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フランシス・ジャムの真実


「あの田園詩人であり、野の小動物を愛して止まなかったかにみえる詩篇により、愛唱されたジャムは、すでに助かる見込みのない小鳥を自分のポケットの中でひねり殺すことにためらいなどなかったらしい。また突然道にとび出して来た野兎を見ると、反射的に持っていた杖で殺そうとした」

とは、

アンドレ・ジッドが書いたフランシス・ジャムへの追悼文です。


 まぁ、なんという追悼の言葉なのでしょう。しかしながらそれは、ジッドの意地の悪い嫉妬心などからではなく、物事の核心に迫らずにおかない文学者の、いや芸術家全般の透徹した眼力と芸術に対する真摯な姿勢からの言葉とでもいった方がいいのかもしれません。


 先のジッドの文章は、小柳玲子の石原吉郎とその時代に生きた詩人たちを語るエッセイ『サンチョ・パンサの行方』からの引用でした。先に指摘した芸術家の眼力と姿勢は、お会いして挨拶を交わしたことのある小柳玲子にも共通したものがありました。歯に衣着せぬ率直な物言いは、詩友である樋口伸子のそれにも似て実に鋭いものがありました。




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