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Vol.26 家族になろうよ

私の夫は結婚した頃サービス業で
職場はブラック。
朝は9時30分に出勤し帰りは深夜0時前後。

休みは週に1日、月曜日だけ。
有給も取れない。
基本土日が休みの私とは完全すれ違い。
家族が全員揃うのは月曜日の夜だけだった。

子育てはほぼすべて私が担当。
子どもは完全に私に懐いていた。

家族が夫、私と子どもたちのふたつに別れている感じだった。

私は家族が揃わないことに不満というか、切ないというか、さみしい複雑な思いだったけれど
夫は仕事なんだからしかたないと思っている様子で、気にしていないようにみえた。

昭和の男性で、家事子育ては妻がやるのが当たり前と思っていたのだと思う。

時々子どもの写真をスマホに送ると会社の人に自慢していたと聞いたが、夫は子育てに協力的ではなかった。
妻の私が子どもとうまくやっているのをみて満足しているだけだった。

子どもが小さいときなんてあっという間に過ぎてしまうのに、自分から子どもに接しようという気持ちが見られなかった。

年末、夫の実家に帰省するため家族で新幹線に乗った。
席は私と子どもたちの3列と、夫が通路を挟んでひとりだった。

幼い子どもたちは長い時間新幹線でじっとしていられない。
私は子どもたちふたりを相手にして遊び、洋服は乱れ、髪の毛はボサボサ。
疲れた子どもたちは上の息子は私の膝枕、下の娘は抱っこで眠った。

ふと、夫をみると、ひとり座席で優雅にイヤホンで音楽を聴いてリラックスしている。

「ねぇ、ずいぶん優雅ですね」
怒りのこもった低い声で夫に話しかけた。

あわてた夫は、「これさ、いい曲なんだよ!イヤホンもいいやつなんだ!」
と言い、私にイヤホンを貸してくれた。

イヤホンをつけると、とてもいい音質で、
福山雅治の『家族になろうよ』
が流れていた。

なにが家族だよ!バカヤロー!



私はイヤホンを床に投げつけて踏み潰したい衝動にかられるのを必死にこらえた。

そしてお正月、夫の実家に二泊三日した。
お義母さんは私に
「ゆっくりしてええよ。」
と私に気を遣わせないようにしてくれたので、私も家事はほとんどせずに済んだ。

しかしそこは夫の実家。
座っているだけでも嫁としては気疲れする。

そんな私をみて夫が言った。

「ゆっくりできてよかったね」

殴りたくなるのをこらえるのに必死だった。

それから10数年。

最近やっと、家事を協力してくれるようになった。

それは私が少しずつ夫を教育してきたからだと思っている。

夫が家族のことを想っているのはわかる。

不器用な愛なんだと言われたら、そうですねとしか言えないが、私の中には長年蓄積されたいや~な感情が溜まっている。

家事、育児は夫婦の仕事。
夫が手伝うというスタンスではなく
夫の仕事でもあると、広く伝えたい。

令和の男性は、家事育児には協力的なのでしょうか?
そうであってほしいと思います。

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