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にんげん 1

以前から集めていた言葉たちを
(古いもので2020年のものもあります)
一つにまとめて公開することにしました。
あの時に書いたものも、
今の私がまとめると
全く違ったものになってしまう悲しみと喜び
どんな風に映るのか不安ですが
目に留めていただけた方の何処かに
触れられたらと思っています。
---文月---



「未練」

星が泣いてる。
何億光年も前の出来事が泣いてる。
何億光年も前だから
今の私には思い出せないこと。
きっとほんとうは思い出したくもない過去。
思い出したいことだって
思い出したくないことだって、
全部全部星になるから。
忘れようとしなくても、忘れてしまっても、
あの星を見上げたらわかる。

星が泣いてる。
貴方が忘れようとしたって、
全部全部星になるから。
貴方は、あの星が泣いていることに
今も昔も気づいていなかった。
この先も気づくことはないと
あの星は泣いていた。

いつかあの星を眺めて、
「綺麗だね」って言う貴方には、
きっと私の一番星の綺麗さなんて
一ミリも分かって貰えなくて、
きっともっと綺麗な一番星が
眩しく見えているんだろうな
私の一番星を、
「綺麗だね」って言う優しく微笑む
狡い貴方にでもいいから、
欲を言えば顔を歪めて
「綺麗だね」って言う貴方に、
もう一度会ってみたい。 

「父性」

大好きだった
太くてごつごつした手
お歌を歌いながら並んで歩いた公園までの道のりこうへんに いこーう 
こうへんに いこーう

あやちゃん、元気だねえ。
と笑っていた

こうへん は おかしいよ
こうえん だよ

と言わないのが、あの人だった。

夢だったのかな

揺れるあの人の影  鈍い痛み

笑い 歪む あの人の顔

意味が分からなかっただけなの

分からなくて 泣いてしまったんだよ

生温かい痛み 顔が濡れて

返してよ まだ何も知らない少女だった私

雄叫びが 私の小さな胸の上で 揺れる

私は あの人のこと

大好きだったよ


 「出会い」


国道を走る、黙々と、淡々と。
私の知らない場所にも道はあって
知らない誰かが知らない誰かのために
泣いたり苦しんだりしてつくった国道が
ここにはあって、
私はその、
誰かのつくった道を 走っている。
私のただ一つの想いを
見つけてもらえますようにと
誰にも聞こえないように
でも確かに 祈って
ただただ 走った
このまま真っ直ぐ走ったって
見つけてもらえないのなら
次の角で右折しようと決心し
右折レーンへ

私が欲しいもの
私が欲しかったもの
抱擁
ただ、触って欲しかった
触ってくれれば 良かっただけなのに

そこに知らない車が
左からこちらに移って
私の前へ
ウインカーをチカチカさせて
行ったり来たりしようとしていた

私はその車もその人のことも
本当のところよく知らないのだけれど
ずいぶん前からよく知っていたような顔をして

 「面白い人」

と言った。
下手くそだというとあまりにも可哀そうだし
きっとそんなことを言ってしまえば
どこかで潰れてしまうかもしれない。
どちらにせよ
知らない人、だから
そんなの知らないけど

 「どんな人だって、
   生きていればまた会えるから」と

嘘みたいなことを平気で吐く君みたいになりたくて

 「どうか生きていてね」

とだけ、思うことにした。

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