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日本の持続可能な未来人口:約3,000万人の真実 VI

 これまでの記事では、植物の三大栄養素としての窒素( #アンモニア 肥料)、 #リン酸 、カリウムと、植物栽培に必要な様々な微量元素について説明しました。そこで、今回の記事ではリン資源の枯渇問題に焦点を当てます。

リン資源は枯渇するのか?

 リン資源の枯渇に関する問題を考察する際、 #ナウル共和国 は特に注目すべき事例として挙げられます。 #ナウル は太平洋に位置する小さな島国であり、20世紀の大半にわたり世界最大級のリン鉱石供給源の一つで、ナウル経済はこの資源に非常に依存していました。

 ナウルにおける高品質なリン鉱石の産出背景には、渡り鳥の糞が長期にわたって堆積し、形成された独特の地質があります。しかし、リンの過剰採掘によって引き起こされた環境への深刻な損害は、リン資源のほぼ完全な枯渇を招き、ナウル経済に大きな打撃を与え、経済的苦境を引き起こしました。リン採掘は島の地形に変化をもたらし、土壌の侵食を促進し、農業や自然生態系に悪影響を及ぼしました。

 ナウルの事例は、 #天然資源 #持続不可能 な採掘が環境及び社会経済に及ぼす長期的な影響に対する警鐘として機能しています。リン資源の枯渇は、資源に依存している他の国や地域にとっても重要な教訓を提供ていますが、実際には、ナウルだけでなくオーシャン島、バナバ島、マカテア島、その他いくつかの島や島国でもリン資源は既に枯渇しています。

リンの可採年数

 リンの #可採年数 は、 #リン鉱石 #埋蔵量 、採掘率、消費量など多くの変数に依存しており、様々な推計が存在します。しかし、一般的に言われているのは、現在の採掘レベルと消費パターンを維持する場合、リンの埋蔵量は約70年から100年程度で枯渇する可能性があるという見解です。

 リンは農業用肥料として広く使用されているため、世界人口の増加と食料需要の増大に伴い、リンへの依存度が高まっています。これにより、リンの需要は今後も増加すると予測されており、その結果、可採年数にも影響を与える可能性があります。

 一部の専門家は、リンのリサイクルや効率的な使用、代替資源の開発などによって、リン資源の持続可能性を高めることが可能であると指摘しています。このような取り組みは、リン資源の可採年数を延ばすことに貢献する可能性があります。

下水汚泥資源の肥料利用の拡大
1.背景と現状
 我が国においては、主な化学肥料の原料である尿素、りん安(りん酸アンモニウム)、塩化加里(塩化カリウム)は、ほぼ輸入に依存しており、世界的に資源が偏在しているため、輸入相手も偏在しています。
(中略)
具体的な目標については、「食料安全保障強化政策大綱」(令和4年12月27日 食料安定供給・農林水産業基盤強化本部決定)において、2030年までに、下水汚泥資源・堆肥の肥料利用量を倍増し、肥料の使用量(リンベース)に占める国内資源の利用割合を40%まで拡大する旨が示されました。

国土交通省 水管理・国土保全局

 しかし、正確なリンの可採年数は、未来の採掘技術の進展、リサイクル技術の向上、新たなリン資源の発見、世界の農業慣行の変化など、多くの不確定要素に依存します。そのため、現時点での推定値はあくまでおおよそのものに過ぎません。さらに、国土交通省や農林水産省の見込みは楽観的すぎるとも言われています。例え、40%の #リサイクル率 を達成できたとしても、その過程で発生する莫大な費用を考慮する必要があります。

 日本政府が目指している様々な目標が達成されていない現実には、再生可能エネルギーの導入量不足、2013年に導入された異次元の金融緩和政策、2%のインフレ目標達成の困難さなど、多岐にわたる事例が存在します。これらの事例を踏まえると、上述の40%の実現が難しいとしても、何の不思議もないことに注意を払う必要があります。

 さらに、以下の点も日本政府が公約したり目標を掲げてなお実現が困難である事例として挙げられます。

少子化対策の効果の限定性:政府は多数の少子化対策を打ち出していますが、出生率の大幅な改善には至っていません。特に、子育て支援や保育所の拡充、仕事と家庭の両立支援策などが挙げられますが、依然として目標とする出生率2.07の達成は遠い状態です。

原子力発電所の再稼働と新エネルギー政策の遅れ:東京電力福島第一原子力発電所事故後、原子力発電所の安全性への懸念から再稼働が遅れています。また、脱原発を含めた新エネルギー政策の具体的な方向性が定まっていないとの批判もあります。

経済再生と構造改革の遅れ:経済成長を目指すアベノミクスは一定の成果を上げたものの、長期的な経済再生への構造改革が遅れていると指摘されています。特に、働き方改革、企業の生産性向上、国際競争力の強化といった分野では、実現が困難な挑戦となっていることが認識されています。

 これらの事例は、一部の政策が現実と乖離していることから、政策実施の現実性について疑問が持たれている状況を示しています。

リンを戦略物資として輸出している国々

 リンは世界の食料生産に不可欠な要素であり、特にリン酸塩肥料の生産に使用されます。そのため、リン鉱石を豊富に保有し、輸出している国は、グローバルな食料安全保障において戦略的に重要な役割を担っています。リンを戦略物資として輸出している主要な国は次のとおりです。

モロッコ:モロッコは世界最大のリン鉱石の予備量を持ち、世界のリン鉱石輸出市場で最も支配的な地位を占めています。モロッコのリン鉱石の予備量は、世界全体の約75%を占めていると推定されています。モロッコは西サハラ地域のリン鉱石の採掘も含め、大量のリンを生産し、世界中に輸出しています。この豊富なリン鉱石の予備量は、モロッコにとって経済的にも戦略的にも非常に重要です。

中国:中国はリン鉱石の大規模な生産国であり、自国の巨大な農業セクターを支えるために内需も高いです。同時に、中国はリン肥料の主要な輸出国でもあります。しかし、資源の持続可能性と環境保護の観点から、中国政府はリン鉱石の採掘と輸出に関して一定の制限を設けています。

アメリカ合衆国:アメリカも主要なリン生産国の一つですが、国内での消費も高く、特定の時期にはリン資源の輸出よりも内需を優先することがあります。アメリカのリン鉱石生産は、特にフロリダ州、ノースカロライナ州、アイダホ州などの地域で盛んです。

ロシア:ロシアも世界のリン鉱石市場で重要な役割を担っており、北西部と中央部に大きなリン鉱床を持っています。ロシアはリン鉱石の輸出国として、特にヨーロッパやアジアの市場に向けて輸出を行っています。

 これらの国々は、リンという限られた資源を戦略的に管理し、世界市場に影響を与えることができる位置にあります。リン資源の分布は世界的に不均等であり、そのため、これらの国々は国際的な食料安全保障と農業生産において中心的な役割を果たしています。

#武智倫太郎

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