53|法で解決できること、できないこと
「私は一生、障害のある弟の世話をしなくてはいけないのですか?」
なんとも衝撃的なこのフレーズ。
弟が自閉症で、きょうだい児である私が、幼い頃から何度も何度も悩んできたことだった。
そしてその答えがこの本には書かれていた。
法の視点から考える
今回紹介したいのはこの本!
中央法規 出版/藤木和子さん著
『きょうだいの進路・結婚・親亡き後』
この本を書かれた藤木さんは、弁護士であり、聴覚障害のある弟さんをもつきょうだい児である。
弁護士という、私にはとにかく「凄そう」としか言えないお仕事の傍ら、きょうだい児の世界に対しても積極的に活動されている。
そんな藤木さんが、きょうだい児のお悩みに、弁護士として法律的に答えてくださるという、もうなんとも夢のような本を出版された。
もちろん私もポチッと予約をして。
実は以前から藤木さんにはいろいろなご縁もあり、大変よくしていただいている。
藤木さんが以前出された本には私のイラストを載せていただいたりもしました。(ありがとうございます😭)
これのリメイク版を載せていただきました。↓
そんなこんなで早速読んでいったのだが。
「はじめに」の項目でまあびっくり。
きょうだい児に対しての説明がとてつもなく丁寧にされている。
ひらがな表記の理由、きょうだい児自身の障害の有無に関することや、パートナーに関しても同様の課題があると言及していること、そして「きょうだい児(者)」と呼ばれることもあるという記述。
まあなんてフォローが手厚いこと。
私は捻くれ者なので。
大抵こういうきょうだい児や障害児者に関する本を読んだりすると、「それだけじゃないけどね」と文句をつけたくなる。
それがない。
私が揚げ足取りたくなるところ、それは同時に、「ああ自分の存在はやはり書いてもらえないんだ」と悲しくなるところである。
もちろん世の中全てのことは書ききれないから、これでも漏れてしまっている人はいるかもしれない。それでも私はまずこの配慮に感動した。
そして、全てのきょうだい児が、安心して、楽しく生活できるように、という藤木さんの思いがとてもよく伝わってきた。
Q1.「私は一生、障害のある弟の世話をしなくてはいけないのですか?」
「答えはNOです」
そこにはそうはっきりと書いていた。
ずっと、もやもやと抱えてきた問題。
それを「NO」と言い切ってくれたこと。
すごく個人的なことを言うと、そんなこと書いてしまっていいのだろうかと思うくらい笑、この本は“本当のこと”を書いてくれている。
私には法のことはよく分からない。
法的に「一生面倒を見る必要は無い」と言われても、どうしようもない問題があることも事実。
法律が全て解決できるわけではないと感じてしまう。
それでも、ひとつの客観的な答えとして、このような回答があることは、きょうだい児たちにとって心の支えに、あるいは本当に物理的に支えになる。
どうしても困ったときに、これを知っていれば、なにか手がかりになることがあるかもしれない。
法的に物事を解釈するとはそういうことなのかなと、素人ながら感じた。
進路、結婚、親亡き後
私は、弟のことが好きだし、一緒にいて楽しいし、縁を切りたいと思ったことはありません。
でも、この先もずっと面倒をみなければいけない。
親は、あなたの好きなことをやりなさい、弟のことは迷惑かけないように用意をするからと、昔からよく私に言ってくれている。
私はとても図々しいので、そうしてくれないと困ると親に答える。
でもだからといって、弟の全て見放すつもりはないし、いくら親がそう言ってくれていても、いつかは面倒をみなければならないことは分かっている。
だって親はいつかいなくなるから。
本当に窮屈で、嫌になります。
なんで一生面倒みなきゃいけないんだと言いたくなります。
進路も、今まで何度も悩んできた。
家の近くにいるべきだろうか、弟のことを全部親に任せていいのだろうか。
家を離れてからも、ずっと申し訳ない気持ちが私の心には居座っている。
今後、いつか結婚する時がくるかもしれない。
その時、相手に何を言われるだろう。
子どもに遺伝はしないだろうか。
弟は結婚式に来れるのか。(気が早い)
そんなことを小学生の時から考えていた。
今も考える度に、胸がぎゅっとなります。
そして親亡き後、弟と2人になった私はどうしたらいいのか。
そんなことをふとした時に思う。
しなくてもいいのかもしれないけど、しなきゃいけないことがたくさんある。
きょうだい児とはそういうもの。
ずっとそうして生きてきました。
そしてこれからも、その縛りは私をつきまとう。
だから、法律が全てだとは思いません。
でも、何かあった時の命綱として、法律という手段があることは、自分の視野を広げてくれる。
そして何よりこの本では、同じように悩んでいる人がいるということ、それに対して考えてくれている人がいるということ、そんなあたたかさを感じた。
今はまだ、申し訳ないことに私が幼いがために、全て受け入れることも理解することもできません。
でももう少し大人になって、困ることも変わってきたときにこの本を開いて、こうしたらいいんだ、自由に生きていいんだと、助けられる日が来るのだと思います。
そんなお守りのような本です。
みなさんもぜひ。
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