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割れた心【#メガネ朝帰り #毎週ショートショートnote】

「……はあ」

早朝、寝ぼけ眼でテーブルの上鎮座している冷え切った二つの皿を見て、自然とため息が漏れた。

スマホを覗くが、連絡も無い。

もやもやするが、ひとまず顔を洗うため洗面所に向かう。
するとインターホンが鳴った。玄関に近づくと、扉越しに声が聞こえてきた。

「ごめんっ!」

彼の声。
どうして謝るの?
謝るのは違うんじゃない?
そんな疑問ばかりが脳裏を埋め尽くす。

扉を開ける勇気が出ない。
迷っているうちに、廊下を走り去る音が遠ざかっていった。

慌てて玄関扉を開ける。

もう、そこには誰もいない。

一歩外に出たときにガチャと足もとで何かを蹴った。見ると、レンズが割れたメガネが落ちていた。

私のメガネだ。

メガネだけ朝帰り。


昨夜、彼と喧嘩した。悔しくて、一人で帰った。そのとき、自分のメガネを投げ捨てた。そして、割れた。

……やっぱり、ダメだった。謝るべきは、私なのに。

二つに割れた皿の横に割れたメガネを置く。

ぼやけた視界がさらに歪み、耳元で何かが割れる音がした。


(417文字)

たらはかに(田原にか)様の企画に参加させていただきました。
朝帰りというワードがどうしてもマイナスなイメージが湧いてしまうので、物語も悲しいものになってしまいます。SFやユーモラスなものが得意な方を羨ましくも思う今日この頃。


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