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ブラジル留学日記08 「不揃いな果物たち」

2014年2月19日。
昨夜、憧れのプロヴェッタに会えた。
サンパウロに着いて、こんなにも早く夢が叶うとは。

更にプロヴェッタは来週のコンサートに招待してくれるという。

全ての運を使い果たしてしまったように感じた私は、トラブルに巻き込まれないよう一層気を引き締めた。

今朝はフェイラ(青空市)へ向かった。
誘ってくれたのは教会に下宿している日本育ちの日系ブラジル人。彼は日本が大好きという友人ブルーノも呼び、3人で教会の前の坂を下った。

教会の周辺は緩やかではあるが坂が多い。
下の方がよく見えないと、治安上の問題で先に進んで良いか少し不安になる。
更には教会に下宿していた日本人が「教会前の道を下ったところで強盗に遭った人がいる」と言っていたので内心ビクビクしていた。

フェイラの入り口

坂を下るにつれ騒がしくなっていく。
車道をふさぐように、雑然と運搬用ミニワゴンが駐車してあるのが異様な光景だった。

青空市はブラジル全土で開催されている。
毎週決まった曜日、主に午前中、車両通行止めとなった公道に新鮮な野菜や果物、肉、魚、軽食などを売るテントの店*が並ぶ。
*ポルトガル語で「バハッカ」と呼ぶ

規模は様々だが、場所によっては鍋や小さな日用品を買うこともできる。
フレッシュジュースや軽食を楽しみに青空市へ向かう人も多い。

週末には大規模なフェイラが開催され、午前中に買い物をし、遅めの朝食もしくは早めの昼食として屋台で軽食を食べるのがお決まりコースらしい。
工芸品や骨董品専門のフェイラもある。

歌いながら客寄せする名物おじさん

フェイラはいろんな匂いが入り混じる。
もぎたての葉物野菜の青臭い匂い、魚の匂い、肉の匂い、南米特有の果物の熟した匂い、パステル(揚げ餃子)の油の匂い、そしてサトウキビジュースを作るときの甘ったるい匂い。

フェイラのバハッカはテントの柄も色も違えば、陳列方法も多種多様。
それなのに全体を見通すと程良くまとまりがあって美しい。

魚屋さんのとなりは日用品、その隣は花屋
鱈と鮭、「Limpo」と書かれているのは下処理済み
パステル、揚げ餃子のようなブラジルの軽食
サトウキビのジュースはその場で作ってくれる

商品も同じことが言える。
遠くからみると美しくまとまりがあるが、近くでみると大きさや見た目、成熟と追熟がバラバラである。

日本のスーパーでは野菜の大きさや見た目が揃っていて、1つとして不細工なものがない。パッケージされている商品なんて特にそうである。
広告の写真通りの美しい商品が並べられた日本のスーパーでしか買い物をしたことがない私には、差異が大きいフェイラの陳列棚は衝撃的だった。

ただし、それが良いのである。
フェイラは基本的に量り売りなので、用途に合わせて自分の好きなものを好きなだけ買うことができるからだ。
私は、この不揃いな果実たちを見るだけでこれまで自分の中にあった価値観が変わった。

50メートルほど坂を下っただけなのに、グッと人間力がレベルアップしたような気分だった。

【追記】
このブラジル留学日記は2014年当時のことを回想して書いています。
先日、このフェイラに再度行ってみました。

やっぱり統一感ないけどなんか絵になる
歌う名物おじさんも元気だった!!
約10年後、パステルは4レアル→10レアルに値上がり!!

約10年ぶりに行ったフェイラは活気があって良かったです。
パンデミックを乗り越えて、ようやく元通りになったのでしょう。
歌う名物おじさんとは少し話ができました。おじさんはブラジル北東部ペルナンブーコの出身だそう。
バナナのバハッカでは1ダース買ったらその場で食べるようにと1本貰いました。ポルトガル語ができるようになって、売り子さんと話せるようになったらフェイラは更に楽しくなりました。

それにしても、ブラジルに来てからあと数ヶ月で10年とは時が経つのは早いものです。着いた当時のことを鮮明に覚えてるって、よっぽど印象に残っているんだと思います。続けて更新していきます!

もらったバナナ

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