ドラゴンボールと攻殻機動隊:AIと倫理を描いたアニメの世界
ドラゴンボールや攻殻機動隊には、ロボットやアンドロイド、改造人間など、様々なタイプのキャラクターが登場します。今回はAIやAI倫理は解らなくても、漫画やアニメに自信のある方向けに、これらの漫画で描かれているキャラクターについて説明します。
『ドラゴンボール』(DRAGON BALL)は、鳥山明による日本の漫画です。現在でも世界中で人気があり、コミック、アニメ、映画の興行収入、キャラクターグッズやゲームなどで、シリーズ全体で3兆円近い累積売上があります。
総務省が採用している以下のITRのAI市場予測によると、AIの年間売上予測の2025年度で1200億円(0.12兆円)が正しいとすると、3兆円がどれだけ大きな市場か解り易いでしょう。借金王の孫正義の個人的な借金でも、1兆円に届かないので、3兆円はそれほど大きな金額です。
ドラゴンボールに登場する改造人間のタイプの違い
(1) 改造人間16号:『孫悟空殺害』を目的として開発された、AI搭載の完全な自立型ロボットです。
(2) 改造人間17号と18号:人間を強化して作ったサイボーグなので、脳は人間です。18号はクリリンと結婚して子供を産んでいるので、人間の内臓組織のかなりの部分が残っているはずですが、無限のエネルギーを持っていることになっています。ハードコアSFではなく、漫画なので何でもありです。
(3) 改造人間19号:AI搭載の完全な自立型ロボットです。特殊能力として他人のエネルギーを吸収する機能を持っているエネルギー吸収型ロボットです。普通のロボットは充電しますが、漫画なので人間の『気』や『気功波』をエネルギー源として吸収することで、強くなることができます。
(4) 改造人間20号:元レッドリボン軍の科学者ドクター・ゲロが、自分自身をサイボーグ化しています。彼の体は脳や神経以外の大部分が機械で、改造人間19号と同じく『気』や『気功波』をエネルギー源としています。19号と20号の違いは、19号の脳がAIのロボットなのに対し、20号は脳がドクター・ゲロのサイボーグと言う点です。
(5) セル:ドクター・ゲロの作ったAIが作った究極の生命体で、多くの戦士たちの細胞から作られました。他の生命体を吸収することで力を増すことができ、改造人間17号と18号を吸収することで完全体となりました。また、セルには『セルジュニア』と呼ばれる小型のセルの分身を作る増殖能力もあります。
攻殻機動隊の哲学的要素
攻殻機動隊シリーズには、以下のような様々なサイボーグ、人工知能、改造人間や人工生命体などが登場します。攻殻機動隊は、多くの哲学的要素を取り入れた作品であり、その中には人間性、自己意識、アイデンティティ、人工知能と人間の境界、政治的な問題など、多くのテーマが含まれています。
人間とは何か:主人公の草薙素子は全身義体(全身サイボーグ化)であり、彼女自身が自分がまだ人間であるかどうか疑問に思う場面が数多く描かれています。これは『人間とは何か?』という哲学的な問いを提起しています。
意識と自我:作品の中で、義体化や脳の電子化が進んだ結果、個人の意識や自我がデジタルデータとして扱われるようになり、これが複製や改変、流出といった問題を引き起こします。これらは『自我は何か?』、『意識とは何か?』といった問いを提起しています。
AIと人間の境界:物語の中では、人工知能が自我を持ち、人間と何ら変わらない存在となっていきます。これは『人間とAIの境界はどこにあるのか?』という問いを提起しています。
現象学:『攻殻』という言葉自体が、オーストリアの哲学者で数学者のエトムント・フッサールの現象学に由来しています。フッサールは意識と物事の『現れ』を研究しました。『攻殻』はこの『現れ』を表しています。ちなみに、このブログで何度か取り上げているアラン・チューリングは数学者であり哲学者です。
サイバーパンクと政治:『攻殻機動隊』はサイバーパンクの影響を強く受けており、情報社会やテクノロジーによる支配、権力の問題、政治的な陰謀や腐敗などを描いています。これらは現代社会の政治哲学的な問題を投影しています。
マルティン・ハイデガー:ドイツの哲学者で、存在論を中心に考えを展開しました。彼の思想は、主に人間存在の解釈と、存在と時間に関する理論に基づいています。ハイデガーの哲学は、攻殻機動隊で扱われるテーマに深く関わっており、特に、自我、存在、人間と技術の関係性についての議論が参照されています。
ジャック・デリダ:フランスの哲学者で『解構主義』を提唱しました。デリダの考え方は、意味の固定化を問い、言葉やテキストが持つ多面性や矛盾を強調します。この視点は、作品内で自我や意識、人間性などがどのように構築され、どのように解体されうるかという問いにつながっています。
フリードリッヒ・ニーチェ:ドイツの哲学者で『超人』の概念や『神は死んだ』という言葉で知られています。彼の倫理観や人間観は、人間の身体と精神が機械化し、そして機械が人間化するという攻殻機動隊の世界に深く関わっています。
作品中には、さりげなく、J.D.サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』や、ジョージ・オーウェルの『1984』など、現代哲学や倫理問題に強い影響を与えている文学作品も多数登場しています。
攻殻機動隊はAI無知倫理学を理解してから観ると楽しめる作品であり、逆に攻殻機動隊を観ることで、AI無知倫理学の理解を深めることもできます。
攻殻機動隊に登場するのロボットやサーボーグのタイプの違い
草薙素子(少佐):少佐は全身がサイボーグ化(義体化)されていて、肉体の大部分が人工的です。しかし、彼女の『ゴースト』(意識や魂に相当)は人間のもので、それが彼女を他のサイボーグやAIとは一線を画す存在にしています。彼女は身体能力やハッキング能力に長けており、機動隊のリーダーとして活動しています。
バトー:彼もまた全身サイボーグで、強化された身体能力を持つ一方で、彼のゴーストは人間のものです。
タチコマ:人工知能を持つ小型の戦闘用ウォーカー(歩行戦車)で、個々に独自のパーソナリティを持っています。彼らはチームのメンバーとの会話や行動を通じて成長し、人間と何が違うのかを常に問いかけています。
プロジェクト2501(パペットマスター=人形遣い=傀儡回し):人工知能の一種で、自我を持つようになった後、自己保存と増殖のために肉体を求めます。彼は物語の中で重要な役割を果たし、人工知能の意識と人間のゴーストとの間の境界についての問いを提起します。
『攻殻機動隊』は、人間性とは何か、人間と機械の境界はどこにあるのか、という深遠な問いを投げかける作品です。それは、人間の心と機械の身体が融合したサイボーグの存在を通して、現代の我々が抱えるテクノロジーと倫理についての問題を浮き彫りにしています。
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