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恋のはじまり

恋の始まりは、いつだって美しい。
純真な心で恋人を好きになり、毎日のように恋人を想う。

「好きな人がいる」「恋人がいる」ただそれだけの日常で、
憂鬱な朝も、目覚めてしまいたくなる。

すれ違いもなく、互いの生きる世界観に差異もなく
ただひたすら同等に愛して、同等に抱きあう。

別れの季節はいつだって美しい。
別れのきっかけも忘れてしまうくらい、恋の始まりを思い返す。

すれ違いがあり、互いの生きる世界観に差異が生まれ、
もはや初心には戻れない。

あと戻りできないからこそ、遠い昔の恋の始まりを思い出しては
時の無情さを感じる。

恋した遠い昔を思い返す瞬間に、
その想い出は、より一層磨きがかり、美しくなるのだ。

初デートの時にプレゼントされたアクセサリー、
はしゃいで、笑い転げながら手を繋いで歩いた横浜の夜道、
海をただ眺め、幸せを噛み締めて抱き合った夏の日。

何気ない幸せだったはずなのに、今となっては、
薄い透明なガラスの中に封印された。

手元に戻そうとすればするほど、ヒビ割れてしまう。

「私たちは特別。」
そう誰もが思い、結ばれる。

過去の失恋を経験し、恋愛には終わりが来るとわかっていたはずなのに
再び盲目になり、終わりを迎えた。

恋愛に起こる感情は、すべてが一度きりだからこそ儚い。
一度きりの愛情と恋心、そして一度きりの絆。
終わってしまえば、どんなに涙を流しても誰もが次に進むから。

忘れたくない。一生忘れたくない。
しかし、必ず、忘れ去っていく。

恋愛は美しい。
時が経ち、他の誰かと交際しようとも
心には、いつだってあの人との "恋の始まり" を宿しているから。

辛い時はいつも、思い出す。
二度とは戻ることのない二人の姿を。偽りなく幸せな後ろ姿。
その想い出を前にすると、憂鬱な明日も無力になる。そんな想い出には、一生で一番、あどけない私が生きているのだから。


一生の宝物だ。




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