I Love This Fucking Town
『気に入らねえ奴はぶちのめしちまえよ。隆太』
俺は目を覚ます。
汚え川だ。
そこは淀川の河川敷。スマホで時間を確認するともう午後の6時を過ぎていた。向こうの鉄橋の背後には、赤く染まった太陽が見える。
こんな時間か。
俺は黙って立ち上がり、そのまま家までの道のりを歩く。今日は本当に疲れた。二度も能力を使ったのだから当然か。思い出したように俺の左肩がズキリと痛んだ。
すると、しばらく土手沿いに歩いていたその途中、二人の人間が何やらもめているようだった。一人は俺と同じ学ラン眼鏡の青年、もう一人は金髪ピアスのチンピラだった。
「殴んぞ?」とチンピラが青年の胸倉をつかんで言った。
「殴んぞ?」
「やめてください…」
「じゃあ金」
「無理です…」
バキィ!
うめき声を上げる眼鏡。何度も殴られているのか両方の鼻腔から血を流している。
俺はただのカツアゲだと思ったので素通りしようとする。どうでもいい。俺は見て見ぬ振りをした。チンピラも一瞬俺の方を見て目が合ったが特に何も言わず、再び眼鏡を殴り始めた。
「や、やめてくださ―――ウグァッ!!!」
チンピラは、渾身の一撃で眼鏡をKOすると財布を奪って自分のポケットに入れた。そして、半笑いでそこから立ち去ろうとする。
だが、そうはさせなかった。
俺は立ち止まり、チンピラに向かって言った。
「おい」
「なんだぁ?」
「その面が気に入らねえんだわ」
俺は能力を発動した。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…。
大地が揺れる。うろたえるチンピラ。
次の瞬間、俺とチンピラの周りに四本の棒が地面から突き出す。そして、その棒を囲うようにロープが渡る。
そして今、俺とチンピラはプロレスリングの上に立っていた。
夕焼けの河川敷。淀川の水面で揺らぐ陽光。俺たちの影はリングの外へと伸びている。
これが俺の能力だ。
カーン!
レフェリーが「レディー……ファイッ!!!」と叫ぶ。
俺はステップを踏み、握りしめた拳を思いっきり繰り出した!
【続く】
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