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足捌き ~ 稽古の原則と共通のポイント ~

(1)足捌きの稽古について


①「足捌き」が大切です

当会では「足捌き」の稽古を大切にします。
合気道の稽古では、どうしても上半身の動き、特に「手捌き」に意識が集中しがちです。ですが、肝心なのは「足捌き」です

「合気は、体の位置が大事である」(植芝盛平先生直話)

出典:多田宏(2018),『合気道に活きる』,日本武道館, p235

これは、私の師である多田先生が、大先生から直接伺った言葉です。適切な「体の位置」に自分があるためには、適切な「足捌き」を自由自在にできる必要があります。

② 当会での「足捌き」の稽古

基本の足捌きを身に付けることは、全ての動きに通じる基本法則を身に付けたのと同じである。そして合気道全体を有機的に活動できるようになる。

出典:同書, p237(注:太字化は筆者による)

とはいえ、無闇矢鱈と足を動かしても、基本の足捌きは身に付きません。むしろ、悪い癖を定着させてしまう可能性が高くなります。

そこで当会では、足捌きに特化した稽古法を丁寧に行います。これは、初心者でもわかりやすく足捌きを習得できるようにと、多田先生が整理された稽古法です。現在、日本でもヨーロッパでも、同門の仲間が同じ稽古法に励んでいます。

※足捌きの稽古法は、1~14番までの番号を付けて整理されています。

③「自主稽古」が欠かせません

当会の稽古では、冒頭に足捌きの稽古を行います。ですが、基本の足捌きを習得して、それを(ある程度)自由に使えるためには、道場での短い稽古時間では不十分です。

そのため、自主稽古が欠かせません。

noteでは、皆さんの自主稽古の参考となるように、1~14番の足捌きの稽古法(手順ならぬ「足順」)と、それぞれのポイント等を整理する予定です。

道場で教わったことや、noteの記事を参考として、自分なりに、丁寧に、足捌きの稽古を行ってみてください。

なお、足捌きの稽古が欠かせないのは、初心者も上級者も同じです。むしろ、合気道に慣れてきた上級者にこそ、足捌きの研究が必要です(自戒を込めて)。まずは基本の「足順」を覚えて、慣れてきたら、動きにノビが出るように稽古を重ねていきます。

(2)稽古の大前提


「初心のときに付いた癖は直すことが難しい」

(多田先生直話)

多田先生からは、何度もこの言葉を伺いました。また、先生はこのようにもおっしゃっています。

「上手になったからできるようになるのではない。最初からそのように稽古する必要があるのだ」

(多田先生直話)

足捌きの稽古を行う際には、まずは足の動かし方(足順)を覚える必要があります。ですが、それ以外にも見逃せないポイントが存在しています。

これらのポイントを蔑ろにしたまま稽古を続けると、その形が「悪い癖」として身体に定着します。そして、一度定着した「悪い癖」を直すことはとても難しいのです。「悪い癖」を付けないためには、最初から、丁寧に稽古する必要があります。

繰り返します。
次に挙げるようなポイントは、「上達したから」できるようになるわけではありません。「最初から」できるように稽古するからこそ、できるようになるのです(※当たり前のように聞こえますが、とても大切なことです)。

(3)足捌きの稽古法の原則(決まりごと)


(原則①)左足の領域/右足の領域

足捌きの稽古(特にNo.1~7)では、両足の中心を直線で分けて、「左足の領域/右足の領域」として定めます(下図①-ア・イ)。

そして、「左足の領域」に移動するときは「左足から」入ります。反対に、「右足の領域」に移動するときは「右足から」入ります

なお、「平行に移動するとき」は(原則②)となります。

(図①-ア)「自然体平行立ち」での「左右の領域」
(図①-イ)「一重の半身」での「左右の領域」
(※図は「左半身」だが、「右半身」でも同様)

(原則②)「左」に動くときは「左足」から、「右」に動くときは「右足」から

足捌きの稽古では、「一重の半身」から平行に移動する場面があります。このとき、「左」に動くときは「左足」から、「右」に動くときは「右足」から、移動します(下図②)。

(図②-ア)「左」に動くときは「左足」から、「右」に動くときは「右足」から

実際に動くとわかりますが、「左」に動くときに「右足」から(または「右」に動くときに「左足」から)移動すると、正面に対して身体が捻れた状態になります。

身体が捻れた状態は、次の動きへのスムーズな移行を妨げます。身体が捻れた状態にならないために、この原則が活きてきます。

※なお、「自然体平行立ち」から前後に平行移動するときには、左右どちらの足から動いても構いません(下図②-イ)。

(図②-イ)前後の平行移動(「自然体平行立ち」から)

以上は足捌きの稽古における「決まりごと」(法則)ですが、基本の足捌き(特にNo.1~7)を丁寧に稽古していると、これらの法則は、いつの間にか自然と身に付いています

まずは足捌きの稽古法の「足順」を覚えて丁寧に繰り返し、迷ったときに上の原則を思い出す。その程度の認識で問題ありません。

(原則③)道場の正面を「北」と定める

道場では便宜的に「正面」を「北」と呼び習わします(下図③)。このとき、本来の「方角」とは、必ずしも一致しません。

この目的は、「道場にいるメンバーの方向感覚を統一するため」です。例えば指導者と生徒が対面している場合など、それぞれにとっての「左・右」が意味する方角は異なります。

そこで、便宜的に「道場正面」を「北」と定めるのです。そして、便宜的に定めた「東西南北・四維(四方八方)」に向かって、足捌きの稽古を行います。

(図③)「道場正面」を「北」と定める

(4)足捌きに共通するポイント


(ポイント①)「一重の半身」への意識(線を大切にする)

一重の半身は合気道の基本姿勢です。もちろん、足捌きの稽古も一重の半身を意識して行います。

「一重の半身」は、全ての稽古の「基準」となります。より具体的に言えば、一重の半身において「両足裏の拇指球を結んだ線」がご自分にとっての「基準」です。ご自分の「基準」を常に意識しながら、足捌きの稽古を行います。

一重の半身の大切さやその理由については別の記事にまとめていますので、興味のある方はそちらも併せてお読みください(当会の会員さんにはぜひ読んでいただきたい。。)。

note記事:「なぜ、「一重の半身」が大切なのか?(1/2)」

(ポイント②)「足幅」を広く取る

基本姿勢として、両足幅を広く取ることを意識します。その理由として、大きく次の2つが挙げられます。

  • 腰を落として身体を安定させる(足幅が狭いと、腰が落ちない)

  • 体重の掛かり方をはっきり感じるため(足幅が狭いと、左右どちらの足に体重が掛かっているのか分かりにくい)

一重の半身で足幅を広く取る姿勢は、慣れないうちは動きにくいと思います。ですが、前述の通り、「足幅の狭い姿勢」が「癖」として身に付くと、それを直すことは大変難しくなります。

最初から、「足幅」に注意して稽古を行います。

もちろん、足幅が広すぎれば動きにくくなります(過ぎたるは及ばざるが如し)。最初はなるべく広い足幅を意識して、徐々に最適な足幅を見つけるのが良いと思います。

(ポイント③)「頭の位置」がブレない(滑るように動く)

「頭の位置」が上下・左右にブレるということは、体の軸が安定していないことを意味します。姿勢が安定せず軸がブレるたびに、動きに無駄・隙(スキ)を生むことになります。

足幅を広く取り、腰を安定させて、頭の位置がブレないように意識しながら足捌きを行います。

ちなみに、当会で稽古中の足袋(または靴下)着用を推奨する理由は、「滑るような足捌きを行いやすくするため」です。

この詳細は別の記事にまとめています。稽古でお世話になる「畳」についても書いていますので、興味のある方は併せてお読みください。

note記事:「なぜ、「足袋」の着用をオススメするのか?〜合気道と畳との関係〜」

次回以降は、1~14番までの足捌きについて、少しずつ書いていく予定です。次回以降もお読みいただけると嬉しいです。

(本文終わり)



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