本間貴裕 / SANU Founder & Brand Director

「Live with nature. / 自然と共に生きる。」 SANU Founder 本間貴裕の備忘録。

本間貴裕 / SANU Founder & Brand Director

「Live with nature. / 自然と共に生きる。」 SANU Founder 本間貴裕の備忘録。

最近の記事

東京と地球に、私は住みたい。

少し前の冬の出来事。東京から車で3時間ほどの雪山に出かけた帰りしな、道端にカモシカを見かけた。凛と冷える空気の中、足元には澄んだ小川が流れ、枯れた木々の間からは光が降り注ぐ。静寂。そのなかに姿勢よく佇むカモシカがいた。じっとこちらを見ていた。カモシカの立ち姿も、周りの自然も、ただただ美しかった。 ——— 「幸せ」ってなんだろう。 一つ、それは社会的な、人間としての幸せだと思う。クラスで良い成績を残す。好きな洋服を身に着ける。仕事で成功する。愛する家族と、温かい家庭を築く

    • 山椒を食べる。

      冬が折り返し、空気は春へと向かう。暖かい風が吹く渓流に釣りに出かけるのが、明るい日が差す山へ山菜を取りに行くのが、日に日に楽しみになっていく季節。 現在のSANU河口湖1stの拠点の下見に訪れた時、約2年前のこと。敷地を歩いているとふと足もとのどこからか山椒の香りがした。 同じように見える緑の低木を注意深く見ていくと、枝に棘がついた、左右対称にギザギザの葉が生える山椒の木を見つけた。 ぷちっと一枚枝を失敬し、鼻に近づける。香ばしく清廉でいて、しかし美味しそうなその香りをた

      • 死と、自然。

        宮城県は石巻出身の友人は、陸上部でとびきり足が速かった。大学時代、私たちは二人でよく酒を飲んでは将来の夢について語り合った。 本当にしたいことは何なのか。生涯を通して何を達成したいのか。何者になりたいのか。 「ぜっんぜんわかんねえ!そもそも夢を達成してる大人が周りにいねえじゃんか!」 いてもたってもいられず駅前に向かい、出会う大人たちに片っ端から「夢達成しましたか?今楽しいですか?」なんて聞き回ったりもした。 卒業間近のある日、道端で会った彼は大きな声で私に向かってこ

        • 国を越えた、自然の繋がり

          ジョン・F・ケネディ空港から北に3時間。 朝靄が出る中、ニューヨークはキャッツキルの川へと車を走らせた。そうそう、視察のための出張だからと言って、釣りをサボるわけにはいかない。眠い目をこすりながら、暗がりのなか山を越える。 冬に差し掛かるこの地域は、息が白くなるほど十分に寒かった。 子供の頃の景色を思い出す。福島は裏磐梯。噴火によってできた山々の間に浮かぶ湖は、秋になると湖面から湯気を出す。 気温が下がった朝。夏の日差しに温められた水と、秋の冷気で冷えた空気。二つの気

          友は仕事を経て、仲間になる。

          4年前の夏。友人の結婚式の前夜祭で福島弦(SANU CEO)に出会った。 美味しそうな肉を焼いていたら、向こうから姿勢正しくツカツカとやってきた。黒めの肌と短めのひげ。落ち着いた低い声の、くしゃっと笑うやつ。 この人と仕事がしたいと思った。友達にはなれる。それは会った瞬間わかる(そんなもんでしょ?気が合うな、みたいな感じ)。しかし彼とは、ただの友達で終わるのはもったいない気がした。 人は街で出会って知り合いになり、酒を飲んで友人になり(コーヒーでもいいが)、仕事をして仲

          友は仕事を経て、仲間になる。

          あらためまして、SANU創業の想い

          一人で下を向き、思わず笑顔になってしまう瞬間がある。早朝、誰もいない海。オレンジや紫、赤といった無数の色を湛えた朝焼けに染まる海面を、穏やかな波と共に滑る時。雪の降る白銀の冬山。仲間との距離がひらき視界から人が消え、ふと静寂が訪れた時。 30歳になった頃、私の人生は有限であり、かつ、自然は圧倒的に美しいことに気がついた。この時に何か特別なことがあったわけではない。しかし、20代を終え、肉体的にはこれから衰退していくんだな、なんて考えていた思考の先に行き着いた感覚。ちょっと待

          あらためまして、SANU創業の想い

          また、書きます。

          改めて、また文章を書こうと思う。 新しく会社を興したのが2019年の11月11日。会社とブランドの名前を「SANU」に決め、2nd Home Subscription事業に進むことを決意したのが2020年の6月。 そして約500の土地を調べ、100を実際に足で周り、10個を仕入れた。ADXという建築事務所とタッグを組み、SANU CABINの設計を始めた。アプリの開発とウェブのデザインも同時にスタート。 金はない。だから写真は自分たちで撮って、文章は自分たちで書く。

          「Hands & Hearts」 始まりの物語

          僕たちはいつも、大工さん達と共にGuest Houseを、Hostelを、Hotelを作ってきた。新しいプロジェクトが始まると、棟梁のなべさんを筆頭に全国津々浦々、文字通り北は北海道、南は沖縄といった広い地域から「仲間」が集う。多い時はチーム全体で20名近くになることも。木工職人、鉄職人、皮職人、庭師、左官職人、ツリーハウスビルダー。 工事の最中、ある大工さんにふと尋ねたことがあった。 「自分が作るもののデザインや仕様を決めるとき、何を基準にしてるんですか?」 庭師のよ

          「Hands & Hearts」 始まりの物語

          都市はどんどん退屈になる?

          都市の均一化とそれを防ぐ「よそ者」の存在。アジアの各都市を訪れて感じる既視感について考える。 ーーーーーーー 数年前、好きでよく台湾を訪れていた。その土地が、気候が、食べ物が、そしてそこに住まう人々の暮らしと纏う雰囲気が好きだった。 そんな気持ちとは裏腹に、国の首都である台北を訪れる度に落胆することがあった。新しくそこにできるカフェが、レストランが、バーが、ホテルが、どれも「何か」に似ている。 記憶をたどるとそれはNew Yorkだったり、Tokyoだったり、Melb

          都市はどんどん退屈になる?

          みみずと魚と兎、から作られるピザ屋の話。

          ベトナムはホーチミンを訪れている。旅の前には決まってその場所のおすすめを友人たちに聞きまわるのだが、今回はここ「Pizza 4P's」の名前をよく耳にした。 ベトナムなのに、ピザ屋ときたか。 Pizza 4P'sは「Make the World Smile "For Peace."」をビジョンに掲げ、ベトナムで展開しているピザ屋さん。2008年に自宅の庭でピザを作り始めたオーナーの益子さんは、2011年、ベトナムにて1店舗目をオープン。「モ ノクル」が選ぶ世界のベス

          みみずと魚と兎、から作られるピザ屋の話。

          神々の宿る島

          「Hey Hiro. What kind of places do you wanna make hotel ?」 お前はどんな所にホテルを作りたいと思ってるんだ、ヒロ。と、オランダ人でインドネシアに住んでいる友人Jorkに尋ねられた。 「土地に力がある場所に。」 南の国独特の色濃い夕陽が視野の片隅にあったせいか、分厚い波の音に囲まれていたせいか、自分の口から出た答えは自然とこんな表現になった。自ら言い放った言葉がぐるっと空気中を回って耳に入り、すっと心に落ち着くことが

          ココナッツとライフスタイル

          スリランカに来た理由の一つ、Sunshinestories。 http://sunshinestories.com とてもかっこいいホームページとインスタグラムを持っているのだが、いかんせん宿に来る前の「情報」が少なかった。何を大事にしてるのか、どんなストーリーが背景にあるのか。こういうコアな部分はウェブにしては読み応えがありすぎるほどに記載されている一方、部屋の様子がわかる写真もなければ、住所も載っていない。「Surf & Yoga Retreat」とは謳っているものの

          ココナッツとライフスタイル

          酒と茶と、太陽と。

          少し前に、お茶を飲みに行った。歳下の、けれどとても落ち着いた友人に呼ばれて。 「ひろさんとはゆっくり話してみたかったんです。なので是非、来てください。」 仕事柄、話を聞きたいと言われることはよくあるのだけれど、そう言われて話してみても、良い会になった試しはほとんどない。 Nui.の資金集めに奔走していた時分、アップルの元日本支社長の方に話を「聞いてもらえる」ことになった。会って早々に尋ねられたのは、「で?君の話を聞いてオレにどんなメリットあるの? 」当時、やばい、これは

          Geoffrey Bawaを訪ねて

          建築家Geoffrey Bawaの作品を感じたくて、スリランカはコロンボへ。 首都コロンボは、着いてみると意外と都会だった。スリランカといえば湿った熱帯雨林と開けた蒼い海のイメージ。しかしこの国の車の99%が日本から来ているということもあってか、日本の高速道路を走っているようだった。ランドクルーザーにレクサス、プリウス、ワゴンR!の間をすり抜けるたくさんのtuktuk。 そんな喧騒から少し離れて路地を入ったところにNo.11はひっそりと佇んでいる。これが、もともとのコロン