集団遊びと大人の関わり
わたしたちが運営している保育園「うみのこ」に、この4月、大学を卒業したばかりの若い先生が仲間入りしてくれました。アカハライモリにとても詳しく、自然の中で遊ぶこと全般が大好きで、いつも全力で遊んでくれる「オートマ」が、子どもたちは皆、大好きです。
そんなオートマが、先日のミーティングで言いました。
今で言うと、子どもたちの間で「宇宙船ごっこ」が流行っています。テラスに出した上着ラックや段ボールを使い、自分たちで作ったちょっとした小さな空間に入り込み、宇宙への冒険をしています。それも、何日も続けて。
オートマの呟きを聞いて、園長れおっちが言いました。
オートマが大きな目をもっと開いて、真剣に聞いているのが印象的でした。
話を聞いていて、わたしは、れおっち自身が手がけた「子どもから始まる保育」の数々を思い出していました。
たとえば去年。
ちょうどこの時期くらいからだったか、うみのこ年長さんの子どもたちの間で「ニンジャしゅぎょう」が流行りだしました。
雨の日に外に出かけ、両手を忍者のように顔の前で組み、高架下に滴り落ちる雨水を頭から受けてみる子。わざわざ「地獄のかいだん」を走って登る子。鬼ごっこするのも、「おれは青ニン!」「こっちは紫ニン!」となりきって遊んでいました。
それを見ていた園長れおっちは、じっくり半年以上の時間をかけて、子どもの描く世界が形になっていくのに寄り添いました。
子どもたちが楽しむのを見てすぐに「みんなで忍者屋敷でも作ろうよ!」と持ちかけるのは簡単です。でも、それはしません。子どもの遊びをただ見守って何もしないのも簡単です。でも、そうもしません。
じゃあ、何をするか。
まずは自分も一緒になって遊ぶ。遊びながら種をまき続け、程よい距離感から水やりを続けてみる。子どもの集団の中で何かが芽吹くタイミングを伺う。「育てる」というより、「育つ」のを待っている。
それができる大人が一人でもいると、子どもの集団はある時ワーッと一斉に花開くように思います。
最初は数人の遊びだった「ニンジャしゅぎょう」はいつからか、「みんなの楽しみ」になりました。よし、忍者屋敷を提案する頃合いだと思ったれおっちは、少し意識的にみんなを「トシさんの森」に誘うようになりました。お泊まり保育もそこで行って、何度も通うことで「トシさんの森」が少しずつ、自分たちのホームになる感覚を確かめながら。
もちろん、「ニンジャしゅぎょう」に夢中になっていく中でも、難しいことについては「やらなーい」と見ているだけだった子もいました。それが不思議と、みんなで話しあって巻き物ができたりすると、「(自分だけじゃなくて)みんなでできるようになりたい」と仲間から手が差し伸べられ、応援されるようになりました。そうなれば、自然と力が湧いてきます。
仲間同士で響き合い、難しいことにも挑戦して「できた!」を共に喜う姿、たまりません。
そんな風に時間をかけて、いつもの遊び場で少しずつ、枝で組んだ家を作り、縄ばしごをかけ、、、
という子どもの姿を見ていたら、なんと今度はお母さんたちまで動き出しました。
うみのこでは季節ごとに染め物遊びを楽しみます。紅花や藍、たまねぎの皮、ビーツ、セイタカアワダチソウ、ベンガラ... 年少さんの頃から季節ごとに楽しんできたから、年長になった今はみんなよくわかっていて、お手の物です。
自分で絞って、自分で好みの色に染めた布をお母さんたちに縫ってもらったら、、、もう、全員が「自分たちの場ができた!」という顔をして遊んでいます。
ほしい風景をイメージして、
仲間と響きあいながら世界に働きかけ、
自分たちのペースで形にしていく。
これを幼少期に体験できたら、きみたちはきっとこれからどんな場所に身を置いたって大丈夫!! って思います。
衣装ができた頃からは、もう大人が介在しなくても世界は広がり続けました。
大人もどんどん面白くなってきてしまい、切り出した長い竹を「トシさんの森」に運び込み、(大工仕事ができる山の持ち主の)トシさんのことまで巻き込んで、忍者の物見台=ツリーハウス作りもはじまりました。
それをずーっと見ている年中さん年少さんは、もちろん羨望のまなざし。忍者屋敷に招待してもらうと「この家に入るときは靴を脱ぐんだよ」とか、「自分で登れる人だけなんだよ」とか、年長さんが決めたルールをよーく知っていて、大人が何を言わなくたって「カッコよく」遊ぼうとします。
こうして子どもから子どもへの響き合いがループするようになったら、大成功。そこからは保育者はただ見守り、自分が楽しんでいれば良し。子どもたちは自分で考え、自分で遊ぶ、遊ぶ、遊ぶ!
釣りからの発展で「海にぼうけんに出よう!」と竹のイカダを作ったときも、楽しかったなー。出航は平日だったのに、気づけば働いているはずの父母も(他学年の父母まで😂)みーんな休みをとって、船出を応援しに来ちゃったりとか。
子どもからすべてをはじめて集団遊びが広がっていけば、
いつの間にか、子どもも大人もワクワクが止まらなくなっていく。
自然×子ども×身の丈+数センチの挑戦。
それがあまりに楽しそうで、美しくて、いつの間にか巻き込まれて
気づけば自分も成長してしまう大人たち。
わたしは、この眩しい化学反応を見ているのがとても幸せ。
は〜、今年も飽きる暇がない!
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