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「その日じゅう」の緊急対応、お断りします

ライターになって8年が経つ。

2011年~2015年までいた会社はライターといっても決まったフォーマットにそれっぽいことを書いて文字数を埋めるのが9割、みたいなものだったので、取材の経験を積めたことと制作業界の恐ろしい繁忙期を経験できたこと以外はたいして成長しなかったかもしれない。

(でも、入社当時についてくれた教育係の人が本当にできる人で、彼が指摘してくれたことは今でも存分に生きているし、それができるのとできないのとでは文章が雲泥の差なのだ、本当に)

修正になるととたんに〆切が短い問題

ところで、ライターとして仕事をしているとたまに短納期な注文に出くわす。

「ここの修正、今日中にください」とか言われる。
そのメールをこちらはまだ見てもいないのに「まだですか」と電話がくる。

案件打診時にはあまりないのだけど、なんというかこう、初稿を出してやりとりが進むにつれてスケジュールが切羽詰まってくるのか、そういう注文が出始める(ことがある)。

私も編集者をしているので、気持ちはムチャクチャわかる。
これくらいの修正なら、ちゃちゃっとやって即レスしてくれるのでは、と思ってしまう。

わかる。のだけど。

「これくらいの修正、すぐ終わるでしょ」。違うそうじゃない

おそらくクライアントはこう思っている。

「修正なんてちょこちょこっとなんだし、すぐできるでしょ」

量的にはそうなのだ。全部合わせても20字あるかないか、とかだったりする。
しかし、時間的にはそうじゃない
このモヤモヤを、編集としてとあるライターさんと組んで案件を進めているときに、そのライターさんが言語化してくれた。

わたしはそのとき「この原稿、このように調整をお願いします」と依頼をした(細かいことだけど、やりとりの際に修正という言葉は使わないようにしている)。
修正量は多くなく、それこそ1時間あれば終わるような作業だった。
ライターさんは「わかりました。でも修正に3日ほしいです」と返信してきた。

3日かぁ……と思った。1日あれば十分こなせる量だとわかっているからだ。
けれど彼女は続けてこう言った。(メールだけど)

「作業としては3時間くらいでできるのですが、いつその時間がとれるかわかりません。3日あれば必ず時間を確保できるので、3日ほしいのです」

あぁ、それだよな、とこのとき頭がすっきりした。

作業量と、それに必要な時間はかならずしも紐づかない。
いくつもの案件が並走していて、今日はその作業にとる時間がまったくない日もある。
(これを無視して「ハイハイ!」と突発タスクをどんどん突っ込んでいくと、だいたいの場合パンクする)

あらかじめ修正が入るかもということくらい予測しておけよ、という声もあるかもしれないが、「かもしれない」に対してスケジュールを確保するのはフリーランスにとってけっこう痛い。そして修正対応は多少なら追加料金をとらないことが多い。
そして何より、修正の戻しはいつ来るかわからない。来ないかもしれない。

だからこそお願いしたい。「せめて1日ください」

「その日じゅうに対応」ほど、フリーランスを脅かすタスクはないと思っている。
お昼にメールで連絡がくる。「〇〇さんにこの件を確認してほしい。18時までに返信願う」。
もしもわたしがその日一日取材に出ていたら、あなたはどうするおつもりですか。

あれ、もしかして18時はなんとなく決めた目安であって、デッドじゃないんじゃないですか。

ならば2日、せめて翌日までで〆切を切ってほしい。そうすれば、きっと対応できる。
「本当に18時じゃないと困るんです!」という場合は、誰の責任でもないし、予測できなかった出来事だ。当日に何か起きて対応が必要だなんて、マネジメントミスだとしか思えない。
できなかったからって死ぬわけじゃないし、クビが飛ぶわけでもないでしょう、と思い直すしかない。
重ねて言う。誰も悪くないはずだ。

フリーランスはとにかくクライアント様の言うことは絶対!になりがちなので、急な対応にも身を削って「ハイ!やります!」と答えてしまう。
(だからってその人の評価がウナギ上りになったり、単価が上がるわけでもない)

その結果、「〇〇さんはやってくれました」みたいな最悪な流れができてしまう。

一時期、格安で仕事を受けるフリーランス界隈に対して「価格帯を壊すようなことはやめよう」という動きが盛り上がったけど、それと同じで、作業時間にもバッファをとってくれたらいいな、と思う。

たまたま手が空いていれば早めに対応すればいい。けど、それが当たり前になってしまうと、どんどん自分の首を絞めることになる。

お金のことだけじゃなく、時間のことも考えていきたいなと思う。
フリーランスは時間を使って商売をしている、だからこそ、時間を大切にしたいよね。


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