最近の感じ|広報/PR界隈雑感
この頃ベンチャー企業の広報PR担当者が迂闊な発言で炎上しているのをよく見る。別に火に油を注ぎたい意思もなければ殊更広報/PRパーソンの肩を持ちたいわけでもないけど、そう遠くない業種で働いているいちサラリーマンとしてこのへんの事案や傾向に思うところがないわけではないのでぱぱっと書いておく。珍しくまじめに考えて整理した話なので、たぶんギャグはあんまりないです。
まずタイミーのガイアの夜明け「仕込み」発言問題。広報/PR業界に関わらず裏側で何かを発信する仕事をしている人がちょくちょく「仕込み」って言葉を使ってるのを見聞きするので、ぶっちゃけおれは「時間をかけて準備してきた」くらいの意味で捉えたので初見ではそんなに違和感なかったんですが、いわゆるサクラやステマ的な意味合いでの「仕込み」にもとられかねないってことで炎上しているという話です。
なるほど言われてみればそういう意味にも取れるなと思ったとともに、表に出ている番組制作の背景を見て、言葉が持つ意味とかを抜きにしても「仕込む」は違くね?ってなりましたけれども。その後、この件はなぜか同業他社のおばちゃんがこの炎上投稿をした人を擁護する発言をして、さらに火に油を注ぐ事態になっていました。
それはそれとして、当該炎上投稿をした人は社名・役職名・実名を出したうえでアカウントを運用しているんですが、プロフィールには「※発言は個人の見解です。」とあって、このへんにおれは違和感を覚えています。まー社名とか実名を出して活動するノリは分かるんですよ。「大谷翔平|ドジャースの人」とか「徳川家康@征夷大将軍」みたいな、社名とか役職名が持つ権威性ってありますもんね。それで名前を売りたいって意図だと思うんですけど、一社員が会社の名前とか権威を借りておいて、このエクスキューズを入れるのは筋が通らないっていうか、そういう雑な運用してるから迂闊な発言とかしちゃうんじゃねえの?って思うんすよね。
受け手からすると個人の見解とか知らんし、さらに経営側からするとこのエクスキューズめちゃくちゃ怖くないですか。会社の看板を背負って発信している実名アカウントが「ポコチンかゆい」とか呟いたり、「ANAの乗り心地がくそ」とか投稿する可能性もあるわけですよ。ANAはドジャースのスポンサーなのでね。ギャグなしで書ききるのちょっとしんどかったので、これくらいは入れてもいいでしょう。
社員がうっかり取引先を貶す発言をしたとして、これも「※個人の見解です」で逃げられると困るというか、めちゃくちゃリスクですよね。会社の名前とか実名とかは、それ自体は別に使えばいいと思うんですけど、使うなら使うで発信内容はちゃんと切り分けましょうねってことだと思うんです。
それから、兵庫県知事の選挙活動におけるSNS戦略企画・運用委託問題です。このへんが公職選挙法に触れるかどうかは今出回っている情報だけだと明確に判断ができないのでそこは続報を待ちましょうってところですが、この件にいっちょ噛みしているとされるPR会社のおばちゃんがnoteで「選挙の戦略的広報活動の裏側!」みたいな記事を投稿していて、正気か?となっています。
記事は各自でお調べくださいなんですが、陣営への提案内容からSNS戦略のこだわり、成果などが細かく書かれていて、このへんの戦略・施策自体は全然やったらいいと思うんすよ。それで成果が出たとして、一般的な業務の中では話題性があって成功事例を語れる業務はWORKSとして記事化したくなる気持ちもまあわかる。でも選挙活動の広報ってめちゃくちゃデリケートな問題じゃん?って話ですよね。
おばちゃんの承認欲求の暴走とかはどうでもいいんですけど、気がかりなのはこのnote記事、斎藤陣営に公開の許可を取ってたんだろうかってことです。普通は事前に双方で内容の確認をとって、合意を得てから配信するものだと思うんですこういうの。チェックして公開合意したものだとしたら斎藤陣営側のツメが甘いってことだし、勝手に公開されたものだとしたらこのおばちゃんの職業倫理どうなってるんだって話になると思うんですよね。
このPR会社、かなり自治体案件にも絡む機会があるようで、そのへんの話も別の記事で触れられていました。
これもリンクは控えるんですが、なぜこの会社が行政の入札案件に参加するのか、これまでの実績、今後の展望なんかが書かれているわけなんですが、これを読むと、同じ自治体とご一緒する機会の多い身の上、おれとしてはあんまり一緒に仕事したくないタイプの人だな、という感じがしますし、部下がWORKSとしてこのnote記事を出してきたら、「この記事書くのに何分かけた?」と詰めると思います。
「強い言葉を使う割には訴求力が低い」みたいな言いたいことは様々ありますが、まずこの記事をWORKSとして読ませるものにするのであれば、実績のリンクくらいちゃんと貼ろうねということと、「ベンチャーだけどプロポでリクルートとか楽天とか大手企業にも勝ってます!」みたいなこと、記事でアピるのは下品だからやめようねというところです。本題に関係のない話ですが、まあこういう記事書いちゃう人だし…みたいな邪推はしてしまいます。
みたいなみたいな、広報/PR界隈がこの頃嫌な盛り上がり方をしているので思うところを書いてみた次第でした。広報/PRの仕事をしている人とかかわる機会もあるんですが、仕事でかかわる人たちはみんな素晴らしい人たちばかりです。彼らの仕事ぶりを見るたびに、魅力のあるもの、こと、人にちゃんと正しく光が当たるようにする、たいへん価値高い仕事だということを実感します。この頃炎上が続いてることで、この仕事そのものひいてはそこに携わる人すべてが貶められているような気持ちになります。
これ、ある若いPRパーソンのツイートなんですけどね。たいへん優秀な方で、活躍を楽しみに拝見している人の一人なんですけれども。矢面に立っている業界の一員としての心中お察しするし言いたいことはわかるけどさ、このタイミングでこの表現でこの発信するのは全然見えてねえってなっちゃうって。なんか、そういうとこだよねってすこしがっかりしています。そんな感じです。