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夫も子も居ぬ昼食のうれしさよ栗入りアンパン薄く頬張り(川本千栄「樹雨降る」2015年ながらみ書房)

夫も子も居ぬ昼食のうれしさよ栗入りアンパン薄く頬張り

読んですぐ 分かるわー。と思った歌。

夫も子も居ぬ昼食のうれしさよ。

うれしさがうれしさの分量伝わってくる。
そんな日の昼食は気楽。
もっと野菜食べさせな。
テレビ見んと ちゃんと食べえや。
肉。肉。とか考えんでも良いからね。

あー!あー!じーゆーうーねー!!


という開放感から よし。あのアンパン取ってきて たべよ。何と栗入り。おほほっ。

薄く頬張り

いよいよほんまにうれしい感じがする。

薄く

が効いている。
ひとくちで頬張りだったら、

ただの食いしんぼう。

そうとは、ちがうねん。薄く やねん。
頬張るけど、薄く。
長いこと味わいたいねん。
長いこと 食べときたいねん。

薄く頬張り を実際やってみたら、
頬張りの、歯が がーっと開く感じではなくて、口が「ほ」を発音する時の形になる。鼻のしたの部分が伸びて、
それは お茶目で、少しだけ滑稽でもあり、だからこそ人間味が出て、より、うれしい感じがしてくる。
長く生きている人間の営みという感じ。

ほ、と言えば ほくほく。

かぼちゃや栗、さつまいもなんかを食べる時に 
ぴったりの音と言えるだろう。


♪ ほくほく( ) ほくほく(ふたつ) 
ほくほく( ) ほくほく。(ふたつ)

( )の中に4ぶ休符を入れたい。
↓のやつ

ウインクの「淋しい熱帯魚」のサビの部分のふりをつけるとさらに良し。
脱線。

この歌集には、こんな歌もあった。

飢えに近き切実さ持ちて甘きもの欲る自らを午後は御し難し 


「飢えに近き切実さ」「御し難し」とまでいうのだから、
甘いものを欲するこころは 相当なもの。
甘きもの。

カステラ、プリン、スイートポテト。ポテトアップルパイ。あんぱん大学いも(かりかり)、だんご、アイスクリーム、バームクーヘン、ホットケーキ。杏仁豆腐。わらびもち。カヌレ。お母さんの作ったコーヒーゼリー


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