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言葉 x 認知症のお話

こんにちは。株式会社Aikomiの加藤潤一です。

前回からほぼ1年も間が空いてしまいましたが、
これまで自分の人生に関連した写真や動画による、認知症の方だけでなく一番身近な家族の変化についても紹介してきました。

統計にもよりますが、認知症の方の約4分の1の方は介護施設にいらっしゃいます。その場合一番身近な方は、施設で働く介護スタッフの方になります。

当然認知症の方と介護スタッフの方の間の関係性は、施設で住んだり働いたりする上で重要です。またその良し悪しは、人間ですのでお互いのコミュニケーションによって大きく左右されるわけです。ただ高齢者の場合には耳が遠い場合もままありますし、認知症の方の中には失語などの言語障害によって上手くコミュニケーションが図れない方もいらっしゃいます。そのためになかなか関係性が上手く構築できない場合が出てきます。

海外に一定期間住まわれたことがある方は想像がつくと思いますが、自分の言葉が通じない、言いたくてもそれを言葉に出せないという苦しみは、不快な緊張や不安の状態を誘発します。
普段の生活の場である施設でそういった状況が続くことはなかなかに辛い状況であろうと思われます。

今回は言語障害のために、感情を安定させることが困難であった方の例をご紹介したいと思います。

その女性は認知症と診断され特養にいらっしゃった方でした。足腰は未だしっかりされていましたが、言語障害の為に介護スタッフの方とは普段は文字盤を使ってコミュニケーションをとられていました。
しかしその方法だけで全て賄えるわけでなく、結果として、

言いたいことがなかなか伝わらない

感情が不安定になる

理由がよく分からないので介護スタッフは避けるようになる

関係性が悪化する

より不快な緊張や不安状態となる

といったネガティブスパイラルの状態になっていました。
そこで弊社のプログラムを提供する際に、ご本人と一緒に介護スタッフの方も横に座って見てもらう事を提案させてもらいました。

約30分間のプログラムの中には、その方のお若い時から最近の写真、また趣味や好きなものが詰め込まれています。
ご本人にとっては自身を再確認出来るだけでなく、介護スタッフの方にとってはその30分でその方の人生のダイジェストを知ることできるわけです。

言語障害で言葉が明瞭に発することが出来ない方でも自身に関することであるならば、写真や動画を助けに表現することが出来ます。介護スタッフの方もご本人の言っている内容を、写真や動画を助けに理解することが出来ます。
言語的なコミュニケーションのキャッチボールがツールを介して行われることで、ご本人も言いたい事が通じているという満足度が得られていたようです。

さらに驚きだったのは、プログラムが提供する情報に対して事細かに一所懸命説明をするご本人の姿でした。
認知症と診断はされていましたが、何十年も前の仕事の同僚の名前や、自分が山登りが好きだったこと、飼っていた大好きな犬のことなど、多くの事を記憶していました。

そして介護スタッフの方がご本人と新しいつながりを構築出来た瞬間がありました。それはご本人が昔バイクツーリングをしていたという事を、スタッフの方がプログラムを通じて知った時でした。

施設で暮らす普段の姿からは、それを想像することはほぼ不可能に近かったのかもしれません。驚きと共に昔の姿を知ることで一気に親近感が湧いた、そんな瞬間だったようです。

後日そのスタッフの上司から、同席したスタッフの方は普段あまりご本人とお話をされないそうで、プログラム最中の様子を見てとても驚いたとのコメントを頂きました。

今回のように介護スタッフと認知症の方の間で人生史を共有することは、新しい関係性を生み出すきっかけになるのかもしれません。

今回はこの辺りで。また次回。



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