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読書の秋を迎える前に

角田光代さんの『彼女のこんだて帖』を読み終えて。

わたしのこんだて帖。

小学校の担任の先生が作ってくれたメロンパン。

予備校時代に姉が作ってくれたお弁当。

入院した母に代わって握ってくれた祖母のおにぎり。

誰にでもある、想い出の味。
きっと他の人が食べたら通り過ぎてしまう味だけど、
私にとっては、今も鮮やかにとどまり続ける、
味の記憶。


大好きだった担任の先生が、春休みにお家に招待してくれて初めて食べる焼きたてのメロンパン。

「先生のうちでね〜!!」
「パン作ってくれたの〜?すごいねぇ〜」
家に帰ってすぐした親との会話。

『メロンパンを作りたい』
憧れの原点はここにあり。

高校生でも大学生でもない、
何者でもないわたし。そんな私のために、
大学生のお姉ちゃんが選ぶピリ辛のウィンナーも、どこかお母さんの味と似ていた卵焼きも、
今でもお弁当箱が目に浮かぶ。
ディズニーのマリーちゃんのお弁当箱だった。
ピンクのハンカチで包んでね。

同じ若菜のふりかけなのに、お母さんと違う、
お婆ちゃんのおにぎり。
「お婆ちゃんのおにぎりは、おっきすぎるよー」と文句を言いながら、
早くお母さん帰ってこないかなぁという、子どもながらの寂しさ。


「1回目のごはん」から「最後のごはん」まで、読み進めるほどに“心”がお腹いっぱいに。


「音楽と人生」が結びついているように、
この本は、
「食と人との繋がり」を。
私を支えてくれた沢山の人たちを、深く深く思い出させてくれました。

「あなたが作ってくれた食卓」
忘れないよと、伝えたい友人がいる。

コロナが明けたら、会いに行きたい。


そして今、こうして私が書いたものを読んでくれたあなたが
「私にも(僕にも)あるよ。」って、
誰かに話したくなってくれたら、嬉しいです。




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