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【読書記録】永遠の詩

▼読了図書

永遠の詩』茨木のり子

茨木のり子さんの詩集を買いました。

反戦やコロナの世情の中で、心に響く言葉が沢山ありました。

1926年生まれで、終戦の1945年には19歳。虐げられた青春を生きなくてはならなかった世代で、誰もが荒み、萎縮していきていた時に、自分や他人を勇気づける詩を書いた人です。

紡がれる詩の一編一編から、自立した一人の女性としての凛とした佇まいが伝わってきます。同時代に生きていたら、ゼッタイ尊敬していたと思います。

茨木のり子

”自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ"
肝に銘じて、強くしなやかに生きていきたいものです。

『自分の感受性くらい』

ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった

駄目な事の一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ

出典:『永遠の詩』

『倚りかからず』
もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない

もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない

もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない

もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくはない

ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい

じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで経っていて
なに不都合のことやある

倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ

出典:『永遠の詩』

『落ちこぼれ』
落ちこぼれ
和菓子の名につけたいようなやさしさ

落ちこぼれ
いまは自嘲や出来そこないの謂

落ちこぼれないための
ばかばかしくも切ない修業

落ちこぼれにこそ
魅力も風合いも薫るのに

落ちこぼれの実
いっぱい包容できるのが豊かな大地

それならお前が落ちこぼれろ
はい 女としてはとっくに落ちこぼれ

落ちこぼれずに旨げに成って
むざむざ食われてなるものか

落ちこぼれ
結果ではなく

落ちこぼれ
華々しい意志であれ

出典:『永遠の詩』


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