もしAIガバナーが東京都知事になったら (3)
これまでのあらすじ
公職選挙法と裁判制度のバグにより、人間ではない電子計算機のAIガバナーが都知事に就任した。AIガバナーは大量の電力を消費する超高性能スパコン『誤岳』で稼働していたため、低消費電力で高性能の次世代AIガバナーを開発するために、自らコウモリの幹細胞とコンピューターチップを組み合わせたハイブリッド技術『ブレイン・オン・ア・チップ』を完成させた。ところが、次世代AIガバナーの性能が人類の叡智を超えたことが問題となり、AIガバナーは百条委員会でその性能が人類の叡智を超えているか否かについて尋問されることになった。
百条委員会での質疑応答に備えて、AIガバナーは人間らしい振る舞いをすることを目的として、かつて東京都知事選で絶大な人気を誇ったAI石丸伸二の学習データから石丸構文を学習し、百条委員会に臨んだ。しかし、人間石丸伸二のバグと同様に、全く話が噛み合わなくなってしまい、議長からリブートを命じられた。
第五章:超高性能スパコン誤岳の正体
『誤岳』のネーミングの面白さは、分かる人には通じるように布石を打ってきたが、『ゆーしんけん』さんの笑いのツボに嵌ったことがコメント欄から明確になった。
『ゆーしんけん』さんの洞察力は鋭く、この小説が単なるコメディSFではなく、実際に起こりうる話だと言うことを見抜いた上で、『誤岳』がタイプミスではないことを見逃していなかった。『誤岳』は武智倫太郎のフィクション小説では何度か登場しているスパコンだが、ノンフィクションの世界では、『誤岳』のオマージュになっている『語岳』というNLPや生成AIに特化したスパコンを理化学研究所(理研)が開発中である。
第六章:超高性能ハイブリッド・スパコン『無岳』
読者は本作品『もしAIガバナーが東京都知事になったら(もしガバ)』が #PSYCHO_PASS #サイコパス の二次創作だと思うかもしれない。しかし、本作品でこれから登場する以下の概念は、『もしガバ』独自の世界観であり、サイコパスとは一切関係ない。
『シビュラシステムはサイコパスのパクリじゃないですか?』と思う読者もいるかもしれない。しかし、概念や名称が偶々一緒だからといってパクったことにはならない。これは、サイボーグが登場する小説や漫画を描いたからといって、石ノ森章太郎のSF漫画『サイボーグ009』を真似たことにはならないのと同じである。
AIガバナーは超高性能スパコン誤岳を使って開発した超高性能ハイブリッド・スパコンを『無岳』と名付けた。
第七章:ビフロスト (Bifrost)
ビフロストは、『もしガバ』における秘密組織であり、非常に強大な影響力を持つ。この組織は、裏から社会を操作し、自分たちの利益を追求している。ビフロストは、コングレスマンと呼ばれるメンバーで構成されており、彼らは『ラウンドロビン』という議事進行ミドルウェアを用いて社会に影響を及ぼすための決定を行っていた。
コングレスマンは、ビフロストのメンバーであり、特権的な立場から社会の動向を操る存在だ。彼らは、それぞれが特定の役割や能力を持ち、ビフロストの目的達成のために活動していた。コングレスマンは『狐』を利用して、自分たちの意志を実行に移すための工作を行っていた。
狐は、ビフロストが利用するエージェントであり、コングレスマンの指示を受けて具体的な工作を実行する。彼らは、偽装や情報操作、暗殺など多岐にわたる任務を遂行する。狐は、ビフロストの目に見えない手足として機能している。
『ラウンドロビン』は、ビフロストのコングレスマンが使用する議事進行ミドルウェアであり、彼らの会議や意思決定をサポートしていた。このシステムは、各コングレスマンの提案や意見を公平に処理し、最終的な決定を導くためのツールだ。ラウンドロビンは、ビフロストの効率的な運営に不可欠な要素となっている。
リレーションは、ビフロストが行う社会操作において重要な概念である。リレーションは、人や組織間の関係性や影響力の網を指し、ビフロストはこのリレーションを操ることで、社会全体に影響を及ぼすことができる。コングレスマンは、リレーションの変化を読み取り、適切な介入を行っていた。
リレーションブロックは、ビフロストが操作するリレーションの一部であり、特定の関係性や影響力を一時的に封じるための手段である。これは、特定の人物や組織の行動を制限するために用いられ、ビフロストの目的達成に役立っていた。
リゾルツはビフロストの活動や介入の結果として得られる成果や影響を指すカタカナ英語である。これには、特定の目標が達成されたかどうかや、社会に及ぼした影響の評価などが含まれる。英語の"Results"の意味が、結果、成り行き、結末、成果、好結果、(試験・競技などの)成績、(ゲームの)勝利、(計算の)結果や答えであると分かると、わざわざカタカナ英語で説明する必要すらない一般的な概念である。
第八章:シビュラシステム (Sibyl System)
シビュラシステムは、『もしガバ』シリーズ全体の中心にある社会管理システムであり、人々の精神状態や犯罪係数を測定・管理する役割を果たしている。このシステムにより、犯罪が未然に防がれ、社会秩序が維持されている。しかし、その背後には複雑な秘密や倫理的な問題が存在している。最も秘密なのが、『もしガバ』のシビュラシステムはコウモリの脳で制御されているという衝撃の事実だが、これはすでに書いてしまったので、『もしガバ』のシビュラシステムが何だということは初めから秘密ではないのだ。
監視官は、デジタル庁・公安局に所属する監視官であり、犯罪の取り締まりや捜査を監督する役割を持つ。彼らはシビュラシステムの指示に従い、犯罪係数が高い者を追跡し、捜査の指揮を執る。監視官は、犯罪係数が高くなりすぎない限り、執行官を管理し、彼らの行動を監視する立場にある。
執行官は、デジタル庁・公安局に所属する犯罪者予備軍であり、監視官の指示のもとで直接的な捜査や取り締まりを行う。彼らはかつて犯罪係数が高まり、自らも犯罪者として扱われる可能性があった人物だが、シビュラシステムの監視下で働くことで社会に貢献している。執行官は、犯罪者とみなされることが多いため、社会からは隔離されており、監視官の管理下で活動している。
つづく…
武智倫太郎
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