであります。
信仰の深い山なので参道の1号路は舗装されてサンダルで登る人も居ます。
ぶっちゃけゆーっくり1号路を登ればサンダルで登れちゃう山なんですよ。
まあ昔は草履なんかで登ってた訳ですし。
しかしそこは世界一人が来る山。
なので自ずと遭難者も増えます。
メディアでは山での事故という事でどうしても遭難者という言葉を使いますが正直街の怪我や事故と殆ど変わらないんですよね。
1号路を使って登って降りてくれば普段着で全然問題ない山ですしそんな人も沢山いて自分はだからといってそれが直ぐに悪いとは思いません。
ただ問題なのは多くの人が来ればそれだけ街でも山でもリスクを考えないで行動する人は増えてしまいます。今回の美玖達のようはパターンですね。
1号路で登って来たから帰りはもっと山の気分を味わいたいから他の道で。
こういう人多いですし、運動する格好で来る人はまあ問題なく降りれています。
ただし街でも怪我をする人がいるように魔が差したり不用意な行動で怪我をする人が出てきます。
なのでお散歩がてら山に行くのは全然良いのでスキルと気分に合った山行を心がける事が大事です。別に山頂にこだわらなくて良いじゃないですか。
また山に来たいなという余韻をもって帰る事が大事です。
誰かと登るなら相手の事を考えるのも必要ですね。
そして山登り、山歩きがしたいと思ったら自分なりに調べて道具も自分なりに考えて用意して遠足の延長で良いのでスキルに見合った山に何回か登ってみましょう。
そこで沢山失敗すると思います。
綿の服を着ていって不快、汗冷えする、適当に選んだバッグは左右に振れてあるづらい、水は足らないまたは多すぎて疲れた、思ったより暗くなった、下るのがキツイ。。等々。
勿論知識は荷物にならないので知識はあった方が良いですが、座学ばかりで頭でっかちになるのも良くないし、実際身体を動かし失敗もする事で知識と身体が結びついてスキルが向上していきます。
トガちゃんは少し「山を舐めるな!おじさん」になってる気がしますね。
地図も天気図も読めないけれど安全に山を楽しむ人は大勢います。
別に地図や天気図が読めないと登れない山ばかりではないですからね。
個人的にはそういう山の楽しみ方も良いと思います。
何度でも言いますが大事なのは
「スキルに見合った山行をして安全に降りてくる事」
このトガちゃんと美玖の意識のズレが美玖達を今回遭難させた遠因になってないかな?と少し思います。
特に教師は色々な個性や感情を持つ生徒をより良い方向に導いていく事が大事だと思っていて、自分の主義や考え方の型に嵌め込んで行動させる事は違うと個人的には思います。
まあこれも考え方の違いがあるのでトガちゃんの考え方の方が合う人もいるでしょうから正解不正解ないのかもしれません。
因みに高尾山もじっくり歩いてみると北側と南側ではまったく表情が違い山としても懐の深い山だと思います。
1号路は舗装してあり歩きやすいですが傾斜は中々キツイところもあり運動不足の人には結構キツイですね。
その他の登山道もしっかり整備はされていますが思ったより山道と感じる人もいるでしょう。そして一度整備された登山道を外れれば途端に山歩きの装備無しでは歩くのもままならなくなります。
高尾山に限らず山は山。
侮るなかれ。山も人も色んな表情、色んな側面があります。
覗かなくて良い側面もありますね(笑)
「スキルに見合った山行をして安全に降りてくる事」
これを肝に銘じて豊かな山行を心がけましょう。
以上で 6days 遭難者たち 安田夏菜 (著) という良書を使って山歩きに対する解説は終わりです。
今回は主人公美玖達の遭難時の行動に対して注目し解説しておりますので物語のもう一つの面、主人公達の家庭事情などの内容は敢えて書いていません。
思春期の子供の家庭でのポジションや考え方もこの本の内容を血肉の通うものにしていると思います。
山行時や遭難時の解説については自分の考えが正解だとは思ってませんし、これからも山を歩く事によって考えがアップデートされて行くと思います。
時代によっても常識は変わって行きますしね。
また普段山歩きだけしていると自分の考えや行動を振り返ってみる機会が割と少ない方もいるかもしれません。そういう場合はこういった小説や他の人の山行関連の書籍、過去の遭難事例を扱った書籍類を定期的に読んでみると良いかもしれません。
ここまでお付き合いくださいまして有難うございました。
もっと気軽に、もっと安全に山を楽しみましょう!
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