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君たちはどう生きるか

「君たちはどう生きるか」
2023

冒頭、火の粉が舞い、燃え盛る炎の中に主人公眞人が飛び込んでいきます。

9月に入り、関東大震災から100年とのことで、カラーに復元された震災とその後火災が広がる映像を見たところだった。
前作の「風立ちぬ」でも、ちょうどその日が描かれていた。波打つ大地、家財道具を持ち逃げ出す人々。燃え上がる火の手。
その日台風が近づいていた東京近辺は、風が強く煽られた火の粉が倒壊した家屋に燃え移り、火災が広がっていった。

舞台は太平洋戦争後期、夜中に警報が鳴り響き、母のいる街中の病院辺りが黒煙をあげている。
一年後、火災で母を失った眞人は、父と東京を離れて疎開先に向かう。彼はそこで新しい母となる夏子と古い屋敷の池にいる青鷺と出会う。

青鷺は水面を飛び、風をおこし、奥の森にある洋館の存在を知らせる。
そして、あちら側の世界へ彼を導く。

ストーリーはぜひ映画を観て感じて下さい。

見終わった後、わからないことがたくさんあります。
我を学ぶ者は死す。と書かれた黄金の門と、石舞台のような岩屋の奥にいた主とは?
夏子はなぜ産屋にいたのか?
インコたちはどこから来たのか?

生きた人間の誕生は深い洞窟で守られているが、縛られるように苦しいのに、キリコの元にいるワラワラはぷくぷくと空を飛び、上の世界に生まれていく。儚くペリカンに食べられることもあるけれど。
ワラワラは人の魂というより、イマジネーション・想像力・アニメや音楽や芸術の源のようなものなのかもしれない。

あの世界では、キリコさんのような人にワラワラが守られて、養われていることが、唯一の救いであることのように感じた。
彼女やヒミが、荒々しい波を乗りこなし、火を自由に扱い、自然と共に生き、素敵な家に住み、お茶を入れ、温かい料理を作っていることで、世界は救われている、エンディングの歌を聞きながら、ふとそう感じて涙が出てきた。

疫病、震災という人間にとっての災難が大量の死をうみ、無気力や暴力装置となり、戦争へと突き動かしていった100年前。
私たちは今そこから何を学び、どう生きるのか?
そんな問いのようにも思えた。

映画を見終わって、街を歩いていたら、蔦の絡まる洋館と出会った。何度も歩いた通りなのに、今まで気づいていなかった。
重要文化財指定とあるが、表札もかかっていて、住居として使われているようで写真をとるのをやめた。
残暑厳しい日差しの中、涼しげに佇む洋館。不思議な物語が始まりそうだ。

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