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ビヨンセのカントリーミュージックチャート1位の快挙とアメリカ合衆国

こんにちは、aicafeです。
40代、人生時計で14:00頃に差し掛かったところです。
これからの人生の午後の時間の過ごし方を模索中です。

ビヨンセ - Beyonce - 芳朗さんの解説

ビヨンセ。押しも押されもせぬ世界の歌姫です。
もはや歌姫という領域を超えて、女神のような神々しさも感じます。
尊敬する同世代の女性の一人です。
これまでも数多くの記録をつくってきた彼女が、
また一つ大きな記録を樹立しました。

この記録の意味について、敬愛する音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんが説明されていました。

番組内では、カントリーミュージックは一般に❝アメリカ南部の白人の音楽❞というイメージがありつつ(実際そういう側面もある)も、1920年代にイギリスからの移民が持ち込んだ民謡とアフリカ系のゴスペル・ミュージックが融合して生まれたという成立背景があることや、カントリーミュージックの象徴的な楽器であるバンジョーもアフリカ系のルーツがあることなどが丁寧に解説されています。

また、アフリカにルーツを持つとされる音楽や文化の起源を再確認するというテーマで、2020年からビヨンセが進行している「RENAISSANCE」という三部構成のアルバムプロジェクトについても触れられています。

サプライズ発表した新曲「Texas Hold 'Em」と「16 Carriages」

ビヨンセは、アメリカ現地時間の2024年2月11日に行われたスーパーボウルの合間に流れるベライゾン社のCMで新曲発表を予告し、直後にInstagramで「Texas Hold 'Em」「16 Carriages」という2曲を発表しました。
そのサプライズ性はのみならず、❝ビヨンセがカントリー曲を発表したこと❞が話題になりました。

アフリカ系のルーツを持ちリベラルな立場のビヨンセが、
白人の保守本流の牙城であるカントリー曲を発表したことで、
にわかに社会がざわめいているのです。

「アフリカ系女性歌手の曲は流さない」というラジオ局

例えば、オクラホマ州のカントリーミュージック専用のラジオ局であるKYKCが、早速ビヨンセの新曲をリクエストしたリスナーに対して「ビヨンセの曲はかけない」と断ったというのです。(今は撤回したそう)
アフリカ系アメリカンであるビヨンセがカウボーイ風のテンガロンハットをかぶる、それだけでも物議を醸しています。
これに対して、ビヨンセの母親は、自分の子どもたちはテキサスで育ち、至極当然にカウボーイ文化を祝福してきたのだと反応しています。
ご存じのとおりテキサスは、保守層の厚い地盤でありカウボーイ文化の本場であります。

ビヨンセが問いかけること、そして態度と記録で示すこと

ビヨンセは、当然のことながら、
こうした社会の反応を予見したうえで楽曲を発表しています。
今一度、考えてほしい
という強いメッセージを感じます。

そして、改めて冒頭のニュースを噛みしめたいのです。
アフリカ系女性ミュージシャンとして初めて、
ビルボードのカントリーソングチャートで1位を獲ったという記録を。

有無を言わせない格好良さです。
正々堂々これが私のやり方だ、という清々しさがあります。

どちらも「アメリカ合衆国」

わたし達家族がアメリカに住んでいた期間は短く、行動範囲も狭かったのですが、それでも侮辱的な仕草を向けられたことはありますし、人種差別的な発言を浴びて身近な人が怪我を負ったこともあります。

自由の国であり人種のるつぼである合衆国。
その成り立ちや南北戦争、キング牧師の闘いの歴史を経てなお
潜在する差別意識を、わたし達自身も肌で感じましたし、
現在は、ニュース等を見聞きする限り、トランプ政権やコロナ禍を経て、人種だけでなく政治志向による対立や経済格差など、
アメリカ社会の歪みはより大きくなっているとも想像します。
今回のビヨンセの行動によって、改めて、そうした歪みや差別意識の一部があぶり出され、(それを普段感じる機会の少ない人、例えばわたしのような日本に住む人、に向けてさえも)露出されたと思います。

❝白人❞の保守本流のものであるカントリーミュージックに、
アフリカ系の女性歌手がしゃしゃり出てくるなと
臆面もなく堂々と発言するのもアメリカ
一方で、
アフリカ系シンガーであるビヨンセに多くの支持が集まり、
全米カントリーソングチャート1位にまで押し上げるのも、
またアメリカなのです。

決して単純化できる話ではありませんが、
心が震え、そして考えさせられたニュースでした。

テキサスの変化

アメリカの保守層の好む音楽はカントリーミュージック。
では政治的に保守層の強い地域といえば?—テキサス州が連想されます。

しかしこのテキサス州、人口動態も経済構成も大きく変動しているそう。
移住者を含め非白人※の比率は高まっており、非ヒスパニック系の白人※比率は40%を割っているとか。(※一般名称としての「白人」という意味から❝❞は付けません)
更に税制優遇でハイテク企業を誘致し、従来の石油や牧畜といった経済構成も崩れつつあるようです。
一方で人工中絶の禁止や銃規制緩和など、政治は保守色を強めており、価値観の合わないテキサス州民が増えてきている様子です。

もはやテキサスは、わたしを含め多くの人がステレオタイプにイメージする「カウボーイの国」ではなくなりつつあるわけです。

テキサスで起きている変化は、アメリカ社会全体の変化の縮図であるという見方もあります。

変化するアメリカ社会という泉にビヨンセが投じた石が、どのような波及効果を生むのか、今後も注目したいと思います。

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