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星を食む

星や月が隠れる夜はなんとも孤独である。
嵐に揺れる木々が窓の奥で荒ぶる。
むべ山風をあらしといふらむ…
今年も春の雷が来たようだ。
眠れる気はしなかった。

午前2時。ペンギンたちとお茶会を開く。
頬張るのは金平糖。
キラキラしたそれはまるで星屑である。
そう、今宵。私は星々を頬張るのだ。

「雲の上」に招待してくれなかったことを後悔するがいい。そう思いながら星を齧る。
奥歯に少し痛みが走った。
そういえば歯医者には半年行ってない。
星様からの仕返しか、月様からのお叱りか。
温くなり始めたアップルティーで誤魔化す。
如何せん…「雲の上は晴れてる」のが寂しい。

飛行機に乗ったあの日を思い出す。
見てしまった美しき世界。
分厚い雲を抜けた先の青。
「彼ら」の居場所である。
寂しくなるな、と呟いてみた。

星々よ。星々よ。
なぁ、残酷な話だ。

星々は、君たちは雲の分厚さを知らない。

悪気のない星々が私に食べられた今日。
冬には強い光で見えていたはずの星々が、
春、段々と見えづらくなって行く。
オリオン座は逃げていく。
月は相変わらずの立ち振る舞いで、
朧月などと愛でらている春。
星々は私に食べられたのだ。

星々がまた、新たな星座を作るまで。
次の冬の、澄んだ空へ帰るまで。

私は今宵、星を食む。

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