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前澤氏が可視化したひとり親の実情

わたしの900,000円はどこへ。

今月半ば、元ZOZO社長の前澤友作氏がひとり親基金として、
1万人に10万円を支援するという企画がTwitterで呼びかけられた。


前澤友作ひとり親応援基金

しかも、即抽選して、当選者に3日後には振り込むというスピード感。
これはコロナ禍で困窮してるひとり親世帯には涙が出る企画だった。

わたしもひとり親だ。
未婚でひとり親になった。

残念ながらわたしは外れてしまったのだけど、前澤氏のこの企画は、
ひとり親世帯には、とても大きな意味を持つものになった。
いい機会だし、なぜ大きな意味を持つのか、ひとり親世帯の実情を赤裸々にお話しながら説明してみたいと思う。


①ひとり親に対する世間のイメージ

正直、あまりいいイメージはないと思う。
・暗い
・貧乏
・生活苦
・水商売
・え?DV?DV?DVされたの?
・借金してるの?
・男見る目ないね
・早く再婚しなよ
・え、子供いるのに恋愛?恥ずかしくないの?

こんなとこかな?
まぁ、外れてはいない。
この時代でも、ひとり親は偏見の目で見られることがしばしばあるのが現実。

前澤氏もTwitterで『それはやめよう』と喚起してくれたが、
ひとり親で大変な生活をしているひとに対する、
自業自得』という言葉が投げかけられることがある。

わたしも実際、信じていた友人に言われたことがあり、それを機に距離を置くようになった。

不幸自慢などしたくないし、そもそも別に不幸じゃない。
でも、『しんどいんだよねー』とこぼしたいときがたまにある。
それを『え、でもそれわかっててひとりで産んだんだよね?』
はい、出た!必殺愚痴封じ!
これを受けたとき、わたしたちひとり親はこれ以上傷つかないために自己防衛としてストンッと壁を作る。 

そうなの、自業自得だし自己責任なのよ。
言い返せない。

苦労がわかっていながらひとりで産んだひと。
旦那の暴力で離婚したひと。
旦那の家族とうまくいかなかったひと。
夫婦でいる不和に耐えられなかったひと。
いろんなひとがいろんな理由でひとり親になっている。
苦渋の決断をしたんだ。

でも、みんな、不幸になるために相手と一緒になったわけじゃない。
幸せを信じて子供を産んで、子供を愛してる。

そして、世間が思うほど、不幸ではない。

②ひとり親世帯の収入

不幸ではないけど、ラクではないのがひとり親。
1番大変なのはお金。
2番も3番もほぼお金。

わたしは父子家庭の実情がわからないので、母子家庭の場合で書いていきます。

母子家庭の平均年収は厚生労働省によると243万
これは就労収入だけでなく養育費や児童扶養手当、こども手当を含めての額。
養育費なんて全体の2割くらいしか受け取っていないので、実質は200万いかないと思う。
後述するけど児童扶養手当も収入制限で受給してない世帯が多い。

これを月に換算すると月収16〜7万、手取り13〜4万になる。※たぶんこれくらいの収入だと1.5~2万位児童扶養手当入るのかしら?

生活できます?みなさん。

わたしも子供が小さいときはこんなかんじ。

いまは正社員として働けているからその水準よりはだいぶ収入があるけど、
やはり周りをみてもこんな感じだった。

ちなみに、2019年の夫婦共働きの世帯の平均年収は730万らしい。
素直に羨ましいかぎり。

③ひとり親世帯の生活

収入がわかったところでその生活について。
生活モデルとしては、
都心から30分くらいのベッドタウンで子供と2人暮らしのパート雇用の母子家庭の平均。

  家賃:65,000円(共益費込2LDK)
 光熱費:12,000円(水道代請求月)
 通信費:10,000円(携帯+WiFi)
 保険料: 5,000円(県民共済の掛け捨て)
学資保険: 3,000円
 給食費: 5,000円

固定費だけで10万だ。
手取り13万だとしたら、3万しか残らない
そこから食費、日用品、被服費がかかる。
郊外で車が必要だったりしたら駐車場代、ガソリン代もかかる。
社保完備じゃなかったら国保の保険料や市民税も自分で払っていかなきゃならない。

貯金はおろか。赤字だ。

これが現実。

④正規雇用への高いハードル

では、なぜ母子家庭は貧困になりがちなのか。

簡単だ。

正規雇用してもらえない。

これに尽きる。わたしも子供が小さいうちは全滅だった。

『お子さん小さいんですね。体調崩したりしたとき頼めるひといます?」

まあ、これは母子家庭じゃなくても言われるとは思うけど。

手に職がある、資格があるとかでないと小さい子を抱えての正規雇用はハードルが高い。

しかし、非正規雇用の場合、どうしても収入は低水準だし、安定しない。

(正規雇用でも男性より稼ぐことは今の日本ではまだまだ難しい)

このコロナ禍で、非正規雇用で収入が激減したひとも恐ろしい数いると思う。


ただ、ここで配偶者がいれば最低限の収入はあるんだよね。

いくらワンオペでも、仮面夫婦でも、旦那の足が臭くても、ひとまず旦那の収入はある。

でも・・・

ひとり親の場合、本当に最悪無収入になるのだ。

死んでしまう。

だから、母子家庭はダブルワーク、トリプルワークをせざるを得ない。

水商売をしないと立ちゆかない。

コロナ禍ではその収入すら絶たれたのだ。

⑤児童扶養手当の現実

そんな貧困に苦しむひとり親を助ける公的援助。
児童扶養手当
月額42,370円を隔月で受給できる支援策。

表向きは。

コレが、なかなかシビアな仕組み。

収入によって受給額は減額される。

収入制限で1円でも超過すると1円ももらえない

正直満額もらえてるひとはあまりいないと思う。

世の中、ひとり親はみんな受給してると思われがちなんだけど、

案外みんなもらってないよ!!!

正社員で働いてたら、まずもらえないからね!!!

この仕組みがひとり親の就労意欲を邪魔しているのも事実。

だって、働けば働くほど、もらえるものは減り、引かれるものは増えるんだから。

一生懸命働いた結果、児童扶養手当もらえないひと。

あきらめて、お小遣い程度に働いて児童扶養手当満額もらうひと。

どっちも問題だと思う。

だから、政府のコロナ支援として発表された児童扶養手当受給世帯への5万の給付金。

あれ、全ひとり親にくれたらいいのに。

児童扶養手当の収入制限の緩和、資格の拡充してほしい。

悲しいのが、こういう要望も、一部からは、『物乞い』って言われてしまうこと。

悲しい。

⑥寡婦控除という未婚差別

寡婦控除】ってご存知だろうか。

たぶん認知度はだいぶ低いのかなと思われる。

寡婦控除とは、死別や離婚によりひとりで子供を扶養している寡婦を対象にとした所得税、住民税の控除。

すごい優しいよね。

が、しかし、そんな寡婦控除、寡婦じゃなきゃ対象になれない。

未婚のひとり親は寡婦ではないのだ。

ちなみに未婚のひとり親は、

去年10月からの0~2歳児の保育料無償化も対象外だ。

離婚してのひとり親と未婚のひとり親。なにが違うのだろう。

自民党の言い分は寡婦控除に未婚も含ませることで、

こんな支援をしたら、未婚のひとり親を助長する』というもの。

ほーぅ。

封建社会。

これ、見方によっては、

ひとりで育てるくらいなら中絶しとけ!って言ってるようなもんだ。

だいぶ倫理に反してる。まるでペナルティ。

幸いなことに、さすがにこれは時代錯誤だと、仕組み自体が近々改正される。

わたしはもう恩恵受けられないけど、これから先の未婚ひとり親が少しでも楽になるといいなと思う。


⑦前澤友作氏が発信してくれた現実

実はこの企画で、友人が当選した。

一気にこの企画が身近で現実的なものであったと実感した。

ひとり親を助けたいという前澤氏の思いによる企画、当選したひとり親は金銭的に本当に救われたと思う。

家賃が払えたひと、子供におなかいっぱいご飯を食べさせてあげられたひと、

オンライン授業のためのタブレットを買うことができたひと・・・。

ひとり親にとっての10万円は本当の大金。

でも、それ以上に意味があったと思うこと。

それはひとり親の実情を発信し、世の中への周知のきっかけを作ってくれたこと。

周知されなければ、問題は可視化されはしない。

ひとり親は前述した通り、『自業自得』と言われたくなくて、ひとりでなんとかしようと気負ってしまう。

しかし、抱えきれないくらいの苦しみがある。

金銭的なことと、もうひとつ。


自分ひとりで子供を守ることができるのか。


わたしがこの不安にうちのめされたのは東日本大震災だった。


震災当日もさることながら、度重なる余震、緊急地震速報。


大きな揺れが来た時にこの子の命と自分の命、ひとりで守れるのかな?

そんな不安で夜もあまり眠れなかった。


ひとり親のつらいところは、

すべての責務が自分にあるということ。

自分が動けなくなったら終わりなのだ。代わりがいない。


親子共倒れで胃腸炎になったりするともう地獄絵図だ。


公園で遊ぶ家族と子供を交互に見て、胸が苦しくなることもあった。こういう未来もあったのかもな。子供からそんな未来や経済的なゆとりを奪っちゃった自分を責めることもいっぱいあった。


前澤さんのこの企画に、たくさんのひとり親が実情をリプライしていた。

そのリプライはひとり親からするとあるあるだ。

でも、きっと一般的には、え?マジで?

というものがほとんどだと思う。

それだけでも意味があった。

児童扶養手当も、出どころは税金。

勝手にひとりで育てている親に税金使って助けるなんて!という声もある。

耳が痛い。

でも、本当にがんばってもがんばっても、にっちもさっちもいかない世帯がたくさんある。

それを知ってもらうきっかけになった。


そして今回の企画の応募フォームにはひとり親の生活のアンケートが必須だった。

内容は、収入や養育費の有無、借入額など。

そして生の声。


前澤氏はこのアンケートに愕然としたという。

早急に第2弾を推し量ると明言してくれた。

このアンケートもグラフ化して公表してほしいな。

今までここまでひとり親と向き合ってくれたひとはいなかった。

影響力のある前澤氏によって可視化されたこの実情が、

国に届いてくれたらいいと思う。


どんな親でも、子供の笑顔が見たい。

子供の笑顔のためにがんばってる。

そして、子供が一番がんばってくれている


同情やマウンティングは要らない。

理解がほしい。



そうそう、わたしは18年、寡婦より年間5万多く納税した。計90万円。

政府よ、わたしになにか褒美くれ















子供と美味しいお肉を食べる貯金にさせていただきますっ!!