天井桟敷の人々~Eiffel
天井桟敷の人々
原題: Les enfants du Paradis (1945)
監督: マルセル・カルネ
BSで4K修復版をみた。
白黒が鮮やかで、冒頭の犯罪大通りはカラフルなお祭り騒ぎに感じ、白い男のパントマイムが際立つ。
J'adore ca, la liberte !とほほえむアルレッティが美しい。
そして、ジャン=ルイ・バローの美しい動きが秀逸です。
1820年代のパリが舞台。
劇場や大道芸人が集まる猥雑なこの犯罪大通りからすべてがはじまり、ここで終わる。
第一幕「犯罪大通り」
無名の俳優フレデリック、彼が口説く美しい女芸人ガランス
悪漢のピエールと大通りで見た、バチストのパントマイム。
盗難の濡れ衣を着せられたガランスを救ったバチスト。
純粋で一途なバチストと、自由が一番と強がるガランス。
バチストに恋する劇場主の娘ナタリー。
モントレー伯爵に見初められ、身請けされたガランスは、パリを去る。
第二幕「白い男」
5年後
ガランスはモントレー伯爵の庇護の下、上流階級の生活になじみ、諸外国を旅し、久しぶりにパリに戻ってきていた。
フレデリックは別の劇場で、花形俳優として活躍しながら、相変わらず放蕩生活を送っている。
バチストはパントマイムでフュナンビュール座を有名にし、ナタリーと結婚して息子もいる。
ガランスは貴賓席を貸し切り、ひそかにバチストの舞台に通っていた。
ある日、決闘沙汰でけがをしたフレデリックが偶然ガランスの貴賓席に転がり込んでくる。
ガランスの想いを知ったフレデリックは、嫉妬しながらもバチストと合わせようと楽屋に行くが、ナタリーに聞かれてしまい、彼女は息子を貴賓席に向かわせる。
ガランスがバチストの幸せを壊すまいと、黙って劇場を去ったことを知ったバチストは、彼女を想い上の空で舞台にも立てなくなる。
フレデリックの「オセロ」を観に行ったバチストは、ガランスと再会し、お互いが忘れられない存在であると知る。
ここからは、それぞれが想いを貫こうとして、糸がもつれ合っていく。
伯爵は勘違いしてフレデリックに決闘を申し込み、ピエールは二人を脅迫し、伯爵を殺害する。バチストとガランスは結ばれるが、ナタリーが現れ、ガランスは去る決心をする。
紙吹雪舞う犯罪大通りの大群衆の中に消えていくガランス。
必死で追いながら彼女を見失うバチスト。
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先日、フランス映画祭2022のオープニングセレモニーで、Eiffelを一足先に見てきました。
主演のロマン・デュリスとルブルロン監督が登壇され、上映前に映画への想を聞くことができ、実在の女性から想像を膨らませた物語、ということで、建築家ギュスターヴの人間性がドラマチックに描かれています。
Eiffel (原題 2021)
監督: マルタン・ルブルロン
誰もが知るパリのエッフェル塔。その建設は困難を極め、数々の災難非難を浴びながら、完成に至った。
ギュスターヴ・エッフェルがなぜその偉業をなしえたのか?
そこには”生涯忘れられない愛する人への想いがあったから”ではないか?
ちょうど同じ日に「天井桟敷の人々」をみたので、Eiffelを観ながら、この二つの物語がオーバーラップしていました。
どちらにもでてくる「忘れられない女性」
若い頃出会い、愛し合い、翻弄され、離れ離れになる。
年を経て、再会し、お互いの想いが変わらないことを知る。
Femme fataleというと、男を破滅させる魔性の女のようだけれど、
そうではなく、偉業を成し遂げさせる女性。
身分や社会的規制に縛られていた19世紀の群像劇で、自由を愛したガランスは、そんなFemme fataleの先駆けだとしたら。
エッフェル塔建造は1889年。
そんな女性がいたことを想像し、ものがたりとして魅了されるのは2020年代だからかもしれない。
Eiffelは、「エッフェル塔~創造者の愛」に邦題が決まり、来年3月に公開です。
https://natalie.mu/eiga/news/505189