Linkedinの「専業主婦/主夫」表記に思うこと

Linkedinの「専業主婦/主夫」表記

ビジネスSNS、Linkedin。この度、自分のキャリアや経歴を入れる欄に、専業主婦/主夫を追加した事で、ちょっとした話題を呼んでいる …。と思いきや、自分のSNS周辺のみで、日本のメディアでは一切ニュースにならなかった。Linkedin自体、あまり日本では普及していないからかもしれないが、今まで、キャリア途中のブランクとして、全くもってプラスと捉えてこられなかった専業主婦/主夫が、キャリアの一つとして、ビジネスSNSで公開できるってすごい画期的な事だと思う。今は、キャリア=仕事の経歴ではなく、キャリアは仕事や生き方、自分の生き方や家族までをも含んだ、ライフキャリアとして徐々に考えられるようになってきた。もちろん、専業主婦/主夫であった事をビジネスSNSで公開しただけでは、すべての解決にはならないし、それを見る企業がどう捉えるかは、日本ではまだまだ課題がたくさん残るけれど。それでも、専業主婦/主夫であった期間を、世界規模であるLinkedinがキャリアとして認めた事は、本当に大きな大きな変化のワンステップと思うし、実際、その記事を読んだ時感動したし、自分の中ではエポックメイキング的に興奮した。

専業主婦

おそらく私の母親の世代、1980年代に子育てをした世代にとっては、疑う余地なく、選択する余地なく、専業主婦になったのではないか。もちろん100パーセントとは言わないけれど、70パーセント位の働く女性は、結婚したら退職、妊娠したら退職をして、子育てする為に専業になっていたのだと思う。私の母も結婚後数年で退職、子育てをして私が小学生になった頃から再び働き始めた。最初はパート、学費がかかる中学高校時代は、派遣社員として時短で働いていた。幼稚園、小学生低学年は、家に母親がいて当たり前だった。

兼業主婦と専業主婦の割合逆転

2010年前後から、兼業主婦(いわゆるワーママ)と専業主婦の割合が段々と同じ位になっていった肌感がある。2014年に「子ども・子育て関連3法」に基づく子ども・子育て支 援新制度が成立し、2015年4月以降に続々と新制度がスタート。2015年から始まったこども園の制度は、身近に感じる人も多いのではないだろうか。

厚生労働省の「厚生労働省白書」によると、1980年頃は、専業主婦の割合は約65%と、過半数を大きく超えていた。それが、1995年頃を境に割合が反転し、2019年には、共働き世帯は68.4%、専業主婦世帯は31.6%と完全に立場が入れ替わった。兼業家庭が約7割と、もはや専業主婦はマイナーな時代になっている。2021年現在、もしかするともっと増えているかもしれない。

私自身も参加した、キャリアサロン「MYコンパス」を主催する、岩橋ひかりさんの著書、『最強のライフキャリア論』に、ワーママをめぐる環境の変遷がわかりやすく書かれていたので引用。

【働く女性をめぐる環境の変遷】
●1986年:男女雇用機会均等法が施行され、働く女性が急速に増加。その後、育児・介護休業法は1991年の制定以来、三度改定されている。
●2001年:短時間勤務制度の対象が3歳未満まで延長される。
●2005年:子どもが保育園に入れなかった場合などに育休が1歳6カ月まで延長できるようになる。
●2009年:この年の改正では、男性の育休を促す「パパ・ママ育休プラス」が導入され、男性の育児参加を促す動きが今なお続いている。
●2016年:女性活躍推進法の施行をきっかけに、女性管理職を増やす動きが広まるようになる。
『最強のライフキャリア論』P35より

メディアで語られる専業・兼業像

世間の風潮も、専業主婦イコール「怠けている、男性に人生を頼っている、働くスキルや経験がない、子育てしか生きがいがない、年収が低い」というようにネガティブな文脈で語られる事も多いのではないだろうか。実際の専業家庭がそうではないのは重々承知だし、介護や不妊治療が理由の人など、様々な理由で家庭に入っている方もいる。夫の転勤や駐在で退職する人もいるだろう。

一方、ワーママは「子育ても仕事も頑張っている、生き生きしている、経済力がある」といったようなイメージ。実際、働きたくないけど働かざるを得ない人もいるし、経済的な理由の方も多いだろう。また、ワーママといっても皆が正社員でがっつり稼いでいるというわけではなく、パートタイムやアルバイトなどの短時間の方、業務委託や非正規雇用の方も入るので、メディアでもてはやされる「バリバリ働き、仕事も家庭も両立!」なキラキラスーパーウーマンばかりではない。安定した職業を持っているけれど、両立で疲弊している人も少なくないと思う。

専業主婦になった私を縛った『べき理論』

私は、夫の駐在に同行するために退職し、今は求職活動中。認めたくないが、今はマイナーな部類に属する専業主婦。プロボノでNPOで活動していたり、色々な事をやっているけれど、やはり収入を生み出していない私は、専業主婦としかくくれないだろう。

夫の仕事についてマニラに移った3カ月は、はっきりいって暗黒期だった。少し前まで、好きな仕事をして輝いていたはずの私はどこにいった?朝、夫を送りだしてからある膨大な時間。子供と一緒に過ごせるも、どこか空しい気持ちで、自然と涙がわいてくる。世間の皆は朝から仕事をして何かを生み出しているのに、何もしていない私。専業でも兼業でも、その人が自分で選んで納得していれば、どっちでもOKと思っていたのに。数カ月考え、子供が小さいうちは家族が一緒にいるのが幸せだと考え、帯同していく事を決断したのは自分なのに。

無意識に「働いていない=価値がない、女性は結婚しても出産しても働くべき」という考えが自分の中にあったのだろう。そんな中、受講したのが、上でも書いた「MYコンパス」のオンラインサロン。自分を縛っていたのは結局自分であり、「専業でも兼業でも、それで納得して幸せならどっちでもOK」なんて事をいいながら、働いていない自分にOKと言えないのは、私自身だった。

駐在生活を楽しめるように

MYコンパスのキャリア講座を受けた事も大きな転機であったけれど、慣れとは怖いもので、もやもやしながらもマニラ生活をエンジョイしていました。スラム街の子どもを対象としたボランティアは、青年海外協力隊上がりの自分にはすごくやりがいがあり楽しかったし、娘の教育にもフルコミット出来、同じ駐在妻の友人と助け合いながら生活した経験は、本当にかけがえのない時間だった。あのまま働いていたら出会えなかった人、見れなかった世界、変える事の出来なかった価値観。仕事的なスキルは確かに向上はしていないけれど、世界は格段と広がったし、自分のライフキャリアについて徹底的に考える時間でもあった。自分を縛っていた「働いていない=価値がない」といったくだらない思い込みを捨てられた事も大きなこと。

ライフステージによって柔軟に変えられるキャリア

長々と書いてしまったが、言いたい事は一つ。「ライフステージの変化によって、仕事の仕方や形態を柔軟に変えられる世界を作りたい」という事。今の日本の社会だと、一回、仕事から離れたり、正社員から非正規になると、元いた場所には非常に戻りにくいし、年収も下がっていくばかり。仕事のブランクがあるほど、次の仕事にもつきにくい。

でも、それだと、自分のかなえたいライフスタイルをかなえる事は出来ないのではないだろうか。家族のために仕事を離れたのに、マイナスに見られる事も多々ある。保育園に入れず、フルタイムからパートタイムになったのに、なぜか減点される私たち女性。一度、仕事を始めたら、定年まで全力疾走しないとダメなんて、やっぱり少し歪んでいるのではないだろうか。

今思えば、昔は正社員でバリバリ働かなかった母みたいになりたくないなんて偉そうに考えていたけど、母もライフスタイルに沿って柔軟に働き方を変えてくれたんだなあと思うと感謝しか沸いてこない。

今回のLinkedinの専業主婦/主夫を経歴の一部として入れた事は、柔軟な働き方や生き方、ライフステージに合わせた生き方を認めてくれた、後押しをしてくれた気がした。自分が苦しんでいる事、公に認められた気分だったし、そんなに苦しまなくていいと、大きく認めたくれたような気もした。自分の駐在をきっかけとした退職も、ライフキャリアの中の大事な期間として、自分自身が心から納得できたような気がする。本当であれば、だれかの意見に左右されず、自分自身で自分の選択を肯定出来る方がいいのだけれど、私はそんなに強くないし、はっきりいってガラスのメンタル。

もう30代も後半も後半。自分の人生を後悔しないように、自分の過去の選択や経験を、どうやってこれから生かしていくか。まだまだ、挑戦し甲斐がある(茨の道)人生、何とかタフに乗り切りたいものです。

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