最近の感じ|ヤバめの霊が憑いている・スマホを拾う
仕事|ヤバめの霊が憑いている
ゴールデンウィークが明けて2週間もすると、徐々に仕事も通常モードに入っていきます。明けてすぐは「仕事したくないね~」なんてボヤき合うのが楽しかったりするんですが、さすがに2週間も経つとみんな現実を受け入れ始め、「仕事したくない仕事したくない」と喚いているのは社内ではおれだけになります。
弊社のオフィスは、一般社員が働くワークスペースと会社の役員の部屋がガラス一枚で仕切られていて、普段はお互いのようすがガラス越しに見えるわけでして、居眠りなんかしているとソッコーでバレる。おれは以前、もう1年以上も前にうっかり勤務中に居眠りを決め込んでいたところを役員に見られてしまい、「会社で居眠りするヤツ」というレッテルを未だに貼られていて時々イジられるのですが、居眠りエピでイジられるたびにマジに若干テンション下がるからそろそろやめてほしいんですが。
ある日のこと、その役員室と一般社員のワークスペースを隔てるガラスにブラインドが下りていました。おれはこの会社に入社して4年になるんですが、そんなことは初めての事態です。何か大事な話が役員室で行われている!と当然社内が若干ざわつくわけなんですが、部屋を隔てるガラスが分厚いためか、普段からお互いの声なんてほとんど聞こえない、それこそ怒鳴り声をあげても一切響かないので役員室で詰められてるときのおれはやや安心してるんですが?だからブラインドが下りているのは音の問題ではないっていうことなんですがね。じゃあ見られちゃマズいような、よほど大事ことが起きているのだろうってなるんですが、おれの居眠りを監視する以上に大事なことなんてこの会社にあるのかよ、と思うわけですよね。
さっきからおれの勤務態度のまずさをいちいち引き合いに出してなんなんだよ、と思いますが、つまりそれほど大事なことが起きているということです。
それで、役員室の入り口正面にはミーティングスペースがありまして、ちょうどそこで打合せをしなくてはならなかったんですが、打ち合わせスペースから役員室が見える場所にもブラインドが下りている。もう完全にブラックボックスです。そこまでして隠したいということはもうそれはたいへんな事態、社長の愛人が実は反社の愛人を兼ねていて、美人局に遭っているとか、そんなレベルの勘繰りをせざるを得ないわけです。
すると打ち合わせの最中、妙齢の女性が一人役員室から出てきました。当然知らない人です。ああ、やっぱり反社の愛人…と思っていると、女性がこちらに、こんにちはとあいさつをしてくれました。それで彼女は会社を出て行ったわけです。
翌日、社長と喫煙所で会ったので昨日の女性は誰だったのかと尋ねると、
「ああ、あの女性は霊媒師!霊が見えるらしくて知り合いの経営者に紹介されて除霊をやってもらっていたのさ!」とのこと。
経営者と呼ばれる人たちが若干スピリチュアルに傾倒しがちであるという言説をどこかで聞いたことがありますよね。一般のサラリーマンである我々には想像もつかないプレッシャーと日々戦っているわけですから、サイエンスでは説明のつかない何らかのパワーを拠り所とする傾向というのはよく理解できます。スティーブジョブズも禅に熱をあげていたといいますし、経営者ってすぐ引き寄せの法則が~~とか言うじゃないですか。それは非常によく分かるんですが、まさに会社の経営陣がスピってる瞬間を目の当たりにしますと少しクラクラすると言いますか、霊媒師が出入りしている会社ってちょっとイヤですよね。
大喜利で「こんな会社は嫌だ」ってお題が出たとして「霊媒師が出入りしている」って回答したらちょっとウケると思うんですよ。ちょっとウケる会社で働いています。
社長は続けます。「女性が帰り際にさんしちゃんと顔を合わせただろう、もう顔を見るだけでその人に霊がついてるかどうかが見えるらしいんだけどね。霊媒師の先生、さんしちゃんと挨拶して帰り際ちょっと様子がおかしかったっていうか、『あのメガネの方…ちょっと重ための霊が憑いているかもしれないです…』ってシリアスな感じで仰るんだよね。さんしちゃん、憑いてるらしいよ。5万円で除霊してくれるらしいから行ってきなよ」
マジで最悪です。なんなんだ。おれはずっと5歳の時に亡くなった一郎おじいちゃんがついて守ってくれてると思っていたのに。いや、この世には科学で説明がつかないことがたくさんあるってことはおれもよく分かりますし、霊的なものもあるんだろうなとちょっと思っている節があります。でもおれに嫌な霊が憑いてると思わないじゃないですか。
それで、おれはその日以来会う人会う人みんなにヤバめの霊が憑いている話を共有しています。今のところそれであまり困っていないし、その際なんなら一笑い起こるのでヤバめの霊とは…?となっています。
そもそも、この世界に彼岸と此岸があるとして、長い人類史の中、彼岸に渡った人、すなわち既に亡くなった人のほうが圧倒的に多いわけじゃないですか。この世界には満員電車なんて比じゃないくらい霊がひしめき合ってるはずだとおれは考えてるんですね。と考えると、霊なんてものはあらゆる人々に憑いていて、それが大なり小なりハンディとしてのしかかってくるのは仕方がないことだと思うんです。
夏場に電車に乗ってるときにおじさんの汗がこちらに飛んでくるとか、あるいは居酒屋で隣り合ったグループの飛沫が飛んでくる、そのうちのいくばくかの確率でコロナに罹るとか、そのレベルのものなんじゃないか、とおれは考えることにしました。そのほうがヘルシーだからね。めちゃくちゃビビって理論武装してて草。「おばけなんてないさ」とか言えよ。
生活|スマホを拾う
おれは眠れない夜に自転車で街を流すのが好きでよくやってるんですけどね。片耳イヤホンでお気に入りの音楽、そう、ユーロビートとかかけたりしながら、スクランブル交差点を慣性ドリフトで走り抜ける公道最速理論の実践者として知られておりますけれども。青一から赤坂に至る乃木坂のあたりをショートカットで下る自転車がいたらそれはおれです。掟破りの地元走りだ!!っつってね。
それでこの日も自転車で池袋のあたりを流していたんですけど、池袋の西口、ホテルがいっぱいあるあたりに、古めかしいパン屋さんの灯りがついているのを認めたんですね。気になって調べてみると、深夜12時までやってるらしいパン屋さんということで、そんなん絶対おいしいじゃないですか。夜の街で深夜までやっている老舗のパン屋さんですよ。
それがこれです。
写真を見てみると、パンを入れるビニール袋がかわいいです。
こんな袋にパンを入れてくれるお店は絶対おいしいに違いないということで、近々おれはお伺いしてみたいと思ってるんですが、スマホでいろいろお店を調べているうち、足元にスマホが落ちているのを見つけました。iPhoneです。
きっとこのお店を夢中で眺めていたらうっかりスマホを落としてしまったのでしょう、わかるよ、と思いながら拾い上げます。するとすぐにその携帯に電話がかかってきます。出ると、若い男性の声で「このスマホを落としてしまった者なのですが!」と焦り声です。おれもよくスマホを落としたり失くしたり壊したりしちゃうのでとっても気持ちが分かります。このまま電話を切って、近くの中古携帯ショップに売払ってしまってもよかったのですが、育ちが良いせいか困っている人を放っておけなくてね、聞くとまだ近くにいるってことで、合流して受け渡すことにしたんです。
電話を切って待ち合わせ場所で待ちます。携帯に通知が来ます。
「性の相性で繋がるマッチングサイト」を標榜するサイトでした。Sさんからメッセージが届いています!とか書いてありました。
なるほど電話口では穏やかそうな若い男性の声でしたが、とんでもないクソスケベ野郎がこれから来るぞ、どんな面をしていやがるか見てやれ、などと思いながら待っていますと、「すみません、携帯を落とした者ですが…」と声をかけられます。見るとかわいらしい若いカップルでした。
彼女とお酒を飲んで帰る途中に落としたことに気が付いて、たいへん焦って探し回ったけど見つからず、拾ってもらえて本当によかったみたいなことを早口で喋っています。女の子の方も一緒に探してくれていたみたいで、二人ともたいへん安心したようすでした。失くしたスマホを深夜に一緒に探してくれるような彼女がいながら性の相性で誰かと繋がろうとするなよ。
拾ってくれたので何かお礼でも、ということでコンビニへ促されます。特に欲しいものもなく、こういう時の相場もよくわからなかったので、安いアイスを一個と、お水を一本買ってもらいました。それで、本当にありがとうございました!と握手を交わしてお別れしたわけなんですが、アプリの通知はどさくさに紛れて削除をしておいてあげて、何も言わないで見送りました。
こういう時に大きく出られないのがおれです。いっそハーゲンダッツとかいっといたほうがお互いに気持ちよくなれたのでしょうか。みたいなことを帰りながらぼんやり考えていました。
ただ、これで徳を一つ積んだことになるので、悪い霊いなくなってくれないかな~~!徳パワーで除霊されないかな~~!しばらく気にして引きずると思います。そんな感じです。
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