文月

言葉に囚われた、偏屈な私の戯言でしかないけれど。日々の雑踏の中に浮かぶ言葉たちが、どう…

文月

言葉に囚われた、偏屈な私の戯言でしかないけれど。日々の雑踏の中に浮かぶ言葉たちが、どうか、救われますように。

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あと数時間で、終わってしまう。変わってゆくものと変わらないものと。障害物にぶつかっていちいち立てなくなってしまう不自由なからだに生まれた事を呪っても。 もし私がもっと痛みに鈍感で、或いは痛みを痛みとも思わないくらいの人間だったら。私はもっともっと遠くへ自由に飛び立てたのだろうか。そうなったとしたら。自分のことを軽蔑してしまうだろうね、一丁前に。 **************** 満員電車、という言葉に現実味を感じなくて、コメディドラマやコントを見ているような気持ちになって

    • にんげん 1

      「未練」 星が泣いてる。 何億光年も前の出来事が泣いてる。 何億光年も前だから 今の私には思い出せないこと。 きっとほんとうは思い出したくもない過去。 思い出したいことだって 思い出したくないことだって、 全部全部星になるから。 忘れようとしなくても、忘れてしまっても、 あの星を見上げたらわかる。 星が泣いてる。 貴方が忘れようとしたって、 全部全部星になるから。 貴方は、あの星が泣いていることに 今も昔も気づいていなかった。 この先も気づくことはないと あの星は泣いてい

      • おんなのこは腕の中で

        あなたの体の中で、赤ん坊みたいに、おんぎゃあおんぎゃあと声を上げると、あなたの体の中で、おんぎゃあおんぎゃあ、が反響する。反響する声を、ずっと聞いていたい。おんなのこは腕の中で、君に飼われたその日から、ずっとずっと、すやすや眠っている。わたしの気もしらないで、ただ腕の中で眠りにつくのを待ってる。愚かなのはどっちかしら。おんなのこの顔は、芸術品だってこと。知ってか知らずか。「めんどくさい」で片付けて、「好き」で言いくるめる。 これ以上触らないで。私の化粧ポーチ。 * 何も

        • 忘却曲線

          饐えた匂いのする部屋で、黒い、キャミソールの線をなぞる遊び。肌が近い。触れるか触れないかの瀬戸際で、悩む。負った傷は私が思ってた3倍も、誰かが思ってるより10倍も深かった。誰か。 面白くないもん。お前。ぺらぺらと何も無い日常を垂れ流す歌。聞きたくもないつまらない女の話。聞かなきゃいいんじゃない。賢い頭が喋ってる。 秘め事、得意? 素材じゃなかった。お前から、お前の生きる世界から、あれは逃避行のサインだったんだよ。なんでも、素材。味付け下手くそなたまごスープ飲まされてるみ

          よこがお

          消えなくても、癒えなくても、生活はつづく。 * よこがおを見ていると、何だか笑ってるんだか怒ってるんだか分からないかお。それが何故か焦れったくて。いつからこれを、すきだとかかっこいいだとか思うようになったのだろうか。そういうこと、何も考えなくて、ただ私は、このよこがおをいつまでも眺めていられたらいいなと心から思った。それだけだった。 よこがおみたいな月。今日の月、花王のマークみたいだね。何にも面白くないけど、そんな面白くもなんともないことが、いつもなら「面白くないから言

          よこがお

          お月さまだけが知ってる

          満月の夜、海に行こうと思っていた。忘れていた、訳ではない。「今日は満月だよ。」そう口にした言葉は何故か妙に浮いてしまったものだから、忘れていたことにする。何もかもが満ちる夜。明日から欠けていく月。それでも大きくて綺麗な月。みんな、みんな知らない。あの夜のこと。みんな知らない。今日の月は、真実だけを照らす光だったこと。 * 「俺のどこが好き?」と言う質問に対して、どういう反応が1番ベストなのだろうか。この時の、この瞬間!いつも変わらないこの瞬間!この時にああしてくれたこと!

          お月さまだけが知ってる

          春の匂いが永遠の記憶を連れてくる。記憶と五感の話。

          1996年、春。桜が見える。暖かい日差しと空気が頬を撫でる。風に揺られて木々の葉や桜がサラサラと散る音がする。スーパーには真っ赤なイチゴや菜の花筍が並んでいる。その命たちの芽吹きが、春の匂いを呼ぶ。ラジオから流れる邦楽はどれも出会いと別れを歌うものばかりだった。 明日の朝僕は船に乗り、と口ずさむ。唇が震えているのを感じた。 いつからだろう。僕とって、こんなにも春の匂いが胸を締め付けるような痛みが生じるようになったのは。弥生、ブルーの春を連れて。 ___________

          春の匂いが永遠の記憶を連れてくる。記憶と五感の話。