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銀河鉄道の夜

銀河鉄道の夜 宮沢賢治

銀河鉄道に乗り合わせた人たちと,ジョバンニとカンパネルラ
列車はいくつもの停車場を抜けて、銀河をすべってゆきます。
乗客たちの会話の中で,何度も出てくる言葉,
「ほんとうの幸い」

もうこの人のほんとうの幸(さいわい)になるなら自分があの光る天の川の河原(かわら)に立って百年つづけて立って鳥をとってやってもいいというような気がして、どうしてももう黙(だま)っていられなくなりました。ほんとうにあなたのほしいものは一体何ですか、と訊(き)こうとして、それではあんまり出し抜(ぬ)けだから、どうしようかと考えて振(ふ)り返って見ましたら、そこにはもうあの鳥捕りが居ませんでした。

「なにがしあわせかわからないです。ほんとうにどんなつらいことでもそれがただしいみちを進む中でのできごとなら峠(とうげ)の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく一あしずつですから。」
 燈台守がなぐさめていました。
「ああそうです。ただいちばんのさいわいに至るためにいろいろのかなしみもみんなおぼしめしです。」
 青年が祈るようにそう答えました。

「僕もうあんな大きな暗(やみ)の中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こう。」

蠍の言葉:どうか神さま。私の心をごらん下さい。こんなにむなしく命をすてずどうかこの次にはまことのみんなの幸(さいわい)のために私のからだをおつかい下さい。

南十字が輝き、ハレルヤの賛美歌が聞こえるサザンクロス。
彼らはみなそこで降りてしまった。カンマネルラも。
どこまでも行ける切符を手にしたジョバンニは,一人汽車の中。
これからほんとうのさいわいを探しにいかなくてはならない。

青空文庫「銀河鉄道の夜」http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/456_15050.html

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子供のころ映画館でアニメの銀河鉄道の夜を見ました。
監督:杉井ギサブロー
音楽:細野晴臣
キャラクター原案:ますむらひろし
ブルーのネコのジョバンニと、ピンクのネコのカンパネルラ。
白いカササギも,灯台守も、大学士さんも、沈没した船に乗り合わせた青年もあかねもたあちゃんも。
私の中では、この映画のイメージだ。
ケンタウル祭の人ごみ、活版所で目をこするジョバンニ、からかうザネリ、天気輪の柱、車窓の外を流れる三角の光、りんどう、プリシオン海岸、アルビレオの観測所。
幻想的な音楽にのって、銀河鉄道が汽笛を上げる。

それから何年もたって,ますむらひろしさんの「アタゴオル」と出会いました。
友達に借りてはなかなか返さずに、何度も何度も読んでいました。
アタゴオルの森の,なにげない一日。
あんまり熱いのでカキ氷を食べたり,マントを買いに行ったり,
でも、カキ氷屋がプラネタリウムになったり,マントから不思議な音楽が流れてきたり,
どうしようもないヒデヨシも,はらぺこ軍団もいるけど,
その世界に入ってでてくると,心が少し生き生きとしてきます。
宮沢賢治の世界とつながっているのは,そういうところかもしれません。

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{何だか苹果(りんご)の匂(におい)がする。僕いま苹果のこと考えたためだろうか。」カムパネルラが不思議そうにあたりを見まわしました。

銀河鉄道の夜にでてくる食べ物は,
牛乳,角砂糖,お姉さんが作ったとまと料理,鳥の形をしたお菓子、りんご

姉はわらって眼をさましまぶしそうに両手を眼にあててそれから苹果を見ました。男の子はまるでパイを喰(た)べるようにもうそれを喰べていました、
また折角(せっかく)剥(む)いたそのきれいな皮も、くるくるコルク抜(ぬ)きのような形になって床(ゆか)へ落ちるまでの間にはすうっと、灰いろに光って蒸発してしまうのでした。

この、「パイをたべるように」りんごを食べるシーンが一番好きです。
アップルパイの、甘酸っぱい香ばしい香りがしてくるよう。

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