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恋愛幻想

時々、主張されてきたが、最近は見かけなくなった恋愛幻想論について。


①ネット(平成中期)

 2000年代に、はてなブログで活躍していた烏蛇さんの主張。
 友人関係は、それまでの友達として過ごした共通の経験から、かけがえのない交換不可能なものと主張できるが、これから交際しようとする男女には、それまで恋人としてすごした共通の経験がないのに、かけがえのないもの交換不可能なものとして、互いの存在を承認し合うのは錯覚であるとした。 
 少し補足しておくと、それまで知人、友人として交際していても、恋人としては交際してこなかったのに、交際前から相手を特別な存在だ考えるのは、幻想だということである。
 この主張は、友人の代わりに家族を当て嵌めても成立つだろう。

②書籍(昭和末~平成初期)

 岸田秀は「マスコミ的には大物」(小谷野敦)の心理学者であるが、性は本能ではなく、幻想に支えられており、恋愛も幻想の産物であると主張した。
 恋愛は自然ではなく文化的に構築されたものだというのが、この本の趣旨で、1980年代には、一部で流行した。

吉本もマスコミ的には大物の思想家であるが、吉本は個人が持つセルフイメージは自己幻想、社会が持つものは共同幻想、男女が持つのは対幻想と呼び、幻想の範囲を広く主張した。岸田の論は大衆向け幻想論と呼べるかもしれない。

③これらの幻想論に対しては、幻想と主張したところで幻想から逃れられるわけではないという反論が可能であるが、恋愛に関しては恋愛離れが一部の人達で定着したことを考えると、

恋愛実体論→恋愛幻想論→恋愛離れ

という図式が一応、成立するようである。勿論、これは一部の人達のことで、普通に恋愛している人達は多く、以前なら恋愛幻想論を支持していたような人達が恋愛離れしただけだということなのかもしれない。

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