モダンダンスとコンテンポラリーダンス③ ~ポストモダンとは~ ダンサーっぽいのナシで
本日は、コンテンポラリーダンスを語る上で切っても切り離せない、ポストモダンダンスについてです☆
美術史で言うと、「写真の役目を終えた美術から、既成概念をひっくり返すアイデアや方法がどんどん生まれ、芸術が色んな方向に飛び出していくきっかけになった最初の時代のものたち。」という感じです。
(詳しくはこちら。「超簡単アート史。オリジナル追求し過ぎて便器まで出てきた時代」)
なのでダンサー以外のアートファンの皆さま、アーティストの皆様にも楽しんで頂けると思いますので、是非ご一読下さい☆
モダンとコンテだけでもお腹いっぱいなのにまだあるのかよ、、と思われた方もおられるかもしれませんが、ポストモダンはコンセプトが分かりやすく、かつ現在のコンテンポラリーダンスで行われている事が生まれた時代のダンスの事です。
ずばり、インプロやコンタクトインプロ、作品中に喋ったり、他のアーティストとコラボしたり、無音だったり、同じ動きを繰り返す表現法が栄えた時代です!
なので割と身近で、気楽に読み進めて頂けると思います☆
インプロ:即興
コンタクトインプロ:複数人で、重力や重心をうまく利用してどこかコンタクトを取りながら(接触しながら)行われる即興→下に動画あります。
では早速、「始まり→定義/特徴→歴史→まとめ」の順で見ていきます☆
ちなみに前回までの記事はこちら。
ポストモダンとは ~始まり~
ポストという言葉には、”アフター”という意味がありますので、ポストモダンとは”モダンの後とか次”という意味になります。
しかし今までこちらのnote内のダンス史とアート史でも見てきたように、多くの新しい芸術は、以前のものに対しての反発から生まれました。
今回もまた然りです。なので意味的には、”反”モダンとした方が分かりやすいとも思います。
ポストモダンは、それまでモダンダンスが開発に頑張ってきたことに反発しました。
ここで一度、モダンダンスとはどんなものだったかをおさらいしてみます。
モダンダンスとは、自由を求めて、表現の幅を広げる為に、そしてもっともっと大きく自由に身体を動かせる方法を模索して生まれた、バレエに変わる新しいダンス。⇒日々の練習用にもメソッド化され、ダンサーは高度な技術を養う事が出来る。
現在世界では、コンテンポラリーダンスをするなら必須とされている、「上達の為のテクニック、メソッドダンス」と捉えられる事が多い。モダンダンサーは高スキルと素晴らしい筋肉の持ち主が多い。
つまり、テクニック(と、その為に必要なパーフェクトボディ)が非常に重要とされていたのです。
モダンダンサーになる為にはプロフェッショナルなダンス学校に通い、日々訓練し、超人的なスキルと体型を持っている必要がありました。
(始まりはもっと自由でしたが、表現の幅を広げるというそのコンセプト上、どんどんテクニック化されていきました。詳しくは上記の記事参照。)
それに対し、
「しゃらくせー!」
「そんな一部の選ばれし者だけしかダンサーになれないなんて違う!」
「誰だってダンサーになれんだよ!どんな動きだってダンスなんだよ!」
と意義を唱え、ダンステクニックを重視しない、日常の全ての動きがダンスになり得る、日常のどこでも舞台になり得る、必要なのは踊りたい気持ちだけ、というアイデアが生まれました。
ポストモダンとは ~定義、特徴~
<定義>:
モダンダンスの作品の作り方や表現方法に堅苦しさを感じて反対し、 日常の動きもアートであり、トレーニングの有無や体型は関係なく誰もがダンサーになれるというコンセプトを持った1960~1980年頃のダンス/パフォーマンス。
<特徴>
定義にあるように、ダンステクニックを重要視せず日常に焦点を向けていたので、ダンサーっぽさは排除されていました。
そして更には、「パフォーマンス=ステージ」という概念も取っ払い、もはや劇場を去り、公演や道路や美術館や屋上などなどあらゆるところでパフォーマンスをしました。
・どこでもステージ
・即興、もしくは即興っぽい振付。
・(場面/状況/内容が上手く合っていれば、)日常の動きやどんな動きでもダンスになる。:歩く、服を着る/脱ぐ etc ⇒普通の人っぽい動き。
・誰でもダンサー。トレーニングの有無関係無し。
・実験好き。ダンス以外のアートとコラボ。:映像、絵、演劇、スピーキング、etc
(⇧ Yvonne Rainer Street Action)
(⇧ Trisha Brown Dance Company)
ポストモダンとは ~歴史~
ポストモダンの親的存在は、新しい試みや考えが生まれ始めた1950年代に活躍したこの3人。
・Anna Halprin:伝統的テクニック避け、野外でパフォーマンスを始めた。
・Robert Dunn:アートは、完成形よりも、知的な創作過程が大事。
・Merce Cunningam:ダンスと曲が無関係。コインの裏表でフリを変える偶発性。
<The Judson Dance Theater >
上記の彼らの元で学んだダンサー達が1962年、NYにある The Judson memorial churchに集まり、共に様々な試みや練習やパフォーマンスを行うThe Judson Dance Theaterというグループを立ち上げました。
そこでポストモダンダンスというムーブメントが起こり、栄えいったのです。
<主要メンバー>
・Trisha Brown:ハーネス使って宙を舞ったり、壁を歩いたり、屋上やあらゆる所で踊ったり、予測不可能な動き、インプロに基づいた振付。
・Yvonne Rainer:色んなアートの取り入れ、普段の動作からの振付、ドラマチックさの最小限化。
・Simone Forti:動物の動きを振付に取り入れたり、パフォーマンス中に喋るなど、”声”の使用。
・Steve Paxton:コンタクトインプロの創始者。
(⇧The Judson Dance Theaterでの公演を用い、ポストモダンダンス作品は何に影響され、創作されていたのかを簡潔に紹介してくれています。)
ちなみに彼らは共に作品を作るだけではなく個人でも活躍し、それぞれ創作活動やダンスカンパニーの設立もしていました。その後の(つまり現在の)ダンスに非常に大きな影響を与えました。
(⇧Trisha Brown)
(⇧Trisha Brown Dance Company 2017)
(⇧Yvonne Rainer 1966 ”Trio A" 日常の動きを振付にしています。)
(⇧Yvonne Rainer 2015 ダンサーとして恵まれた身体では無かったけど、踊りが大好きだった彼女の思いが語られています。)
(⇧Steve Paxton コンタクトインプロ 1972 当時は少し荒さがありますが、研究が進んで今では⇩のように、リフトも非常にスムーズで本当に重力あるの!?という感じです。)
<Grand Union>
1964年 The Judson Dance Theater解散後は、 Douglas DunnやBarbara Dilley等新たなメンバーも加わり、Grand Unionというインプログループを結成。定期的に公演をしていました。(1970~1976)
オールインプロで!
完全に全て即興で!!
インプロなので毎回予測不能であり、その新鮮さやドキドキ感が人気を博し、当時の人々を魅了していました。(⇐インプロの魅力ですね。)
(⇧1971年)
(⇧1975年)
なんだか、今時っぽさが出てきた感じがしませんでしょうか?
何をやってるんだろう?皆、ふっつーーーーの服を着て。それ、ダンスなのか?的な。
まとめ ~コンテに繋がる大事な時代だった~
このようにポストモダンダンスは20年程と非常に短いムーブメントではありましたが、
・インプロ
・コンタクトインプロ
・声や演劇やその他のアートの取り込み
・テクニックの不使用
・あらゆるところでパフォーマンス
・実験好き
など、全て現在の多くのコンテンポラリーダンスで採用されている事であり、ダンスシーンに非常に重要な影響を与えました。
即興作品は、ダイナミックな技やターンなど超人的な派手さは無いので、「好みじゃない」とか、「こんなのダンスじゃない!」と思う人もいます。
そもそも、クラシックな超人テクニックを見せつけるのがダンスじゃない!と言って生まれたダンスなので相反するのも当然です。(即興にもその為の知識やテクニックはありますが。)
しかし即興ダンスは次のステップや動きが何か本当に予測不能で、とんでもない展開になったりします。その過程を見たり、そのライブ感を感じるのがたまらなく、今でも多くの人を魅了しています。
(⇧全てインプロの公演です。)
なので是非皆さんにも、楽しんで頂きたいなと思います☆
すごいテクニックのバレエやモダンダンス系、それとは全く違う、一見誰でも出来そうな全然すごくなさそうなポストモダンダンス、この2つを織り交ぜたようなコンテンポラリーダンス、それぞれ良い所がありますので、その時の気分で観る作品を変えてみるも良し、自分の好みのものを見つけて深堀していくのも良しと思います☆
皆さんにとってこのよく分からんアート、ダンスの世界がもっと身近になって、より多くの方がより多くの新しい楽しみを発見出来るきっかけになることを願って、本日はこの辺で失礼させて頂きます☆
次回はやっとコンテンポラリーダンスについてです!
本日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
Aika.
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⇩自然を使ってのインプロ。木からずり落ちるのとか、バランスを崩すのにも抵抗するのではなく次の動きのアイデアに変えています。
この即興性、”その時の自分に耳を傾け、その時にいる人/モノ/起きた事”などを感じながら共に作っていくというのがポストモダン、インプロビゼーションの醍醐味、おもしろさです。
⇩こちらもオールインプロ。
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