半世紀にわたる地元での実践を通して、人と地球と食に人生を捧げてきたアリス・ウォータース。
新著『スローフード宣言〜食べることは生きること』(海士の風)では、加速する気候変動や格差問題、地球も人も健康を害している現状を変えていくために、私たちがいかにして 人間らしい価値観 を取り戻していけばいいかを提案しています。
その変化を生むために「それ以上にいい方法って、他にないでしょう?」とアリスが唱えているのが「学校給食の地産地消化」です。
なぜ、学校給食なのか。
アリスは2014年の TIME誌のインタビュー "The Fate of Our Nation Rests on School Lunches( 国の未来は学校給食にあり)" で、こんなことを話していました。
TIME誌のこの記事は約10年前のものですが、時間が経っても発想がブレないのがすごい!アリスはこの10年間、カリフォルニア大学や州知事とも話を重ね、子どもたちの食を変えるために動き続けていました。
当初は子どもたちの健康と食リテラシーを国の未来を結びつけて考えていましたが、今はさらに、食の流通や経済のありようとも連動させ、もう一つ大きい絵の中に学校給食を位置付けています。
TIMEの記事が出た頃から10年間をかけて出した新著『スローフード宣言』の中では、日本の産直運動からヒントを得て欧米で根付いた「CSA: Community Supported Agriculture(地域支援型農業)」の進化版として、「SSA:School Supported Agriculture(学校支援型農業)」という造語を作り、説明しています。
来月、『スローフード宣言〜食べることは生きること』の出版1周年を記念して来日するアリスに、「日本で楽しみにしていること、やりたいことはある?」と聞くと、場所でも食事でもなく、「変わりたいと考えている、学校の校長先生に会いたい」と言いました。「話すことで力になれるとしたら、とても嬉しいから」と。
予約の取れないレストラン「シェ・パニース」のオーナーシェフとして有名なアリスですが、彼女の人生後半のライフワークは、子どもたちの食を変えること、そうすることで地域を豊かにする、生かしあう経済を作ることなのだと理解しています。
アリスの言葉を受け、今回のツアーでは、日本各地で「地域を豊かにする給食」と「生かしあう経済」の先進事例を巡ることにしました。
来日スケジュール、訪問先の詳しいことはぜひ、海士の風の記事でご覧ください。
「なぜ、今、学校給食なのか?」- アリスには、目の前の子どもの健康だけでなく、教育、地域、農業、そして行き詰まりつつある経済をも豊かにする、最も直接的で、自然で、かつ喜びに満ちた方法として「学校給食を変えたい」という願いがあります。それを自分なりにまとめてみようと今回の記事を書きました。
来月、日本で動き出した事例の数々をアリスと共に訪れること、本当に楽しみです。ツアーの映画化についても、ご協力をどうぞよろしくお願いします!