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日本経済を分析するためのノート(5)

広告収入がグーグルやメタの収益の大部分でした。
これはSNSや検索エンジンで人を集めて、そこに企業広告を掲載させて収入を得るというものです。
広告表示の方法にはIT技術が多岐にわたって使用されています。しかし、IT技術は人が集まってくるサイトの形式をつくるために使われ、多くの人がサイトを見たり使っているということを活用して広告掲載費をとる、というのが基本的な構造と言えるでしょう。直接にIT技術が生み出すものを使って収益を上げているわけではありません。
一方、アマゾンなどのクラウドサービスの方は管理・事務・販売などにIT技術を活用するというもので、IT活用の基本的なかたちと言えるでしょう。
しかし、ここで注目したいのは、①アップルのスマホ販売と②アマゾンの電子商取引(EC)です。それはこれらがIT技術の魅力を消費者に示し、生産と販売を変えたものだからです。
前者①は言うまでもなく、iPhonというIT技術を活用した機器を販売して利益を上げるというものです。これによりアップルは一大巨大企業になりました。
しかしアップルはスマホを生産しているわけではありません。それは台湾の鴻海などのEMS(製造受託企業)が豊富な人材と安い労働力の存在しする中国などの発展途上国でつくっています。そしてこんにちでは中国での賃金上昇によりインドなどに生産拠点を移してきています。
後者②はウェブを活用した小売りで、ECの小売り全体に占める割合は上昇の一途をたどっています。
もっともアマゾンのECの利益率は高くはありません。けれども〝利益の最大化よりもキャッシュフローの最大化〟──つまり利益より成長(市場シェアの拡大)ということ──を掲げる巨大企業アマゾンの主力業務はECです。
しかし、このアマゾンの労働者が低賃金で過酷な労働環境に置かれていることは有名なことです。
つまり野口氏がその実力をかたるアップルやアマゾンの発展・繁栄は低賃金を活用した海外生産や国内労働者の低賃金・過酷な労働条件に支えられているのです。この両者はコインの表と裏の関係です。そしてそのコインとは「超格差社会」にほかなりません。
こうした現に起こっていることに目を向けるべきではないでしょうか。
それなしに〝IT化による明るい未来〟を語ることに意味があるのでしょうか。
次回からこのコインについて、すなわち現代経済の構造について、掘り下げて考えていきたいと思います。それなしに日本経済の分析はできないと思います。

つづく

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