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The Beatles アルバム『 With the Beatles 』の訳

 

シングル 1963年8月

 

A. She Loves You

 
 ヴァースが三つ、四行のヴァース、それに四行のコーラスがついている。ブリッジが一つ、第二ヴァースの後のコーラスの後についている二行。冒頭はコーラスの一部分。 

あんた、恋人がわからなくなったて、思ってるんだ、 
でもさ、あたし、きのう、あの娘に会ったよ、 
あの娘がさ、思ってるのはあんただよ、 
あの娘はさ、あたしに話してったよ、言ってたね、 
言ってたんだよ、あの娘はあんたを愛してるって、 
ね、悪くはならないよ、 
ほんと、あんたを愛してるって、 
ね、あんた、喜ばなくっちゃ。 

あの娘が言ってたけど、あんた、ひどいことしたんだって、 
あの娘はさ、もうすこしで、正気をなくすとこだったよ、 
でもさ、言ってるよ、やっとわかたって、 
あんたは、そんなひどい人ではないって、さ。 

言ってたんだよ、あの娘はあんたを愛してるって、 
そんなあの娘の愛情があるんだからさ、
あんた、ね、喜ばなくっちゃ。 

わかってるだろ、あんた次第なのさ、 
あたしはさ、ほかに方法はないと思うよ、 
面目がさ、いっつも、あんたを駄目にするのさ、 
あんた、あの娘に謝りな。 

いぇー、いぇー、いぇー。 

B. I'll Get You

   

 ヴァースが二つ、ヴァースの冒頭と末尾に「Oh yeah, oh yeah 」の繰り返しが付く。ヴァースは前半四行、後半三行の合計七行で長め。ブリッジが一つ。 
 「 Imagine ••• / It’s easy •••」と言う行は、後のレノンの「 Imagine 」そのままなのに驚く。

オーイェー、オーイェー、 
やったね、やったよ、 

思い描いているんだ、君と相思相愛になった僕、 
すらっと描けるよ、僕には当たり前のことだから、 
ずっとずっとずっと前から、何度も思い描いてるんだもの、 
君と相思相愛になった僕のことをね。 
強情に言い張るのって、僕らしくはないけれどね、 
でもね、僕はね、最後にはね、君の心の的を射るのさ、 
そうさ、そのつもりなんだ、君の心をつかむんだ。 
オーイェー、

オーイェー、
考え続けてるんだ、昼も夜も君のことをね、 
僕には君がいなくちゃ、本当だよ、 
君のことを考えてるとね、僕は言い切れるね、 
ぜったい、ぜったい、ぜったい、悲しくはならないんだ。 
だからね、こうして今、君に告白してる、いとしい君、 
僕はきっと、最後には、君の心を射るからね、って。 
そうだよ、最後には、君の心をつかむんだ。 
オーイェー、 

さあ、その時が今すぐにもやって来るよ、 
僕が君の心を変える時が来るんだよ。 
もうね、君は僕に身をゆだねたようなものだよ。オーイェー、

my friend は、恋人への呼びかけ。 

アルバム『 With the Beatles 』1963年11月

  

1. It Won't Be Long 

 

 この歌の構造は変則的。要素は、ヴァースとコーラス(ジングル)それにブリッジだけれど。歌の冒頭にコーラスが倒置されて先に置かれ、しかもヴァースを挟んで再度歌われるので、二度繰り返されるコーラスがヴァースを挟んでいる形。なので、ヴァースは二行のみ。それで、ブリッジは四行、二文。 
 特徴的なのは、コーラスの発話者とヴァースとブリッジの発話者が異なっていること。コーラスは、どこか遠方に長期間出掛けて不在にしていた青年。ヴァースとブリッジは家で待っていた妻。遠洋航路の母港で歌われる船歌の様なものかもしれないし、「オデッセウス/ユリシーズ」的な神話世界の残滓かもしれない。

ユリシーズが歌う: 
「もう長くはかからないだろうよ、そうれ、そうれ、漕げ漕げ」
「もう長くはかからないだろうよ、おおい、君の元へ私は戻れるよ。」 
ペネロペが歌う: 
「毎夜、皆様は楽しくお過ごしになっているわ、 
でも、妾は一人っきりで待っていますの。」 
ユリシーズが歌う: 
「もう長くはかからないだろうよ、そうれ、そうれ、漕げ漕げ」
「もう長くはかからないだろうよ、おおい、君の元へ私は戻れるよ。」  

ペネロペが歌う: 
「貴方が出陣されてからと言うもの、妾はそれは寂しくしております、 
ああ、とうとう、貴方は帰っておいでになる、帰っておいでになるのですね。
妾は元気になりますわ、それが当然ですもの、 
貴方は帰っておいでになる、帰っておいでになるのですね。」 

ペネロペが歌う: 
「毎夜、妾の両のまなこからは涙が流れ落ちております、 
毎昼、妾は泣くより他にすることもないのです。」 

ペネロペが歌う: 
「ですが、わかっておりますわ、妾はきっと幸福に満たされます、 
貴方はもう出陣されることはないと、妾にはわかっておりますから。」 

2. All I've Got to Do

   

 ヴァースが二つ、ブリッジが一つ。この歌に登場するのは、女性と男性。ヴァースは女性の台詞で、ブリッジが男性の台詞。アメリカ的な光景なのだろう。

家で待つ妻が歌う: 
「わたしがね、あなたにそばにいて欲しくなったらね、ねえ 
わたしがしなくちゃいけないのはね、あなたに電話するだけよ、 
そうしたらね、あなた、走って帰ってくるでしょ、 
ねえねえ、わたしは電話だけ。」

「わたしがね、あなたにキスしたくなったらね、ねえ 
わたしがしなくちゃいけないのはね、あなたの耳に囁くだけよ、 
あなた聞きたがってるでしょ、「キ・ス」って、 
それでね、わたし、あなたにキスするの。」 

外で働く夫が歌う: 
「それは僕にしたって同じだよ、君が望む時にはいつだって、 
僕は飛んで帰るよ、きっとだよ、君が電話したらね、 
君は、ただただ、電話すればいいだけさ。 
君は、ただただ、電話すればいいだけさ。」 

3. All My Loving

   

両目ともちゃんと瞑ってよ、そしたら、ぼく、キスするから、
あしたには、目を開けても、きみを見られないだろうけどね。 
きみへの気持ちは変わらないって、肝に銘じておいてね。 
遠くにいる間、ぼく、
まいにち、手紙を書くから、そして、
ありったけの愛を手紙に込めて、投函するからね。 

そこにありもしないきみの唇、それでも、ぼく、まいにち、
その唇にキスしたつもりになるんだ、きっとそうだよ、 
それで、いつか本当のきみの唇にキスできる日を待ち望むんだ。 
遠くにいる間、ぼく、
まいにち、手紙を書くから、そして、
ありったけの愛を手紙に込めて、投函するからね。 

「ありったけの愛をこめて 
この手紙を送ります、草々。」
「ありったけの愛をこめて、 
愛するきみへ、頓首。」

4. Don't Bother Me   

 ヴァースが三つ、ブリッジが一つ。この歌は、一人称の語り手が、二人称の聞き手(この歌を聴いている人々も含むか?)に宣言をしている形。 
 第二ヴァースと第三ヴァースは繰り返されて歌われるけれど、第二ヴァースの繰り返しでは、最初の二行は言葉では歌われずに、ギターのソロ演奏に取り替えられている。

あの娘が行ってしまったから、ぼくは、誰にも話しかけられたくはないんだ。 
君たちとこれまでと同じ様にはできない、ぼくの方の問題だよ、わかってる。 
帰ってくれよ、ひとりにしておいてよ、面会お断りなんだ。 

あの娘がどうでもぼくをひとりにして出ていきたかったなんて、信じられない。 
毎晩、ぼくが一人ぼっちなんて法があるかい。 
でも、君たちに拘わってる暇なんてちっともない、おせっかいお断りなんだ。 

あの娘が帰ってこなければ、君らとはこれまで通りとはいかないよ、ほんと。 
あの娘がぼくにはただ一人の恋人であり続けるって、心底思ってるんだから。 

あの娘が帰ってくるまで、頼むよ君ら、ぼくと連もうとしないで、他所にいてくれ。 
あの娘がうちに帰って来たら、きっと君らには知らせるさ。それまでさよならだ、 
その辺をうろつくなよ、ひとりにしておいてよ、おせっかいお断りなんだ。 

あああ、ううう、あああ、おおお、 
ううう、おおお、 
でも、君たちに拘わってる暇なんてちっともない、おせっかいお断りなんだ。 

5. Little Child   

おチビちゃん、ねえ、おチビちゃん、 
お兄さんとダンスを踊ってくれるかな? 
お兄さん、一人あぶれてつまんないんだ、 
ねえ、一回ダンスの相手をしてくれないかな。 

あやしてくれる人要るかな、
お兄さんと一緒に遊べば楽しいよ、 
さあ、さあ、ダンスの相手をしてくれないかな。 

お兄さんの側にいるのは、おチビちゃんだけだね、 
ああ、隠れん坊はしないよ、さあ、ダンス、 
さあ、さあ、ダンスの相手をしてくれないかな。 

おチビちゃん、ねえ、おチビちゃん、 
お兄さんとダンスを踊ってくれるかな? 
お兄さん、一人あぶれてつまんないんだ、 
ねえ、一回ダンスの相手をしてくれないかな。  

6. Till There Was You

( 1957年公開のミュージカル『 The Music Man 』の中の歌。作詞作曲は、Meredith Willson メレディス・ウィルソン。)   

7

. Please Mr. Postman

(1961年に The Marvelettes が演奏しシングルでリリースされた歌。作詞作曲は、Georgia Dobbins, William Garrett, Freddie Gorman, Brian Holland, Robert Bateman ジョージア・ドビンズ、ウィリアム・ギャレット、フレディ・ゴーマン、ブライアン・ホーランド、ロバート・ベイトマン。)   

8. Roll Over Beethoven

(1956年にシングルでリリースされた Chuck Berry チャック、ベリーの歌。)   

9. Hold Me Tight 

 
とうとう、叶った、ておもう、 
ぎゅっとして、 
ぼくが意中のひと、て言って、 
そうしたら、もう、
ぼくは孤独者でなくなるよ。 

ぎゅっとして、そう、きょう、きょうだよ、
きみが、きみが、ぎゅっとして、ね、ね、ね、 

ぎゅっとして、 
ぼくがきみに夢中なの、とめないで、 
きょう、きょうだよ、 
ぼくはきみだけを、抱擁するんだ。 

ぎゅっとして、そう、きょう、きょうだよ、 
きみが、きみが、ぎゅっとして、ね、ね、ね、 

ぎゅっとするってこと、それは、 
きょうは、二人切り、てこと。 
とうとう、叶った、ておもう、 
ぎゅっとして。 

ぎゅっとして、そう、きょう、きょうだよ、
きみが、きみが、ぎゅっとして、ね、ね、ね、 

Wings 『 Red Rose Speedway 』の中のメロディ「 Hold Me Tight/Lazy Dynamite/Hands of Love/Power Cut 」から「 Hold Me Tight 」

僕は待っていたんだ、君、これまでずっと、 
僕をつらまえて、しっかりと、 
僕を受け容れて、そうしたら、僕はしっかり出来る。 

僕をつらまえて、しっかり、僕をつかまえて。 
僕をつらまえて、しっかり、僕を抱きしめて、ちゃんと。
僕をつらまえて、しっかり、僕を抱き込んで、きつく。 
僕をつらまえて、しっかり、僕を抱きしめて、ちゃんと。 
僕をつらまえて、しっかり、つかまえて、きつく、そばにいて、ぴったり。 
今晩は、僕は、君を他にはやらないよ、 
蝋燭の灯りの夜、 
僕を抱擁して、きっと、そうして。   

10. You Really Got a Hold on Me

(1962年にシングルでリリースされた The Miracles ミラクルズの歌。作詞作曲は、Smokey Robinson スモーキー・ロビンソン。)   

11. I Wanna Be Your Man 

 

 ジングル。 
 この歌の主人公も、たぶん、「 I 」ではなく「 You 」。求愛されている少女の方が主人公なのだと思います。

あんたの「いいひと」になりたいんだ、 
あんたの「テーシュ」になりたいんだ、 

あんたをすきなんだ、ほかのべっぴんさんじゃない、 
ほかのべっぴんさんなんか、すきになれるかい、 

あんたの「テーシュ」になりたいんだ、 
あんたの「テーシュ」になりたいんだ、  

あんたもすきだっていってくれ、 
はっきりいってくれ、 

あんたの「テーシュ」になりたいんだ、 
あんたの…、   

12. Devil in Her Heart (1962年にシングルでリリースされた The Donays ドネイズの歌。作詞作曲は、Richard Drapkin リチャード・ドラプキン。)   

13. Not a Second Time

   

 ヴァースが二つ、ブリッジが一つ。 
 モータウン風を狙ったとすれば、この歌の発話者は女性なのだと思う。 

わかっているわよね、あなたがわたしを泣かせたのよ、 
あなたの「何でだろうなあ」に、わたし、きぼうをなくしたの、 
あなたを探しまわったのよ。 

あなた、もう、心がわりをしてしまってるのね、
でも、わたしはね、かえる理由がないのよ、 
わたしの涙はかれちゃったわ。 

あなた、いっつも同じこというのね、 
「何でだろうなあ」って。 
そうやってわたしを傷つけて、 
また恋を最初から始めるわけ、 
ちがうわ、二度目の恋じゃないのよ、わたしはずっとひとつの恋をしてるのよ! 

14. Money

(That's What I Want)  (1959年にシングルでリリースされた Barrett Strong バレット・ストロングの歌。作詞作曲は、Janie Bradford, Berry Gordy ジェイニー・ブラッドフォード、ベリー・ゴーディ。)    


シングル 1963年11月

   

A. I Want To Hold Your Hand

   

 ヴァースが三つ、ブリッジが一つ。 
  

ああ、ええと、大切なことを今から君に話すつもりなんだ、 
思うんだけど、君はそれが何だか察しているんだろう、 
それじゃあね、話してしまうよ、大切なこと、それは、 
「僕は君の手をとりたいんだ、」 
「しっかりとつかみたいんだ、」 
「差し出された君の運命の手を握って離したくないんだ」 

そう、こんどは、君が僕に言ってほしいんだよ、 
「あなたが私の夫、それを本当にさせる決心をしたの」って、 
そうして、こうも言ってほしいんだ、 
「あなたが私の手をつかんで離さない、それを本当にしましょう」って 
「僕は差し出された君の運命の手を握って離したくないんだ」 

僕は君とこうして一緒にいると、 
心の中に満足を感じるよ、 
あんまりにも満足し過ぎてしまうから、 
僕はこの恋を隠してはおけないんだ、 
隠してはおけないよ、とても隠せない 

さあ、とうとう、君は僕の大切なことを聞いてしまったね、 
思うんだけどね、君は僕の気持ちをすっかりわかったよね、 
それで僕は今、一廉のことをしてしまった気分だよ、 
「僕は君の手をとりたいんだ、」 
「しっかりとつかみたいんだ、」 
「差し出された君の運命の手を握って離したくないんだ」    

B. This Boy

 

 ヴァースが三つ、ブリッジが一つ。 
 この歌もモータウン風だけれど、発話者は少年でいいと思う。 

あの時の僕が、僕の恋を台無しにしてしまった、 
いつかは後悔するさ、あの時の僕も、 
でも、今の僕は、ただ、君に戻ってもらいたいだけ。 

あの時の僕は、君にはふさわしくはなかったよ、 
あの時の僕だって、君がいなけりゃいられはしなかったのに、 
だから、今の僕は、ただ、君に戻ってもらいたいだけ。 

ああ、今の僕は、僕は、 
君を愛しているというだけで満足なんだ、なのに、 
あの時の僕は、どうしても満足しようとしない、 
最後には、君が泣くのを見ることになった。 

今の僕は、辛くても平気さ、 
気持ちは変わりはしないんだ、 
君が帰ってさえくれれば、それで…    




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