化粧もコンタクトもせず乗り込む早朝の中央線、なんだかわるいことをしているような気分になってワクワクする
連勤中も夜な夜な机に向かい、窓の外が白んできた頃にやっと書き上げた28通の手紙の束を、今朝、昨日まで勤めた職場の事務所にこっそり置いてきた。
わずか4ヶ月の間に、大好きな場所が増えていた事実に沁み沁みする。
事務所を出た足でふと、観たいのにずっとタイミングを逃し続けていた映画の存在を思い出した。
途端に映画館の椅子に深く腰掛けて真っ暗闇に沈みたくなり、気が付くと足は映画館のある方へと向かっていた。
開館時間間際の、人もまばらな早朝の新宿を足早に進む。
そうして観た念願の作品。
スクリーンから流れる台詞、景色、表情、固有名詞、あらゆるものがグサリグサリと深く突き刺さって抜けなくなった。
いたって普遍的なものを「わたし(あるいはわたしたち)だけの特別な思い出だ」と神格化し、ぬらりと浸っていた過去の自分が恥ずかしくて堪らない。
情緒のバグが起きたところで脚本家が坂元さんだということを知り、
「どおりで…」と思わず声に出してしまいハッとしたが誰も見ているわけなどなくホッと安堵の溜め息。
これを綴っている今もまだ余韻が抜けていない。いろんな情緒が渦巻いてほどけない。たぶん私はこの映画をもう一度観に行くんだろうなと思う。
きちんと泣きつかれた後って子どもの頃に戻ったようでなんだか心地いい。
体が1cmくらい宙に浮いているようなフワフワとした気持ちのまま昼過ぎに帰宅すると、ポストに注文していた古本と友人からの手紙が投函されていた。
それを読みながら実家から届いた餅を2つ焼いて食べたところで急激な眠気が襲ってきた。布団の中へ滑り込む。
目が覚めて時計を見ると17:23だった。
湯船に熱い湯を貯めて首まで浸かりながら、この生産性のない最高の一日を忘れぬよう、今ここに記録している。
この走り書きを公開して、脱衣所の洗濯機の中で回っている洗濯物を干したら今日はもう寝ようと思う。
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