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【小説】コトノハのこと 第7話

   第7話

 次の日、私は日が昇っても布団から出なかった。

 一日に話せるのは五回しかないのだから、その回数を節約する必要がある。いっそ病気だということにしてこのままずっと寝ていようか。しかし九時過ぎくらいに、妻が寝室にやってきた。

「どうしたの。具合が悪いの」

 顔を下にして、枕につっぷしたまま動かないでいると、妻は私の肩に手をかけて揺り動かした。

「なによ、寝たふりなんかして」
 なぜわかったのだろう。妻の声が尖る。

「心配してるんだから、なにか言って下さいよ」
 私は諦めて半身を起こした。妻の視線を感じながら、布団の上に投げ出された自分の両腕に目をやった。

「具合が悪いの」
「うん」
 たった五回のやり取りで、今の状況を説明できる自信はない。

「病院に行きますか」
 妻が尋ねる。黙って首を振った。

「ご飯は食べられないのね」
「……うん」

 妻が小さく息をつき、部屋から出ていく。私は布団に横たわった。

 計算外だった。まさか二回も使ってしまうとは。普段通りに過ごした方がよかったのかもしれない。

 黙っている私の代わりに、ぐう、と腹が鳴った。

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