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おんなのこは腕の中で

あなたの体の中で、赤ん坊みたいに、おんぎゃあおんぎゃあと声を上げると、あなたの体の中で、おんぎゃあおんぎゃあ、が反響する。反響する声を、ずっと聞いていたい。おんなのこは腕の中で、君に飼われたその日から、ずっとずっと、すやすや眠っている。わたしの気もしらないで、ただ腕の中で眠りにつくのを待ってる。愚かなのはどっちかしら。おんなのこの顔は、芸術品だってこと。知ってか知らずか。「めんどくさい」で片付けて、「好き」で言いくるめる。

これ以上触らないで。私の化粧ポーチ。

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何も無い広い空間があって、そこに1本の線が引かれてあったとする。人に優しくされる度に、適当に生きちゃいけないなと思う。真っ直ぐに生きていけないから人は私に怒るし まともに生きることを求められているような気がしていた 実際私は全然まともじゃなくて まともに生きれるはずもなくて だから理解なんてされない って弱気になるしか無かった そこに甘えていた 誰かが心配してくれて成り立つ私を 私は私の意志で絶つことは出来ないはず 誰かが心配してくれて成り立つ私にしてはいけない

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1人で立つおんなのこは本当に素敵だなと思う。思えば小さい頃から私は1人で立てたことなんかなかったし、1人で立てない環境が当たり前だと思っていたから、こうやって今目の前にあるご飯だって、家だって、私のお金じゃない。みんなみんな、初めから1人で立てるわけじゃないけれど、これから1人で立って行けるようにって親に貰ったものも、羽ばたいてどこまでも飛んで行けるようにって先生に貰ったものも、私の生きていく世界では、全部全部使いこなせるものじゃなかったよ。誰も知らないわたしのひみつ道具。きみは知っているかい。

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「気付いたらどこかへ行ってしまいそうランキング」という不名誉なレースに勝手に走らされている。それってすごく残酷でじゃない。どうするの、私が「気付いたらどこかへ行ってしまう病」で、それが不治の病だったら。怖いわよ。そこで示されるどこかって、あなたにとってどういうものなのか、そういう共通認識みたいなものが、私以外の人間には見えていることって。もっと怖いのは、そこであなたの知らないどこかに飛ばせてしまえるあなたが、私には「気付いたらどこかへ行ってしまう」ことよりよっぽど突飛だったから、そういう突飛な人に、私もなりたかったなぁ。どこかへ行ってしまった私をみつけて抱きしめてくれるかしら。

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桃のアールグレイマリネ。マスカルポーネのせ。1番しあわせになりたい時に食べようと決めている夏の食べもの。おとこの体重が、だらしなく、この体全体に乗ったときと、どっちが幸福かしら。

おんなのこは腕の中で。一つの秘め事を持って、今日もすやすやと眠る。それはそれは深刻でも、意外とあっさり笑いのけられるものだ。おんなのこよ。昨日のことは昨日の君がよく頑張ったのだ。もう考えるな。明日が不安で寝れなくても、明日の君はきっとうまくやるよ。信じて。

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