ヨーロッパ旅の記録〜フィンランド珍道中
"2017年7月24日〜9月18日まで ヨーロッパ8カ国を旅した記録"
8月31日
昨日コンサートに来てくれた一人のおじさま(Esa)が、シベリウスの住んでいた家、通称Ainolaに車で連れていってくれるという。シベリウスの家は行きたかったし、車でないと行きにくいところなので、お言葉に甘えて連れていってもらうことにした。おじさまは親日家で、日本に住んでいたこともあるのだそうだ。
シベリウスの家は、ヘルシンキより北にあるヤルヴェンパー Järvenpääという地域にあり、トゥースラ湖 Tuusulanjärviの岸辺に建つ、とても美しい建物だ。
室内はシベリウスの住んでいたときの雰囲気がそのまま残っており、彼が愛用したスタインウェイも置いてある。このピアノは、特別なコンサートのときしか使用を許可されないものだが、おじさまが係員の方に「日本から来たピアニストだから弾かせてくれないか」となぜか交渉し始め、特別に弾かせてもらえることになった。自分の曲をぽろぽろと弾いた。とても味のある良いピアノだった。
そのときにたまたま聴いてくれていたアメリカ人の陽気なおじさんがすごく褒めてくれて、動画まで撮ってくれていた。それで、Ainolaを出たところで、アメリカ人のおじさん(Steven)とEsaが何やら話していて、Stevenがすぐ近くにあるKokkonen(フィンランドの作曲家 1921-1996)の家に行くと言う。私たちが車で来ていることもあって、一緒に行くことになった。Villa KokkonenはAlvar Aaltoによる建築で、Stevenは建築に興味がありフィンランドに訪れているらしかった。普通は申し込みをしないと入れない場所だが、たまたま団体のガイドツアーに参加させてもらえることになった。そのあたりはさすがアメリカ人の交渉力だった。
そのガイドツアーがまた面白くて、この建物を管理している音楽家ご夫婦が案内してくれるのだが、これがまったく風変わりなのだ。外観、庭、室内と、不思議なテンションと独特の英語の説明を聞きながら進んでいき、最後にKokkonenの仕事場でもあった音楽ルーム(ホールのように広い)へ案内される。すると最後はご夫婦の演奏(旦那さんの声楽と奥さんのピアノ)で締め括られるという、見事なエンターテイメントショーになっているのだった。本当に、フィンランド人は変わったことをするのが好きだ。
かくしてEsaとStevenと私の3人はしばし珍道中することになり、Stevenは車の中でも陽気に喋りまくって、風のように去っていった。また、どこかでバッタリ会うだろうか。
夜は有希ちゃんが食事会を企画してくれた。有希ちゃんは残念ながら仕事で来られなかったが、コンサートでお世話になった彩子さんと、ピアノの綾音さん、作曲のMiokoさんと、ヘルシンキ在住の音楽家たちと交流のときが持てた。ブッフェ形式のフィンランド料理のとても美味しいお店だった。フィンランド最後の夜に、このようにあたたかい時間を過ごすことができたことは本当に嬉しかった。素敵な出来事ばかりで、日本に帰ることが想像できない。できれば、帰りたくない。そう思う夜だった。
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