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TED:ドナルド・ノーマン「感情に訴えるデザインの3つの要素」

TEDでドナルド・ノーマン氏が語る「感情に訴えるデザインの3つの要素」をまとめました。元の動画はこちらから閲覧できます。

TEDとは?
世界各国の著名人や知識人を集めたスピーチ動画を配信しています。
ジャンルは幅広いですが、主にTEDを中心としています。
 (TED=T:テクノロジー・E:エンターテインメント・D:デザイン)
今回はDのデザインをピックアップしています。

ドナルド・ノーマン氏とは?
専門は認知科学者・認知工学者です。『誰のためのデザイン?』という著書で人間中心設計のアプローチを提示し、現在のヒューマン・インターフェースやユーザビリティに大きく貢献しています。

記事の内容

この記事の中では、動画を元に以下のことを書いています。
1:感情に訴えるデザインの3つの要素
2:環境や心理によって脳の働きが変わる
3:脳の処理とデザイン

1:感情に訴えるデザインの3つの要素

感情に訴えるデザインの3つの要素
1:美しい形状
2:機能的
3:ユーザー体験

1:美しい形状
見た目が美しいと感じて使いたくなり、欲しいと感じること。

例ではアレッシィのフィリップ・スタルクがデザインした「レモン搾り」が素敵だと言っています。しかし、ノーマン氏の購入した金色のスペシャルエディションというバージョンの注意書きに「レモンを搾るのには使わないでください。金メッキが酸で痛みます。」と書かれいているそうです。レモン搾りはできないが、美しいレモン搾り
ただ美しいというだけで、嬉しさやワクワクを感じる。

実際に例のようにいつ使うかわからないものや、ただ見た目に惹かれて買ってしまうことがあります。

2:機能的
理想的な機能を備えていることです。

先ほどの例でいうと「レモンが搾れないレモン搾り」ではなく、「レモンが搾れるレモン搾り」です。手軽にレモンが搾れて、さらに手入れも簡単で、すぐには錆びず長期的に使えるといいかもしれません。役に立ち必要と感じる機能を持っていること。

3:ユーザー体験
手に持った時の触り心地や、形状と機能を考慮したデザインを使ったときの体験です。

例の「美しいレモン搾り」を見ただけでワクワクし、実際にレモンを搾ると簡単で手のなじみも良い。搾りたての鮮度の高いレモンを料理のアクセントにしたり、好みのお酒に使うことで日々の楽しみが増える。これらを通じたユーザーの体験や心理が重要。

2:深さ優先の思考・幅優先の思考

さらに感情に訴えるデザインの3つの要素につながるストーリーとして、いくつか例を挙げていました。

恐怖や不安:深さ優先の思考
恐怖や不安によりできる人とできない人がいる。

高さ100mに設置された細い板を想像したとき、落ちることを考え恐怖で歩けないかもしれません。一方でサーカス団や建設現場の作業員などは、特殊な環境下だからこそ集中し、実際に成し遂げている。
ポール・サフォー氏は講演の直前になると、不安感が集中力を高めて集中して講演で話す内容をまとめることができると言っていたそうです。

つまり、恐怖や不安が脳の働きにも影響を与えています。

楽しい:幅優先の思考
恐怖や不安の逆に、楽しいときは幅優先の思考が働きやすいそうです。

例えばブレーンストーミングでは、楽しくみんなでゲームをして意見を出し合います。批評せず奇抜でいかしたアイデアを出します。そんなときに、脳は楽しくクリエイティブな働きをします。小さな問題に対しても「どうにかなるさ」と言えます。

3:無意識の行動に対し、デザインでコントロールを行う

脳の処理には本能レベルがあります。
この本能レベルとはこれまでの人類からの経験によるもの。苦い味、うるさい音、寒さ暑さ、怒っている声などが嫌い。逆に果物、明るい色、笑顔などを好む。

脳の処理の中間レベルは行動レベル。多くはこのレベルで行う。
歩こうと思った時に、自分の足をコントロールしようとは思っていない。言葉も無意識に話している。

本能レベルも行動レベルも無意識で自覚がない。
私たちのすることの多くは無意識で、自動的な振る舞いです。熟練の技は無意識で、体が覚えているものです。

機能のデザインにおいてはコントロールの感覚が大事です。完全にコントロールできている感覚が喜びにつながる。これに近しいものとして『融けるデザイン』という書籍で、iPhoneに感じる自己帰属感があります。

まとめ

1:感情に訴えるデザインの3つの要素
「美しい形状・機能的・ユーザー体験」を考慮すること

2:恐怖や不安な環境では深さ優先の思考が働き、
楽しい環境では幅優先の思考が働く

3:常に無意識の行動を行なっている人間に対して、
デザインで感情のコントロールを行う

感想

動画の冒頭ノーマン氏は「彼の通りにするとみっともないデザインになる」と言われるため「今後は美に生きることにしました」と言いました。

これに対して思ったのは、本を読んだり話を聞いた後の感想は様々。機能だけを追求しているように感じたのかもしれません。もしかしたら、書き方や前提が抜けていたという課題もあるかもしれません。

ただ、ノーマン氏の著書を元に制作した側にも、課題が三つあると思いました。一つ目は個人の知識や解釈が異なってしまうこと。二つ目は著者の意図をすべて汲み取り理解するのが難しいこと。三つ目は自分の制作するものや環境が、本に挙げられる例や環境とは違うことです。本人が目の前にいて、質問したりフィードバックを得ながら作ることと比較すると、難易度が高いです。それにノーマン氏は英語で執筆されていますが、日本語に翻訳されている時点でも大きく変わります。

ということで、この動画通りに作れば最適なデザインになるとは言えないと思います。動画のように、美しい形状・機能・体験をすべて最高水準にすることは理想的です。ただし現実的には、スケジュール・費用・環境などから優先度をつける必要があるかもしれません。そのときに自分の中で、どこを優先するか?意見がわかれたら周りをどうやって説得するか?結局は自己判断になります。自分の基準を持つために、こうした知識が役に立つのかなと思いました。

関連リンク・参考

動画:感情に訴えるデザインの3つの要素
動画の文字の書き起こし

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