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夏が帰っても

先週末に引越の段ボールが届いて、あっという間に彼は荷物をまとめきってしまった。それを全部運び出したのが、おとといのこと。現実を認めるのが怖いけれど、ものの30分で片付いた部屋をみたら、さみしいような、いっそ清々しいような不思議な気持ちになった。

前に向かって進んでいるはずなのに、距離が離れてしまって、そばにいたいと思う人の、日常の感情の揺れを見ることができなくなる。最後の出社日に、尊敬している人からのメッセージを読んでいた、その横顔をわたしは見ていたい。数年が、長いのか、短いのか。まったく見当もつかない。1ヶ月を乗り切るのに必死だったわたしが進もうとしている方向が、合っているのかなんて、誰にもわからないだろう。

たのしみな予定を入れる、何度も歩いた道をたどる、憧れの人にその街で写真を撮ってもらって三人で並んでアイスを食べた。日常寄りの非日常。彼と、彼が会ったことのない人や場所とを引き合わせる(なんて、おこがましいけれど)のが好きだ。憧れの人は、気さくで、やわらかくて、でも毒も吐く、(変な言い方になるけれど)ちゃんと人間だった。

結婚しても、なにも変わらない。だから、結婚も離婚も、みんなしてみたらいい。そう言われて、余計によくわからなくなった。いや、まだ籍も入れていないんだけど。じゃあ、それでも一緒にいるって、なんだろうね。でも、少し気持ちが軽くなったこともたしかで、関係性を築いていくのは、自分たちでしかないと、改めて思ったのも事実で。

前より、静かに波が過ぎるのを待つことができるようになっている。進歩だ。熱中したいことも、頑張りたいことも、たのしみたいこともたくさんある。まだまだ見ていないものも、会いたい人も。自分からむかえに行こう、無理はしないけど、やりたいって口に出して、巻き込んで、飛び込む。

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髪を切って、さっぱりして、軽くなった。どこへでもいける、やりたいことをやりたいと言う、ちゃんと傷ついて我慢しない。泣いてもいい。悲しんで、喜んで、笑って、毎日を楽しむ。いってらっしゃい。元気でいることを、約束するよ。

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