【短編小説】逆ナンのすゝめ 第2話
第2話
もちろん、いつもこんな風に上手くいくわけじゃない。
でも、失敗はあんまりない。俺にとって、女の子が相手をしてくれたらそのナンパは成功だから。会話ができたら成功。こっちを見てくれただけでも成功。
「ゴメンなさい」なんて頭を下げながら去っていく女の子。ちっとも悪くないのに。
こっちこそゴメンよ、困らせて。でもこんな俺に笑顔をくれてありがとう。キミのことは忘れないよ。
同じ子に二度声をかけたことがあった。一度目ではすげなく断られていたけど、二度目では面白がって相手をしてくれた。
「これって運命じゃない?」と誘ったら、呆れながらも一緒にお茶してくれた。
トラブルに遭遇したこともある。教えてもらった女の子のナンバーに電話したら男が出て、「オマエ誰だよ!?」と詰め寄られて慌てて切った。
そんなのはまだ軽いほう。「テメエ、なに声かけてんだよ!」と、ナンパの最中に、女の子の彼氏に絡まれたこともあった。
それでもナンパはやめられない。
「どうしてナンパするの?」
合コンで女の子から必ずされる質問。ちなみに、合コンはナンパほど好きではないんだけれど、友達から誘われて出ることもある。
「運命の人を探してる」
女の子はこの言葉でときめく。でも、これは嘘。俺にとってナンパは、そのものが目的であって、単なる出会いの手段ではない。
ナンパの世界は一期一会。
茶の道にも通じるんだ。実はナンパ道と言って、由緒正しい歴史を持ってるんだぜ。開祖は千利休ね。
弾ける笑い声。女の子を笑わせられた瞬間ほど、男として嬉しいことはない。
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