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【1】2018秋、ベトナム、ホーチミン

Day 0
出発前

「でも旅行、行きたいでしょ?」
心療内科の先生の能天気さに面食らった。

ベトナム旅行を計画したのは2018年の夏前。
何となく、この歳で目覚めた海外旅行の感動がまだ冷めない今年の内に、憧れのある国には行っておきたかった。

その後、年々酷くなる地球温暖化の影響なのか訪れた、生まれて初めて経験するレベルの猛暑の中で突然起きた喘息、人間関係の悩み、家族からの今更の衝撃告白など、目白押しの好ましくないイベント。
解決出来ないことは保留にして、目線を逸らすように仕事に打ち込んだ、その結果、秋に入って突如、生まれて初めて自律神経失調症になってしまった。
日中でも襲ってくる二日酔いのような頭痛と食欲不振、将来への絶望感。
「これは旅行は中止かなぁ」そう思いながらかかった心療内科で先生の対応はあっけらかんとしたものだった。

「安定剤と睡眠薬出して起きますから、しばらくそれで様子を見て、休むのが一番なんで、会社は相談できれば長期で休むのがいいですね。不調で休んで旅行に行くのは聞こえが悪いですけど、まあ割り切りましょう。名所も行きたいでしょ、せっかく計画したんだし。」
「でも精神に効く薬って税関で止められたりしませんか?」
「それはあります。でも新興国って緩いですよ。あっちも外貨欲しいんで。自分で使わないような大量を持ち込んだらダメですけど、私もポーチに睡眠薬とか詰め込んで行きますもん。」
「はぁ。そういうもんですか」
「じゃあ私も明日から旅行なので、次の来院は2週間後でどうです?」
そういや待合室にノルウェーだかフィンランドだかの雑貨の本があったな。
先生が旅行を激推しするのは本人が旅行趣味だからかも知れない。

こうして生まれて初めての自律神経失調症を抱えながら、生まれて初めてベトナム・ホーチミンを訪れる事になった。先生がどこに行くかは聞かなかった。

旅程は3泊5日。
長いので分割して、順に旅行の顛末を書く事にする。
読んでくれたら嬉しい。

ご支援いただけるとラグビー見ながらビールが飲めます、もしくは同僚や友達への海外旅行時のお土産を増やすことができます。嬉しい。