【Buyer's Voice】大手人材企業-音声解析ツール&CRM導入
第五弾は、大手人材企業のインサイドセールス部門にて責任者をされている方に、音声解析ツールとCRMの2サービスを導入した際の意思決定プロセスについてインタビューを行いました。
■決済者プロフィール
企業規模:数千人
業界:人材
部署:インサイドセールス部門
検討SaaS:音声解析ツール、CRM
導入結果:部門全体
購買プロセスにおける役割:責任者(決済者)
──どのようなきっかけで課題に気付き、整理されましたか。
まず音声解析ツールの話をさせていただきます。 インサイドセールス組織の立ち上げフェーズだったのですが、最初の約3カ月を過ぎたタイミングで、人・物・金・情報という観点で課題の整理をしました。その整理の中で一番解決すべきだったのが教育体制でした。
立ち上げがコロナ禍の真っ只中のタイミングで、リモート環境下で様々なメンバーを全国の様々な部署からアサインしている状態でした。日常業務がかなりブラックボックス化していることに加えて、新しく組織を拡大していく、勝ちパターンが平準化されていない、教育体制も整っていなかったという課題がありました。
そこの解決策として、インサイドセールスの支援ツールをいろいろ見ており、ホットになっていたのが音声解析ツールだったので、関心を持ちながら進めていきました。
──教育体制が整っていないと言う課題から音声解析ツールにつながったのでしょうか。 それともサービスありきで、課題を意識し始めたのでしょうか。実態としてはどうでしょうか。
前者のほうが強かったですね。 ただ、コロナ禍でなかなか新設部門に予算を割けない状況でした。音声解析ツールなら社内の別部門でも既に導入されていたので、予算を取りやすそうと言う理由から、若干話がそちらに進むようにけしかけていた部分はあります。
──CRMの場合も同じですか。違うところもありますか。
CRMは、かなり異なっています。 CRMの時は顧客情報が一元管理されてないという課題感がありました。 お客さまが資料をダウンロードした履歴が残っているツール、フィールドセールスが商談をしたという履歴が残っているツール、通話履歴が残っているツール、これを全部ばらばらのCRMで管理しているような状態だったのです。 したがって、そういった情報を連携・一元化するハブになる目的で導入されました。
──その課題は上から来たのですか、現場から来たのですか。
現場からです。
──それはどのようにして来たのですか。 アンケートを取ったのか、定例ミーティングで来たのですか。
定例ミーティングですね。 例えばマーケティングチームとインサイドセールス、インサイドセールスとフィールドセールスという部門間の連携の中で、わざわざ口頭でコミュニケーションを取る必要もないという事案がかなりの頻度であったので、そこから課題感としての声が大きくなっていったイメージです。
──音声解析ツールのほうはどうですか。 課題は責任者寄りかと思いますが、上から来た感じですか。
そうです。上から来たイメージです。2カ年、3カ年という範囲で、「今後、組織を拡大していきましょう」というロードマップ的なものがある中で、パフォーマンスが高い社員が現状で生まれてくるけれども、それをある程度平準化して、自社でしっかり活用できるマニュアルに落とし込まなければいけません。 マネジャーも増えるにつれ、マネジメント方法がばらばらになってしまう、そういった未来が見えているのだったら、今のうちから対応できることは、中長期的な課題解決として何か対策を打っておいたほうが良いという流れです。
──標準化というと社外の人に研修をしてもらうことも解決策として考えられます。 ツールを入れる意識決定までに、他の方法も一応検討したのでしょうか。ツールでできそうだから手軽に始めてみたのでしょうか。
調査時間があまりなかったので、ツールで解決できるからという後者のイメージが強かったです。
──CRM導入の時も同じですか。
同じです。 検討時では、セミナーや研修を受けるという選択肢もあったものの、当時は成功事例がIT業界に偏っており、人材業界はほぼないような状態でした。 自分達の業界やプロダクトにマッチしないのではないかと言う懸念があり、 ツールを導入して、自前でできるようにしていくほうが良かったのです。
──手軽に始められるし、もしうまく改善されるのであれば良いという感じですか。
おっしゃるとおりです。
──具体的な要件を決める上で、社内ヒアリングやアンケートなどは行いましたか。
音声解析ツールとCRMで大きく変わっています。 前者は場当たり的に要件定義をしました。マネジャーと現場との面談時に、現場でもマネジャーでも組織でも解決できなかった日常業務の課題を、集めて、整理及び優先度を付けていきました。
後者はデータベース周りを専門に行っている部署があったので、その部署の責任者が各現場責任者にアンケートを取りながら要件定義をしていきました。
──音声解析ツールはインサイドセールスの部署のみに導入したのですか。
おっしゃるとおりです。 CRMはマーケティング、インサイドセールスの2部門です。フィールドセールスには導入していません。
──サービス比較はどのように行いましたか。
音声解析ツールの際は、他に2つのサービスを比較検討しました。 導入の決め手になったのは、解析機能と、しっかり通話がつながること、この2つです。 特に、在宅勤務も導入したばかりだったので、自宅だとネットがつながりにくいという声もあり、通信環境を問わずしっかりつながるであろうという保全性・安全性が決め手になりました。
──トライアルをしたのでしょうか。
導入したツールと比較検討したツールの2社でトライアルを行いました。 後者はそもそも提案内容が微妙なところがありました。
──どの辺が微妙だったのですか。
長く使っていきたいという思いがあったのですが、そのイメージが湧きませんでした。 サービス内容自体は、他のサービスと比較して遜色がなかったのですが、サポート体制が少し不十分ではないかという懸念がありました。
──判断軸を幾つか挙げていただきましたが、どのように決めましたか。メンバーに聞いて決めたのでしょうか。責任者レベルで決めたのでしょうか。
責任者レベルで決めていったところが多かったです。判断軸としては、サービスと利便性、電話がつながるかというところと、解析機能です。あとは料金の部分です。
──○×表は作りましたか。
そこまではしていません。
──稟議のプロセスに必要なコンテンツとして、判断軸とプレーヤーを並べて、○×表を作って、評価コメントを載せるということを求める企業もあると思うのですが、あまり必要なかったのですか。
必要ありませんでした。全く導入事例がないサービスであれば求められます。今回は、他部門で導入事例があったので、それが求められませんでした。 また、比較検討したツールは、スマートフォンが別途支給されるらしいです。そのスマートフォンだけ、社用携帯で一部使っていたという過去があります。その時に利便性が良くなくて、つながりにくいという障害がありました。そのように過去の実績が意思決定に影響しました。
──CRMの方は比較という観点でいうと、どうでしょうか。
こちらはあまり比較検討していないです。
──ご自身はどのように携わったイメージですか。 データベース周りの責任者が中心だったという感じですか。
おっしゃるとおりです。私の関わりは、現場からの意見をあげることです。
──もしかしたら、○×表は彼らが作っている可能性もありますか。
可能性としてはあります。
──ただし、なさそうだということですね。
そうですね。私たちが導入した規模感だと、利用料金もそれほど高くないので、ないと思います。利用料金が大きくなるとか、予算の金額を大幅に超えるものが発生すると、必ず求められます。
──ラインとしては、幾らくらいの金額のイメージですか。
職位によるのですが、月間約10万円を超えてくると、いろいろハードになります。 予め予算計上していれば問題ないです。
──トライアルは、現場の方も含めて使ったのですか。 それとも、一部の限られた人だけですか。
一部の限られた社員です。 シンプルに、ハイパフォーマーを選定しました。ローパフォーマーの、事実と意見が混ざってしまうフィードバックになると困ります。そこを適切にできる社員をアサインしました。
──営業が提供する情報はバイアスが掛かっていることがあると思いますが、各種情報はどのように検証しましたか。
担当の部署責任者、その上司と、間接的に関わる部門責任者という3名体制で、過去の知見を基に検討しました。これはかなり定性的に行われています。
──振り返って、進める上で苦労した点はありましたか。
最終意思決定者への事前の根回しですね。 稟議の起案は、予算の有無に関わらず、適切なプロセスを通じて意思決定を進めることが可能です。ただ、結局のところ担当役員が最終的な決定を下すという構造があります。 ですので、その役員に対して、事前にどのような提案を、どのタイミングで、どの程度の予算を想定して提出する予定なのか、社内で口頭承認を得てから進めることが大切なのです。 この過程で、社内のキーパーソンを見つけて協力を仰ぐことも必要になるので、時間がかかりました。
──承認を得る上で、どのような点が突っ込まれるのでしょう。 どの辺の説明が難しいのでしょう。
費用対効果です。 導入目的が教育体制の構築という、未来への投資のような側面があったので、直近数カ月のROIを最大化するというような観点では説明のしようがなく、そこが単純に厳しかったです。
──結論、どのように承認を得たのでしょうか。
事業計画に紐付けて、「必要だよね」という形で持っていきました。 現場の課題としては、研修云々というところがあったのですけれども、稟議上では「今後の事業で組織をこうスケールしていく」というような観点にひも付けて、必要性を示唆していったという感じです。
──営業に期待することはありますか。
結果論になりますが、もう少し解像度の高い導入事例・導入実績の説明・提案があったら、スムーズな導入につながったと思います。ただし、割と新しいサービスだと思うので、導入社数はあまり求めていません。 導入した結果、どういうアウトプットが出たのか、どういう効果が発揮されたのかということが知りたかったです。特にここは定性的な内容も多いと思うのですが、それを定量的な形で説明していただけたら、かなり社内でも話をしやすかったと考えています。
──他に期待することはありますか。
これも結果論になりますが、他のツールとの連携性・連携実績も提案していただけると、非常に良かったと思います。
──それは商談中に聞かなかったのですか。
聞けていたところと、聞けていなかったところがありました。
──意思決定するまでに、営業とのやり取りに苦労を感じたのか、比較的スムーズにいったのか、その辺の感覚はどうでしょう。
比較的スムーズにいったという感覚のほうが大きいです。 両社共に、比較的webでの広告や、いろいろな形で広告を展開していたので、検索することである程度情報収集もできました。 事前のリサーチに時間をかけることができた面もあるので、ストレスはなかったです。
──音声解析ツールは合計3社で比較検討していますが、世の中にはもっとたくさんある可能性はあると思います。そもそも、なぜこの3社で検討したのでしょうか。
弊社では検討の選択肢は多くて5社程度で収まっていたほうがありがたかったので、結果的には良かったと捉えています。
──比較検討ができなくなってしまうからですか。
おっしゃるとおりです。稟議起案をして、導入の意思決定をするというプロセスには、組織的にものすごい工数が掛かる一方で、導入検討を現場で行う時間はかなりスピード感を求められるので、5社以内がありがたいです。
──比較する上で、どのタイミングで先方の営業と相談したのでしょうか。 5~6社の資料をダウンロードして、それを社内でカジュアルに話をした時に、「こことここを取りあえず聞いてみようか」という意思決定をした後に、先方からのコンタクトに回答をしたという形です。
──資料上で、直感的に「ここは違う」と判別できたということですね。
おっしゃるとおりです。サービス自体も、インサイドセールス向けのものやBPOセンター向けのもの、コールセンター向けのものなど、特化している部分が異なるため、最初にそれらを仕分けました。
──今はweb上で情報が載っていますが、それでも営業に会う理由を教えてください。
大きくは2つです。 1つ目は、web上に記載されている情報について、より深く質問したい時です。 2つ目が、1回買って終わりというサービスではないので、導入後の伴走について提案を受けたいということが強かったです。
──カスタマーサクセスの部分ですかね。
おっしゃるとおりです。特に私たちの場合、IT人材が社内にかなり少なく、素人同然だったので、そこはできる限りベンダー側に頼りたかったというところが、どのツールを導入するにしてもあったので、そこはかなり見させていただきました。
──具体的にどのようなサポートを求めていましたか。
これも大きく2つあります。 1つは、導入したツールをどのようにして組織に浸透させていくかというところです。組織の文化的に、商談の中身を解析する(音声を録音される)という部分に対して、現場からの臆病なリアクションが想定されていました。そういった課題を突破し、ポジティブに変換し、成果につなげていくというゴールに対し、どのように伴走していただけるのかという提案です。そこはかなり期待していました。 2つ目は、どのように自社の営業活動に活用していくべきかというコーチングを期待していました。提供会社も、自分達でサービスを使って営業活動をしているので、営業の成功事例もかなり包容されているのではないかという仮説がありました。そういったところをアウトプットしてほしいと伝えていました。
──ツールがしっかりと定着するかというオンボーディングの部分と、Tipsのようなところですね。比較したサービスはそこに対して、具体的にどのような懸念があって落ちてしまったのですか。
どちらかというと不信感のほうが大きかったです。 公平に各ベンダーを比較検討したかったので、同じような質問をしました。 例えば、マネジメント経験のないマネージャーに対して、どういうステップでマネジメントすべきか、注意するべきことは何か、事例はあるかという相談した時に、具体的な話がなく「まあ、簡単にできますよ」というリアクションが返ってきました。 そこは素人目線からすると、もう少し分解してコーチしてほしかったというところが不信感に繋がりました。
──実際にツールを導入して良かったですか。
良かったです。もちろんサービス自体もすごく魅力的ですし、頻繁にアップデートも行っていただいているので、今後さらに投資してくださるのだろうという部分が1つです。あとは、カスタマーサクセスでのフォローアップが、私たち素人からすると非常にありがたいです。とても良いです。
──ありがとうございます。
こちらこそ、ありがとうございました。
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